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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第21話 目覚める眠り

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(二)世界へ戻らないもの

◆ 残っているもの


 精霊王は、通常の精霊とは異なる。

 通常の精霊は、原光から一時的に属性を得た微細な存在だ。

 火を起こす。風を動かす。水を集める。人間の身体を補助する。

 役割を終えれば、再び周囲の流れへ戻っていく。

 一方、精霊王は特定の属性と役割を持ち続ける。

 火の精霊王は、火を担う一個人として存在する。

 雷の精霊王も同じだ。

 原光から分かれたあとも、同じ役割と人格を保ち続ける。

 だから、本人が姿を見せていなくても、その属性の流れを深く探れば、存在している痕跡は残る。


「痕跡もないのですか」


 ハルヴェンが尋ねた。


「まったくないわけではありません」


 ネアが答える。


「そこが不自然なのです」

「いるのか、いないのか、どちらです?」

「以前はそこにいたことが分かります」

「今は?」

「個体としては確認できません」


◆ 死亡との違い


 ハルヴェンは少し考えた。


「死亡した場合とは違うんですか」

「違います」

「なぜ分かる」


 セトが尋ねる。


「精霊王が死ねば、役割だけが世界へ残ります」


 ネアは地面へ手を向けた。

 淡い原光が集まり、その一部が銀青色へ変化する。


「人格と記憶は失われますが、属性の役割までは消えません。残った役割を起点に、いずれ次代が生まれます」

「シアと同じだな」

「ああ」


 シアが答えた。


「先代が死んで、残った火の役割からわたしが生まれた」

「先代そのものが戻ったわけではない」

「知識はある。でも、先代の記憶はない」


◆ 世界へ戻らない役割


 ネアの手元に集まっていた銀青色の光が、いくつかに分かれた。

 分かれた光はそれぞれ別の方向へ流れていく。


「死亡した精霊王の痕跡は、このように役割へ戻ります。個人としてまとまっていた流れがほどけ、次代が生まれるまで世界の中へ薄く残るのです」

「今回も、ほどけているのでは?」


 ハルヴェンが言った。


「いいえ」

「何が違うんです?」

「世界へ戻っていません」


◆ 消えた先を追う


 分かれていた光が止まる。

 ネアが指を閉じると、光は一か所へ集まった。


「個人として存在していた形は失われています。ですが、役割も周囲の流れへ戻っていない」

「では、どこにある」


 リグが尋ねた。


「それを調べています」


 ネアは手を下ろした。


「完全に消えたのではありません。どこかへ移ったと考える方が自然です」

「精霊王を丸ごと移せるものがあるのか」


 セトの問いに、ネアはすぐには答えなかった。


「分かりません」

「知らないのか」


 シアが尋ねる。


「知識に、近いものはあります」

「では、それを使えばいい」

「近いだけです。今起きているものと同じかは、まだ分かりません」

「確かめるには?」

「消えた流れをたどります」



※第21話「目覚める眠り」は全九回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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