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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第4話 魔剣の噂

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(三)優勝賞品、魔剣

◆ 光の大神殿


 王都へ到着したのは、それから数日後だった。


 大神殿は、王都の中心に建つ白い石造りの建物だった。


 高い窓から差し込む光が、床へ真っすぐ落ちている。


 光の聖剣は、神殿中央の祭壇に安置されていた。


 白銀の刀身。


 金色の装飾。


 刃の周囲には淡い光が漂い、離れた場所からでも強い力を感じる。


 火の聖剣とは違い、今も十分な力を蓄えているらしい。


「強そうだな」


 シアが言う。


「お前がそう言うと期待できるな」


「だが、違う」


「もう分かるのか」


「ああ」


 シアは祭壇へ近づかず、入口付近で足を止めた。


「光しかない」


「先代の火は?」


「感じない」


 先代イフリートから奪った力を蓄えているなら、火の痕跡が残っているはずだった。


 目の前の聖剣にあるのは、長い年月をかけて集められた光だけだった。


◆ 太陽の剣


 神殿の司祭によれば、光の聖剣は日中になると、祭壇上部の天窓から太陽光を浴びる。


 夜間も地下へは移さず、その場で厳重に管理されていた。


「二年前に持ち出されたことは?」


「ありません」


「短い間でも?」


「祭典で王都の広場へ運ばれたことはあります。しかし、大神殿の者と王都の騎士が常に同行します」


 記録も残っている。


 先代イフリートが殺されたと思われる時期にも、光の聖剣は王都にあった。


 火の聖剣と同じく、こちらも違う。


「二つ目も外れか」


 大神殿を出たセトが言う。


「何本調べれば見つかる」


「分からない」


「全部か?」


「世の中に何本あると思ってる」


「知らない」


「俺も知らない」


 シアは少し考えた。


「なら、もっと怪しい剣から調べればいい」


「どうやって選ぶ」


「魔剣と呼ばれているものを探す」


「それをどこで探す」


「人に聞く」


「魔剣を持っている奴が、素直に教えるとは思えないけどな」


◆ 力を与える剣


 二つの聖剣を見たことで、いくつか分かったことがある。


 聖剣も魔剣も、精霊力を内部へ蓄えることができる。


 火の聖剣は、火の山から力を集めていた。


 光の聖剣は、長い年月をかけて太陽の光を蓄えている。


 そして蓄えた力は、必要な時に放出できる。


「聖剣を持った英雄が強くなったという話は、剣の力を使っていたからか」


 セトが尋ねる。


「たぶんな」


「白刃とは違うな」


「白刃は、セトが剣を強くしている」


 シアは光の大神殿を振り返った。


「あれは、剣が人間へ力を渡す」


 白刃は、セトが周囲の精霊を集めて、その場で作る剣だ。


 握っただけで、セト自身の力が増えるわけではない。


 聖剣や魔剣には、蓄えた力を使い手へ流すものもある。


 人間の体を強くし、普段は使えない精霊術を使わせることもあるらしい。


「先代を殺せるほど力を蓄えた魔剣か」


「見つければ分かる」


「何を根拠に」


「火があるか見る」


「先代の火と、普通の火は区別できるのか」


「近くで見れば、たぶん」


「たぶんか」


「見たことがないからな」


 シアにしては、珍しく慎重な答えだった。


◆ 張り紙


 二人は王都の宿屋で、次に向かう場所を相談することにした。


 宿屋の一階は酒場も兼ねており、壁には仕事や催しを知らせる紙が何枚も貼られている。


 空いている席を探していたシアが、そのうちの一枚の前で止まった。


「セト」


「どうした」


「魔剣がある」


 声が大きかった。


 周囲の客が一斉に振り返る。


 セトはシアの隣へ行き、張り紙を見る。


 近隣の都市で開かれる精霊術大会の告知だった。


 参加者は二人一組。


 予選を勝ち抜いた者たちが競い、優勝した組には賞金と特別な武器が与えられる。


 その武器について、張り紙には大きな文字で書かれていた。


 ――優勝賞品、魔剣。


「ずいぶん堂々と書いてあるな」


「これを調べる」


 シアはすでに行く気になっている。


「本物とは限らない」


「なら、見れば分かる」


「優勝賞品だぞ。見るだけで近づけるか?」


「優勝すればいい」


◆ 二人一組


 セトは張り紙を読み直した。


 大会への参加条件は二人一組であること。


 武器の使用は認められるが、命を奪う攻撃は禁止。


 参加者の受付は、まだ締め切られていない。


「出るぞ」


 シアが言った。


「まずは大会について調べる」


「出ないと魔剣へ近づけないかもしれない」


「展示される可能性もあるだろ」


「優勝すれば確実だ」


「簡単に言うな」


「セトが前で戦って、わたしが全部倒せばいい」


「俺が前にいる意味がない」


「なら、セトは見ていろ」


「大会の意味までなくなる」


 シアは不思議そうに首を傾げた。


「勝てば同じだろ」


「同じじゃない」


「人間の大会は面倒だな」


 セトは張り紙を壁から外さず、開催場所と受付期間を覚えた。


 本物か偽物かは分からない。


 先代イフリートを殺したものとも限らない。


 それでも、魔剣と呼ばれる武器へ近づける機会だった。


「行くだけ行くか」


「ああ。出るぞ」


「まだ参加するとは言ってない」


「二人一組だ」


 シアは張り紙の文字を指す。


「セトとわたしで二人いる」


「人数の問題じゃない」


 だが、他に有力な手掛かりもない。


 二人は翌朝、魔剣が優勝賞品となる大会の開催地へ向かうことになった。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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