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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第23話 神殺しの剣

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(二)神が残した器

◆ 神が残した器


 ネアが原光の線を弱めた。


「そこまでにしましょう」

「まだ見える」

「見えているのではなく、断片へ引かれています」

「同じだ」

「違います」


 ネアが指を下ろすと、シアの瞳から赤い光が消えた。

 シアは不満そうにネアを見る。


「途中だった」

「途中で戻れたからよいのです」

「何が分かった」


 セトが尋ねる。

 ネアはすぐには答えず、先ほど触れた流れを自分の中で整理していた。


「この世界を作ったとされる存在が、自分を剣へ変えた。そのように見えました」

「神が剣になった?」


 ハルヴェンが聞き返す。


「精霊王が精霊剣になるのと似ています。ですが、同じとは言えません」

「誰かへ身を預けたのか」

「そこは見えませんでした」


 シアが自分の手を見る。


「大きなものが、剣へ入った」

「そのあと、いなくなった」


 ネアが続ける。


「消滅したのか、この世界から離れたのかまでは分かりません。ですが、剣の中に神そのものは残っていません」

「空の剣だけが残った」

「ええ」


 リグが腕を組む。


「神が剣になったなら、神剣と呼ぶべきものか」

「人間なら、そう呼ぶでしょう」

「その神剣が、神殺しの剣?」


 ハルヴェンが尋ねた。


「同じものを指している可能性は高いです」

「自分で剣になった神を、その剣で殺したわけではないのですね」

「少なくとも、今見えた断片にはありません」

「では、なぜ神殺しなのです」


 ネアはシアを見る。

 シアは首を横へ振った。


「そこは残っていない」


◆ 殺すという名前


「人間があとから付けた呼び方かもしれないな」


 セトが言った。


「神を殺した剣ではなく、神を殺せる剣」

「眠りの王は神なのか」


 シアが尋ねる。


「通常の精霊王とは異なりますが、神と呼ぶべきかは分かりません」


 ネアが答える。


「ですが、世界の現象そのものへ作用する点では、通常の精霊王よりも神という呼び方に近いかもしれません」

「なら、名前は合っている」

「名前だけで効果を決めないでください」

「でも、思い出したのは眠りの王を消す方法を探していた時だ」


 シアの言葉に、全員が黙った。

 偶然とは考えにくい。

 精霊王の継承知識は、必要な状況に応じて関係する知識が浮かぶことがある。

 今回のものが知識でなくても、同じように引き出された可能性はある。


「その剣なら、眠りの王を消せるのか」


 セトが尋ねた。

 シアは目を閉じた。

 先ほどより慎重に、言葉だけを探す。


「消せる」

「分かるのか」

「それだけは、さっきよりはっきりしている」

「方法は?」

「分からない」

「場所は?」

「分からない」

「剣の形は?」

「分からない」


 ハルヴェンが小さく息を吐いた。


「名前と効果だけですか」

「もう一つある」


 シアは手を開いた。


「空のままでは使えない」


◆ 空のままでは振るえない


「中身が必要ということか」


 リグが尋ねる。


「たぶん」

「何を入れる」

「力」

「原光なら、世界中に戻り始めている」

「違う」


 シアは即座に否定した。


「流れているものを集めるだけでは動かない」

「神が抜けたあとを埋められるほどの存在が必要?」


 ネアが問い直す。

 シアはうなずいた。


「精霊王」

「一人ですか」

「足りない」

「二人」


 シアは自分とネアを交互に見た。


「それでも足りない」


 セトが地面へ三本の線を引く。


「三人か」


 シアは線を見つめた。


「三つ、ある」

「何がだ」

「入るところ」

「三人の精霊王を剣の中へ入れる?」

「取り込ませるのとは違う」


 シアの声が少し強くなった。


「同じにしない。別々のまま入る」


 眠りの王とは反対だった。

 眠りの王は、触れたものの境界を消し、自分との区別をなくす。

 神殺しの剣は、三人を入れても、それぞれを別の存在として残す。

 少なくとも、シアに残った断片はそう示していた。


「器の中で境界を保つ必要がある」


 ネアが言った。


「だから、ただ力を注ぐだけでは足りないのでしょう」



※第23話「神殺しの剣」は全六回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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