(二)勝手な援護
◆ 勝手な援護
「おい、待て」
「小さくした」
「大きさの問題じゃない」
シアが指を弾く。
小さな火が、セトの相手へ向かって飛んだ。
魔物が横へ跳ぶ。
火はその体を外れた。
「外したぞ」
「避けられた」
「援護になってないだろ」
セトは魔物の突進を受け流し、白刃を振る。
その軌道へ、外れたはずの火が入った。
赤い火が、白い刀身へ触れる。
白刃が大きく揺らいだ。
「何だ?」
火は消えなかった。
刀身の表面を走り、白刃全体へ広がっていく。
赤かった炎が、白い光へ変わる。
白刃そのものが燃えているように、白い炎が刀身を包んだ。
魔物が正面から迫る。
セトは考えるより先に、燃える剣を振り下ろした。
◆ 白い炎
白い炎をまとった刃が、魔物の額へ当たる。
先ほどまで白刃を弾いていた甲殻が、赤く焼けた。
刃が表面へ食い込み、亀裂の奥まで炎が走る。
魔物の突進が止まった。
セトは一歩踏み込み、剣を横へ振る。
白い炎が甲殻の隙間を焼き、白刃が首元へ深く入った。
魔物が地面へ倒れる。
セトはすぐに距離を取った。
白刃を包んでいた炎は、まだ消えていない。
「今のは何だ」
「援護だ」
「そういう意味じゃない」
「わたしの火が、白刃に乗った」
「見れば分かる」
炎は白い。
だが、シアが放った火そのものが増えたようには見えなかった。
小さな火が触れただけなのに、刀身全体が強く燃えている。
「お前が大きくしたのか?」
「していない」
「なら、なぜ燃えてる」
「分からない」
「お前がやったんだろ」
「狙ったわけではない」
白炎を見つめながら話していると、林の前にいた残り二体が動いた。
◆ 残りの二体
「来るぞ」
「ああ。一体ずつだな」
「今度は勝手に援護するなよ」
「必要ならする」
「必要かどうかは俺が決める」
二体の魔物が左右へ分かれた。
シアは右へ向かう。
セトは左側の魔物へ白炎を構えた。
シアの相手が甲殻を立てる。
口元へ淡い光が集まり始めた。
だが、術が放たれるより先に、シアの炎が足元から巻き上がる。
魔物の全身が一瞬だけ赤く包まれた。
炎が消えた後には、黒く焼けた魔物が倒れている。
「終わった」
「やっぱり早いな」
セトの相手は、すぐには突進してこなかった。
前脚で地面を強くかく。
街道の土が盛り上がり、魔物の前に厚い壁を作った。
「精霊術も使うのか」
土の壁の向こうで、淡い光が集まる。
何かを撃ち出すつもりらしい。
セトは白炎を振り下ろした。
◆ 壁を壊す火
白炎が土の壁へ当たる。
表面が焼け、白刃が途中まで食い込んだ。
だが、一撃では壊れない。
「さっきより弱いな」
シアが言った。
「俺に言うな。お前の火だろ」
「火の大きさは同じだ」
壁の向こうから、圧縮された土の塊が飛び出した。
セトは白刃を引き抜き、身を横へ投げる。
土の塊が街道へ当たり、乾いた破片をまき散らした。
セトは再び白炎を構える。
魔物の甲殻を斬った時より、炎が小さくなっている。
「さっきと同じように燃えろ」
白刃へ意識を向ける。
剣の形を保つために集めている精霊力。
その一部が、刀身の表面で炎へ変わっていた。
白刃を強く固定する。
同時に、集めた力を炎の方へ押し出す。
白い火が大きくなった。
「できたな」
シアが言う。
「俺が動かしてるのか?」
「たぶん」
「たぶんか」
「今は壁を壊せ」
魔物が次の術を作る。
セトは地面を蹴り、白炎を横へ振り抜いた。
先ほどより強い炎が土の壁を焼く。
白刃が深く入り、壁を一息に切り崩した。
土煙の向こうに、魔物の姿が現れる。
セトはそのまま踏み込み、甲殻の隙間へ白炎を突き入れた。
四体目の魔物が倒れた。
※第5話「白炎」は全四回です。
続きます。
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