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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第20話 来なかった精霊王たち

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(四)確認に来た理由

◆ 五人


 治療を終えると、五人は救護所の隣にある小さな天幕へ移された。

 負傷者の治療を妨げず、話もできる場所だった。

 セトは簡素な寝台へ横になっている。シアはその隣の椅子へ座った。ネアは入口の近くに立つ。ハルヴェンとリグは、向かい側へ腰を下ろした。


「改めて、ハルヴェンです」


 ハルヴェンが言った。


「西のヴァレスト王国で騎士をしています」

「ここは東のローディア王国だ」


 セトが言う。


「かなり遠くまで来たんだな」

「はい」

「国の命令で来たのか」

「いいえ」


 ハルヴェンはリグを見る。


「今回は、リグの判断です」

「俺だけではない」


 リグが答える。


「ハルヴェンも来ると決めた」

「俺が一人で帰ると言ったら、止めたでしょう」

「当然だ。精霊剣として戦うなら、お前がいなければ始まらない」

「なら、二人の判断です」

「そういうことにしておこう」

「西でも古代兵器が動いていたのか」


 セトが尋ねる。


「いや」


 リグが答えた。


「西では、古代兵器そのものは確認していない」

「では、なぜ東へ来た」

「原光の異常は西でも起きていた」


 リグの表情から笑みが消える。


「森の状態も、精霊術の乱れも、こちらと大きくは変わらない。西に原因がないなら、別の場所を調べる必要があった」

「それで東まで?」

「それだけではない」


◆ 確認に来た


 リグは少し間を置いた。


「助けに来た、と言いたいところだが、どちらかというと確認に来た」

「確認?」


 ネアが尋ねる。


「お前たちと連絡が取れるかどうかだ」


 シアが首を傾げた。


「わたしたちを知っていたのか」

「ネアが東にいることは知らなかった。今代のイフリートが人間と行動しているという話は聞いていた」

「噂か」


 セトが言う。


「ああ。ハルヴェンが聞いた噂と同じものだ」

「それでわたしたちを探した?」

「お前たちだけではない」


 リグは腕を組んだ。


「ほかの精霊王にも呼びかけた」

「返事は?」


 ネアが尋ねる。


「ない」

「全員ですか」

「俺が連絡を取ろうとした範囲では、誰からも返らなかった」


 シアがリグを見る。


「だから、実際に探しに来たのか」

「そうだ。お前たちまで見つからないなら、原光の異常だけでは済まない」


 ハルヴェンが続ける。


「東へ向かう途中で、原光が大きく曲がっている場所を感じました」

「わたしが流れを止めていた場所ですね」


 ネアが言う。


「はい。近づくと砲撃の音が聞こえ、巨大な兵器が見えました」

「それで、事情も聞かずに飛び込んできた」


 セトが言った。


「聞いている余裕はなさそうでしたから」

「正解だ」


 シアが頷く。


「もう少し遅ければ、原光のある場所まで逃げられていた」


◆ 返事がない


 ネアは考え込んでいた。


「ほかの精霊王から、まったく返答がないのですか」

「少なくとも、俺が知っている相手からはな」

「普段から連絡を取っているのか」


 セトが尋ねる。


「頻繁には取らない」


 リグが答えた。


「精霊王は、それぞれ自分のいる土地や現象を見ている。人間の軍や組織のように、定期的に報告をするわけではない」

「二百十三年ぶりに会う程度です」


 ネアが言った。


「そこをまた正確に言うのか」

「事実ですから」

「なら、返事がないのも普通ではないのか」


 セトの問いに、リグは首を横へ振った。


「一人や二人ならな」

「今回は違う?」

「世界中で原光が減った。どこにいても、何かしらの影響を受ける規模だ」


 ネアも頷いた。


「森が枯れ、精霊術が不安定になり、精霊王自身の力にも影響が出ています。異常に気づかないとは考えにくいでしょう」

「気づいても、ここへ来るとは限らない」


 シアが言う。


「それはそうです」

「自分のいる場所を守っているかもしれない」

「その可能性もあります」

「なら、おかしくない」

「いいえ」


 ネアは静かに否定した。


「来ないことだけなら、おかしくありません」

「何が違う」

「返事がないことです」



※第20話「来なかった精霊王たち」は全六回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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