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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第4話 魔剣の噂

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(二)聖剣と魔剣

◆ 蓄えられた力


「違う」


 しばらくして、シアが言った。


「分かるのか」


「ああ。先代から奪った火は感じない」


 剣の中にあるのは、この山の火だった。


 壁や地面を通じ、長い時間をかけて少しずつ集められた力。


「この剣は、山の火を蓄えているのか」


「ああ。集めた力を中へ残し、必要な時に使う」


 シアは火の聖剣を見たまま続けた。


「こういう剣を、人間は聖剣と呼ぶことがある」


「こういう剣?」


「力を蓄え、それを使い手へ与える剣だ」


 神官が怪訝そうにシアを見る。


「聖剣を知らなかったのか」


「人間が何と呼ぶかは知っている。だが、その呼び方はあまり正確ではない」


「どういう意味だ」


「同じ仕組みの剣でも、人間を害するものは魔剣と呼ばれる」


「魔剣?」


「人や魔物、精霊術から力を奪い、中へ蓄える剣だ」


「それは、聖剣とは別のものではないのか」


「力を蓄え、必要な時に使う仕組みは同じだ」


 シアは岩壁を流れる赤い光を指した。


「この剣は山から火を集めている。人間を傷つけず、長い間守られてきた。だから聖剣と呼ばれている」


「魔剣は、人や魔物から奪うのか」


「そういうものが多い」


 違うのは、力の集め方と人間からの扱われ方だった。


 剣そのものの仕組みに、大きな違いがあるわけではない。


◆ 聖と魔


「なら、聖剣か魔剣かは、人間が決めた呼び名なのか」


 セトが尋ねる。


「ああ」


「剣そのものに善悪があるわけではない?」


「剣に意思があるとは限らない。使う人間と、力の集め方が違うだけだ」


 火の聖剣は、この山から少しずつ火の力を受け取っている。


 誰かを襲わなければ力を保てないわけではない。


 一方、魔剣と呼ばれるものには、周囲の生き物や精霊術から強引に力を奪うものがある。


「先代の力を奪ったものも、魔剣かもしれないということか」


「剣なら、その可能性がある」


「だが、人間から聖剣と呼ばれている可能性もある」


「ああ。名前だけでは分からない」


 人間が付けた呼び名と、実際に蓄えている力が一致しているとは限らない。


 聖剣と呼ばれていても、別の何かから力を奪っているかもしれない。


 調べるべきなのは名前ではなく、その中に何の力が残っているかだった。


◆ 二十年前


「この剣が最後に使われたのはいつだ」


 セトが神官へ尋ねた。


「二十年ほど前だ」


「誰かが持ち出したのか」


「いや。この神殿で力を解放したと記録されている」


 その時、剣が長年蓄えてきた火のほとんどを使い切った。


 それ以降、刀身から立ち上っていた炎は消え、山から少しずつ力を集め直しているという。


「二十年前から、ここを動いていないのか」


「ああ。私の先代も、その前の神官も管理している。台座から抜かれた記録はない」


 先代イフリートが殺されたのは、およそ二年前。


 この剣が二十年前に力を使い切り、それ以降ずっと神殿にあるのなら、先代殺害には使えない。


「違ったな」


 セトが言う。


「ああ」


 シアは火の聖剣を見ていた。


「だが、探すものは少し分かった」


「先代の火を蓄えている剣か」


「剣とは限らない」


「それは分かってる」


「だが、こういうものなら、奪った力を残しておける」


 火の聖剣は先代を殺したものではなかった。


 それでも、力を奪ったものが何をしているのか、その可能性の一つは見えた。


◆ 王都の聖剣


 神殿を出る前、神官が二人を呼び止めた。


「力を蓄える剣を探しているなら、王都にも聖剣がある」


「火の剣か?」


「いや、光の聖剣だ」


 王都の大神殿には、太陽の光を蓄える聖剣が安置されている。


 百年以上前から存在し、剣を持った英雄へ光の加護を与えたという記録も残っていた。


「火の剣ではないなら関係ない」


 シアが言う。


「先代の火を蓄えている可能性はある」


 セトが答えた。


「光の聖剣と呼ばれていても、光だけを持っているとは限らないんだろ」


 シアは少し考えた。


「確かにそうだな」


「調べる価値はある」


「なら行く」


 火の山を下りた二人は、そのまま王都へ向かうことにした。


 火の聖剣は違った。


 だが、空振りというだけではない。


 聖剣という呼び名だけで、調査から外してはいけないことが分かった。



※第4話「魔剣の噂」は全三回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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