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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第5話 白炎

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(一)援護の練習

◆ 大会の町へ


 王都を出た二人は、精霊術大会が開かれる町へ向かっていた。


 街道を歩き始めて半日。


 セトは、宿屋でもらった大会の案内を読み直していた。


「まだ見るのか」


 隣を歩くシアが尋ねる。


「参加するなら、決まりは知っておかないとまずい」


「相手を倒せば勝ちだろ」


「殺したら失格だ」


「殺さなければいい」


「お前の場合、それだけじゃ不安なんだよ」


 大会では、相手が降参するか、審判が戦闘不能と判断すれば勝利となる。


 命を奪う攻撃は禁止。


 観客席や場外へ大きな被害を出した場合も、失格になる可能性がある。


「相手だけを燃やせばいいんだな」


「燃やすことから離れろ」


「火の精霊王に何を求めている」


「加減だ」


「している」


「大型魔獣を焼き尽くした時のどこが加減だった」


「あれは大型魔獣だったからだ」


 シアにとっては、相手に合わせて力を変えた結果らしい。


 大型魔獣を倒した時より弱ければ、すべて手加減に含まれるのかもしれない。


「大会では、俺が前に出る」


「なぜだ」


「お前が前に出たら、一瞬で終わる」


「早く勝てるならいいだろ」


「魔剣を調べる前に、大会そのものから追い出されるかもしれない」


 シアは納得していない顔をした。


 それでも、反対はしなかった。


◆ 援護の練習


「では、わたしは何をする」


「後ろから援護だな」


「炎を撃つ」


「小さくしろ」


「どのくらいだ」


 シアが右手を上げた。


 手のひらの上に、人の頭ほどの火球が現れる。


「大きい」


 火球が拳ほどまで縮んだ。


「まだ強い」


 さらに小さくなり、指先ほどの炎になる。


「それなら、たぶん大丈夫だ」


「弱い」


「大会なんだから当然だろ」


「これでは相手が倒れない」


「倒すのは俺がやる。お前は動きを止めたり、注意を逸らしたりしてくれればいい」


「炎を当てて、倒してはいけないのか」


「倒してもいいが、燃やすな」


「炎を当てるのに?」


「だから加減が必要なんだよ」


 シアは指先の火を消した。


「セトだけで勝つなら、二人一組ではない」


「俺が戦って、お前が助ける。それで二人だ」


「わたしも戦う」


「援護も戦いのうちだ」


 シアはしばらく考えた。


「面倒だな」


「人間の大会だからな」


「人間は、戦うことまで面倒にする」


「何でも燃やせる奴を基準にするな」


◆ 四体の魔物


 昼を過ぎた頃、前方から荷馬車が走ってきた。


 荷台が大きく揺れ、御者が何度も後ろを振り返っている。


「退け!」


 御者の声を聞き、セトとシアは街道の脇へ移動した。


 荷馬車は二人の横を通り過ぎ、そのまま王都の方角へ走っていく。


 直後、街道の先から地面を踏み鳴らす音が聞こえた。


「何か来るな」


「ああ。複数いる」


 木々の間から、四体の魔物が姿を現した。


 低い姿勢で地面を走る、四本脚の魔物。


 頭から背中にかけて、岩のように厚い甲殻で覆われている。


 先頭の一体の口元には、折れた縄が引っかかっていた。


「荷馬車を追っていたのか」


「四体いる」


「見れば分かる」


「二体ずつか?」


「一体ずつだ。残りが動いたら考える」


 セトは街道の中央へ出た。


 右手に白い光が集まり、白刃を形作る。


 シアもその隣へ並んだ。


「右を頼む」


「ああ」


 セトが左側の一体へ向かう。


 シアは右側の一体へ手を向けた。


◆ 一体ずつ


 二体の魔物が同時に地面を蹴った。


 シアの前へ向かった魔物は、頭を低くして突進する。


 シアが指を動かした。


 細い炎が一直線に飛ぶ。


 炎は甲殻の隙間へ入り込み、内側で弾けた。


 魔物は一歩も届かないまま、地面へ崩れ落ちた。


「終わった」


「早いな」


 セトの方は、まだ始まったばかりだった。


 正面から迫る魔物を半歩横へ避け、白刃を肩へ振り下ろす。


 白い刃が甲殻の表面を裂いた。


 だが、傷は浅い。


 魔物は勢いを失わず、体を大きく振った。


 セトは白刃を盾のように構える。


 甲殻が刀身へぶつかった。


 足が地面を滑る。


「硬いな」


「もう倒したぞ」


「見れば分かる」


 魔物が方向を変える。


 再び突進する前に、セトは白刃を短く作り直した。


 短剣状になった白い刃を投げる。


 刃は魔物の脇腹へ刺さったが、甲殻を貫き切る前に光の粒となって消えた。


「まだ倒せないのか」


「お前と比べるな」


◆ 遅い方


 魔物が三度目の突進へ移る。


 セトは長剣に戻した白刃を構えた。


 狙うのは、前脚の付け根にある甲殻の隙間だ。


 魔物が頭を振る。


 額を覆う厚い甲殻が白刃を横から弾いた。


 セトの右腕が大きく上がる。


 角が脇腹へ迫った。


 体をひねり、ぎりぎりで避ける。


 服の表面が浅く裂けた。


「セト」


「まだ手を出すな」


「時間がかかっている」


「それでも俺の相手だ」


 シアは倒した魔物の横に立ち、セトの戦いを見ていた。


 残りの二体は、林の手前から様子をうかがっている。


「援護の練習をする」


「今はいい」


「大会では必要なんだろ」


「練習なら、先に言ってから――」


 シアの指先に小さな火が灯った。



※第5話「白炎」は全四回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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