(一)戻り始めた原光
◆ 戻り始めた原光
古代兵器が停止してから、原光は少しずつ世界へ戻り始めていた。
吸い上げられていた流れが解放され、枯れかけていた森にも変化が現れている。
すでに枯れた葉が元へ戻ることはない。
それでも、新しく伸びた芽には緑があった。
精霊術も安定し始めている。
術を使おうとしても精霊が集まらない。集まった精霊が途中で散る。逆に必要以上の精霊が集まり、制御できなくなる。
各地で起きていた異常は、少しずつ減っていた。
古代兵器による原光の枯渇は終わった。
そのはずだった。
「戻っています」
ネアは目を閉じたまま言った。
周囲には、淡い光の粒が漂っている。
どの属性にも分かれていない原光だった。
粒はネアの周囲をゆっくり巡り、やがて本来の流れへ戻っていく。
「昨日より多いです。流れの乱れも弱くなっています」
「なら、もう問題ないのか」
シアが尋ねた。
「原光だけを見れば、回復へ向かっています」
「原光だけ?」
「精霊王からの反応はありません」
◆ 返らない声
ネアが目を開ける。
少し離れた場所では、リグも周囲の流れを探っていた。
髪の先で紫白色の細い雷が弾ける。
雷は空気へ散らず、原光の流れに沿って細く伸びた。
だが、途中で途切れた。
「こちらも同じだ」
リグが言った。
「何も返らない」
「原光が戻ってもか」
セトが尋ねる。
「ああ」
◆ 返らない精霊王
セトは右手を開き、もう一度握った。
指は動く。
剣を握れる程度の力も戻っていた。
二本の精霊剣を同時に使ったあとの重さは、まだ身体の奥に残っている。
それでも、古代兵器を倒した直後のように、身体を起こすことすらできない状態ではない。
「リグが確認できる相手は、全員同じなのか」
「全員ではない」
「反応した者がいる?」
「そういう意味ではない」
リグは首を横へ振った。
「もともと所在を知らない者もいる。確認する手掛かりすらない者まで含めて、全員とは言えないという意味だ」
「分かる範囲では?」
「返った者はいない」
セトはネアを見る。
「ネアも同じか」
「ええ」
「原光が足りなかったから、返せなかったわけではない?」
「その可能性は低くなりました」
ネアの声は落ち着いていた。
だが、問題が軽くなったとは感じていない声だった。
「完全に回復したわけではありません。しかし、簡単な反応すら返せないほどではありません」
◆ 行き先を決める
「眠っているのかもしれない」
シアが言った。
「全員がですか」
「同じことが起きたなら、同じように眠る」
「何が起きたかが分からないでしょう」
「だから調べる」
シアは立ち上がった。
「どこへ行く」
セトが止める。
「精霊王を探しに行く」
「どこへ?」
シアの足が止まった。
「いそうなところ」
「それが分からないから調べている」
「では、歩きながら探す」
「行き先も決めずに歩けば迷う」
「迷ったら戻る」
「戻る道が分からなくなったらどうする」
「目印を残す」
「その目印まで見失う可能性がある。先に行き先を決める」
シアは少し考えた。
「分かった。決めてから探す」
「最初からそう言っている」
リグが小さく笑う。
「今代のイフリートは、相変わらず先に動くな」
「最後に見つかれば同じだ」
「途中で余計なものまで見つける」
「それなら得だ」
「危険なものでもか」
「危険なら倒す」
「やはり先に行き先を決めろ」
「もう分かった」
※第21話「目覚める眠り」は全九回です。
続きます。
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