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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第20話 来なかった精霊王たち

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(六)来なかった精霊王たち

◆ 調べる順番


「動けるようになったら、どこから探す」


 セトが尋ねた。


「最後に所在が知られていた精霊王からです」


 ネアが答える。


「すぐに確認できるだけでも、複数います」

「リグが連絡を取ろうとした相手も含まれる?」

「重なっている者もいるでしょう」


 ネアはリグを見る。


「あなたが呼びかけた相手と、その場所を教えてください」

「ああ」

「重なっていない相手から調べれば、範囲を広げられます」

「俺たちも行く」


 ハルヴェンが言った。


「ヴァレスト王国へ戻らなくていいのか」


 セトが尋ねる。


「今回の異常が世界規模なら、西だけを守っていても解決しません」

「国の許可は?」

「あとで報告します」

「先にではないのか」

「リグと行動していると、そういう順番になることがあります」

「人のせいにするな」


 リグが言った。


「今回は、リグが急に東へ行くと言ったんですよ」

「お前もすぐ同意しただろう」

「一人で行かせる方が危険ですから」

「なぜ俺が危険なんだ」

「話を聞く前に雷を落とすからです」

「今回は正しかった」

「今回は、です」


 シアが二人を見る。


「やはりセトとわたしに似ている」

「どちらがどちらだ」


 リグが尋ねる。


「ハルヴェンがセト。リグがわたし」

「俺はもう少し考えてから動く」

「わたしも考えている」

「お前は考えたあとが早すぎる」

「それならリグも同じだ」


 ネアが静かに頷いた。


「やはり似ていますね」


◆ 終わったはずの異常


 夕方になると、戦場から届く音は少なくなった。

 大砲はもう撃たれていない。古代兵器が動く音もない。原光の流れも、少しずつ本来の道へ戻っている。

 このまま回復が進めば、枯れ始めた森にも変化が現れるかもしれない。

 精霊術の不安定さも、時間とともに収まる可能性がある。

 古代兵器による異常は終わった。

 少なくとも、目の前にあった原因は取り除かれた。

 それでも、別の異常が残っている。


「リグ」


 ネアが呼んだ。


「何だ」

「最初に連絡を取ろうとしたのは、いつですか」

「原光の減少を明確に感じたあとだ」

「それから一度も?」

「返答はない」

「異常が始まる前は?」

「しばらく連絡を取っていない。普段なら、それで困ることもないからな」

「今回は困る」

「ああ」


 リグの声から軽さが消えた。


「原光が戻り始めても、返事がないままなら、異常はまだ終わっていない」


 シアが天幕の外を見る。


「返事をしないだけかもしれない」

「そうであればよいのですが」


 ネアが言った。


「よくない。返事くらいしろ」

「そうですね」

「見つけたら言う」

「何をですか」

「返事をしろ、と」

「まずは無事か確認してください」

「無事なら言う」


 セトは目を閉じた。


「動けるようになってからだぞ」

「分かっている」

「本当に?」

「分かっている」

「今度は、たぶんではないな」

「たぶんではない」


 セトは少し安心して、身体の力を抜いた。


◆ 来なかった者たち


 夜。


 戦場の監視へ残った兵士から、古代兵器に変化はないと報告が入った。

 原光は戻り続けている。中枢は沈黙したまま。再生も起きていない。

 ローディア王国を脅かした古代兵器との戦いは、これで終わった。

 だが、世界の異常に気づいていたのは、セトたちだけではないはずだった。

 原光を吸われた土地。枯れた森。不安定になった精霊術。力を奪われた精霊王。

 これほど大きな異常が起きても、現れたのは火と月と雷だけだった。

 来られなかったのか。

 来ようとしなかったのか。

 どこかで別の異常へ対処しているのか。

 それとも、返事をすることさえできないのか。

 今はまだ、何も分からない。


「古代兵器は全部倒した」


 シアが言った。


「ああ」


 セトが答える。


「次は精霊王を探す」

「俺たちが動けるようになってからだ」

「分かっている」

「ネア」


 セトが呼ぶ。


「はい」

「連絡の取れる精霊王が、一人もいないのか確かめるんだな」

「ええ」

「本当に誰も見つからなかったら?」


 ネアは、すぐには答えなかった。


「見つからない理由を探します」


 古代兵器は、もう原光を吸っていない。

 それでも、来なかった精霊王たちは戻らなかった。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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