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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第21話 目覚める眠り

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(六)敵ではないもの

◆ 敵ではないもの


「眠りの王は、東の海岸にいるのか」


 セトが尋ねた。


「どこにでもいる、と言うことはできます」

「それでは探せない」

「原光の空白がある場所には、眠りの王の作用が現れ得ます」

「では、世界中にいる?」

「一つの身体が世界中へ広がっているのか、各地の空白が一つの存在としてつながっているのかも分かりません」

「だが、流れは東へ向かっている」


 リグが言った。


「ええ」

「東に中核がある?」

「その可能性が最も高いでしょう」


 ネアは東へ向かう流れを示した。


「ローディア王国よりもさらに東。大陸東端の海岸付近へ、取り込まれた流れが偏っています」

「なら、そこが眠りの王の本体だ」


 シアが言う。


「本体と呼べるものがあるかも分かりません」

「一番多く集まっているところ」

「中核位置と呼ぶなら、そこが最も近いでしょう」


◆ 東の中核


「正確な場所は?」

「確定できません」

「なぜだ」

「そこへ届く前に、流れそのものの境界が消えるからです。海岸のどこなのか。海上なのか。地中なのか。それとも場所とは別のところへつながっているのか。そこまでは追えません」

「近くまで行けば分かる」

「近づけば、わたしたちも取り込まれる可能性があります」


 シアが自分を指した。


「わたしたちは残った」

「残れたことと、中核へ近づいても無事であることは別です」

「セトとつながっている」

「そのつながりが、どの程度まで眠りの王へ抵抗できるかは分かりません」


 リグも頷いた。


「俺とハルヴェンのつながりが切れない保証はない」

「切れたら、もう一度つなぐ」

「お前は簡単に言うな」

「できるかもしれない」

「できないかもしれない」


◆ 近づけない場所


 セトが言った。


「対策なしでは行かない」

「でも、場所は分かった」

「最も可能性の高い場所が分かっただけだ」

「行かなければ確かめられない」

「近づく方法を考えてからだ」

「考えている間に、ほかの精霊王が取り込まれる」

「だから急いで考える」


 シアはしばらくセトを見た。


「分かった。急いで考える」


◆ 安全とは言えない


 ハルヴェンが周囲を見る。


「今いる場所も安全とは限らないのですよね」

「空白はあります」


 ネアが答える。


「俺たちも、いつか取り込まれる?」

「否定はできません」

「安心できる言葉が一つもないですね」

「分からないことを安全だとは言えません」

「ネアらしい答えだ」


 リグが言った。


「分からないのに大丈夫と言われるよりはいいでしょう」

「それはそうだ」


◆ 倒す方法


 シアが腕を組む。


「なら、空白ごと殴る」

「何を殴るのです」

「何もないところ」

「手応えもありませんよ」

「広い範囲を全部殴れば、どこかに当たる」

「原光の空白では、炎を作る原光も足りません」

「先にためる」

「放った力も取り込まれる可能性があります」

「もっと多くためる」

「量の問題ではありません」

「では、近づいて殴る」

「最初へ戻っています」


 シアは不満そうに黙った。


「倒す方法がないと言っているのか」

「まだ方法の話はしていません」

「あるのか」

「それを考えるには、眠りの王が何であるかを、もう少し確かめる必要があります」


◆ 敵意のない災害


「敵かどうかもか」


 セトが尋ねた。


「敵意はないと思います」

「これだけ精霊王を取り込んでいるのに?」

「敵意と被害は別です」


 ネアの答えに、ハルヴェンが頷いた。


「洪水や地震に、人間への敵意はありません。ですが、人は死にます」

「近いと思います」

「眠りの王は災害か」

「現象です」

「精霊王ではなく?」

「精霊王でもあります」

「どちらだ」


 シアが尋ねる。


「両方です」

「分かりにくい」

「眠りの王自身が曖昧な存在なのです」


 リグが境界を失った光へ近づいた。


「本人は、自分が何をしているか理解していると思うか」

「本人というものがあれば、ですが」

「呼びかければ答える可能性は?」

「低いでしょう」

「試す価値はある」

「どう呼びかけるのです」

「眠りの王」

「それは人間や精霊王が現象へ付けた呼び方です。本人の名前ではありません」


◆ 名前のない現象


「名前がないのか」

「役割名すら、正確にはありません」


 シアが顔を上げた。


「では、眠りの王は自分とほかを分けていない?」


 ネアはシアを見る。


「そうかもしれません」

「だから全部を自分へ入れる?」

「ええ」

「それなら敵ではない」

「シア?」

「敵なら、わたしたちと自分を分けている」


 シアは境界を失った光を指した。


「これは、分けていない。敵だと思う部分もない」

「しかし、止める必要はある」


 セトが言う。


「それはそうだ」


 シアは迷わず頷いた。


「敵でなくても、嫌なことをするなら止める」



※第21話「目覚める眠り」は全九回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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