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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第23話 神殺しの剣

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(三)三人目の条件

◆ 三人分の存在


「精霊王なら誰でもいいのか」


 セトが尋ねる。


「属性までは見えない」


 シアが答えた。


「火でなければならないとは感じない」

「月も同じですか」

「たぶん」

「では、必要なのは三属性ではなく、三人分の精霊王級の存在」

「ええ」


 ネアは空中へ三つの光を作った。

 赤、銀青、紫白。

 三つは近づいても混ざらない。


「器へ入ったあとも、誰がどこにいるかを分けられなければなりません」

「眠りの王を消すために、こちらまで眠りの王と同じになれば意味がない」


 セトが言う。


「そうです」

「入った精霊王は戻れるのか」


 ハルヴェンが尋ねた。

 シアは答えなかった。

 ネアも、すぐには言葉を出さない。


「分からないのですね」

「ええ」

「使えば消える可能性がある?」

「否定できません」


 シアは三つの光のうち、赤いものへ指を伸ばした。


「それでも使う」

「まだ場所も、使い方も分かっていない」


 セトが言う。


「見つけたら使う」

「戻れないかもしれない」

「眠りの王を止めなければ、もっと戻れなくなる」


 シアの判断は変わらなかった。

 ただし、セトはその判断を今すぐ了承しなかった。


「三人目を決める前に、使う本人にも説明する」

「本人はわたしたちだ」

「三人目もいる」


 シアは地面の三本目の線を見る。


◆ 使い手の条件


「剣へ入る三人だけではない」


 シアが言った。


「ほかにも何か残っていますか」


 ネアが尋ねる。


「振るう者」

「使い手か」

「誰でもいいわけではない」

「神の力に耐えられる人間?」


 ハルヴェンの問いに、シアは首を横へ振った。


「強さではない」


 シアはセトを見る。


「つながっている者」

「剣に入った精霊王と?」

「ああ」

「一人ではなく、三人全員と?」


 シアはうなずいた。

 セトは、自分とシア、自分とネアの間にあるつながりを意識した。

 二人は、セトへ身と力を預け、精霊剣となっている。

 ただ名前を知っているだけではない。

 互いの存在を預け合ったつながりがある。


「使い手は、器の中にいる三人を別々に認識する必要があるのかもしれません」


 ネアが言う。


「眠りの王の中から、誰の力かを分けるために?」

「可能性はあります。ただし、これはわたしの推測です」

「条件に一番近いのはセトだ」


 シアが言った。


「わたしとネアにつながっている」

「二人だけだ」

「だから、あと一人だ」


◆ 二人では足りない


「残っている精霊王を探すしかないな」


 リグが言った。


「人間とつながっていない精霊王では、見つけたあとにセトへ身を預けてもらう必要があります」


 ネアが続ける。


「頼めばいい」


 シアが言う。


「頼んで、必ず受け入れられることではありません」

「世界が終わる」

「それを理由に、本人の選択をなくしてはなりません」

「嫌だと言ったら?」

「別の方法を探します」

「間に合わなかったら?」

「その時も、無理に剣へ変えることはできません」


 精霊剣は、人間が精霊王を武器へ変える術ではない。

 精霊王が自分の意思で相手を選び、身を預ける形だ。

 世界を救うためという理由があっても、そこは変えられない。


「シアも、俺が無理に剣へしたわけではない」


 セトが言った。


「ああ。わたしが選んだ」

「ネアもだ」

「ええ」

「三人目にも選んでもらう」

「選ばなかったら?」

「選ばなかったことを前提に、次を考える」


 シアは納得していない顔をした。

 だが、自分がセトを選んだことを否定する言葉は出さなかった。


◆ 最も近い三人目


 ハルヴェンが、空中に浮かぶ紫白色の光を見る。


「三人目なら、すでにここにいるのでは?」


 全員の視線がリグへ向いた。

 リグは驚かなかった。


「俺も考えた」

「可能なのか」


 セトが尋ねる。


「可能か不可能かで言えば、可能かもしれない」

「ならやればいい」


 シアが言った。


「お前は相変わらず簡単に言うな。俺が身を預けた相手はハルヴェンだ」

「必要なら――」

「お前が決めることでもない」


 リグがハルヴェンの言葉を止めた。

 ハルヴェンは口を閉じる。

 リグは拒絶するように離れたのではなく、隣に立ったままだった。


「俺はハルヴェンへ身を預けた。今のつながりを残したまま、別の人間とも同じようにつながれるかは分からない」

「セトにも身を預ければいい」


 シアが言った。


「わたしとネアは、二人ともセトへ預けている」

「それとは逆だ。一人の人間が二人を受け入れることと、一人の精霊王が自分を二人へ預けることは同じではない」


 シアは少し考えた。


「何が違う」

「俺が俺であるための境界を、二か所へ置くことになる」


 ネアが紫白色の光を見た。


「境界が強くなるとは限りません。どちらがリグ本人なのかを分ける結果になる可能性もあります」

「二人とも同じリグを覚えていればいい」

「人間側の認識だけの問題ではありません」


 ネアが答える。


「リグ自身が、二人へどのように身と力を預けるかを分けなければなりません。分け方を誤れば、リグの境界そのものが二つへ裂ける可能性があります」

「それは困る」


 ハルヴェンが言った。


「ああ。俺も困る」



※第23話「神殺しの剣」は全六回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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