(七)人間へ預けた境界
◆ 三人が残った理由
「一つ確認したい」
セトが言った。
「なぜ、シアとネアとリグは残っている」
三人の精霊王がセトを見る。
「原光の枯渇は三人も受けた。眠りの王も同じ世界にいる。それでも取り込まれていない」
「強かったからだ」
シアが答えた。
「ほかの精霊王も同じ程度には強いだろう」
「わたしの方が強いかもしれない」
「確認できない相手まで、自分より弱いことにするな」
「リグはどう思う」
セトが尋ねた。
「俺も考えていた」
「答えは?」
「精霊剣だろう」
リグはハルヴェンを見る。
「俺とネアとシアの共通点は、それしかない」
「三人とも、人間へ身を預けた」
ハルヴェンが言う。
「ええ」
ネアも頷いた。
「眠りの王に取り込まれなかった理由としては、最も可能性が高いでしょう」
◆ 人間側に残る境界
「剣になったこと自体が重要なのか」
「剣の形ではありません」
ネアはセトへ近づいた。
「精霊剣は、精霊王が人間へ身と力を預ける形態です。単に武器へ変わるのではありません」
「人間とつながる」
「ええ」
「それが、眠りの王から守った?」
「わたしたちの境界を、人間側にも残したのだと思います」
セトはシアを見る。
「俺の中に、シアの一部があるということか」
「力を取り込んでいる、という意味ではありません」
ネアが答える。
「シアがシアであるという認識です」
「わたしはシアだ」
シアが言った。
「ああ」
「セトも知っている」
「知っている」
「なら、わたしは残る」
シアは簡単に結論を出した。
「名前を覚えているだけでいいのですか」
ハルヴェンが尋ねる。
「名前だけではありません」
「では?」
「リグがどのように判断し、何を望み、誰へ身を預けたか。あなたはそれを知っています」
「全部ではありませんよ」
「全部である必要はないのでしょう」
ネアはリグとハルヴェンを見る。
「少なくとも、リグを雷の精霊王という役割だけではなく、一人の存在として認識している」
「当然です」
「その認識が、人間側へリグの境界を残しています」
「眠りの王がリグを取り込もうとしても、俺の側にはリグが残っている?」
「完全に取り込まれたあとでも戻せるかは分かりません。ですが、取り込もうとする作用に対して、別の側から境界を保つ力にはなったのでしょう」
◆ 預けられた存在
リグがハルヴェンの肩へ手を置く。
「俺が俺であることを、お前も持っていたということか」
「言い方が重いですね」
「嫌か」
「嫌ではありませんが、急に言われると困ります」
「ハルヴェンは俺へ身を預けているわけではない」
「そうですね」
「俺は預けている」
「知っています」
「なら問題ない」
◆ 二人を分けるつながり
「何の確認だったんです?」
リグは答えなかった。
シアがセトの隣へ立つ。
「セトも、わたしを持っている」
「その言い方だと、俺が所有しているように聞こえる」
「わたしが預けた」
「分かっている」
「ネアもだ」
「わたしまで一緒にしないでください」
「でも預けた」
「否定はしません」
セトは二人を見る。
「俺が二人を別々に認識しているから、残った?」
「おそらくは」
ネアが答えた。
「二本を同時に使っても、俺の中では別のままだ」
「ええ」
「極炎と絶光を混ぜて、一つの精霊剣にしようとはしていない」
「できるとも思わないでください」
◆ 増えた理由
「しない」
「それならよいです」
ハルヴェンが小さく息を吐いた。
「二人と精霊剣としてつながっていることが、また別の意味ですごくなってきましたね」
「戦闘で使えるだけではなかった」
セトが言う。
「二人が二人のままでいるためのつながりにもなった」
「やはり、二つの技よりそちらの方がおかしいです」
「まだ言うのか」
「今回は特に褒めています」
「前もそう言っていた」
「前よりも、褒める理由が増えました」
※第21話「目覚める眠り」は全九回です。
続きます。
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