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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第20話 来なかった精霊王たち

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(三)二つの極大技

◆ 二つの極大技


 ハルヴェンは倒れた古代兵器へ目を向けた。


「今回は万雷で広い範囲を壊し、再生に原光を使わせました」

「バリバリが効いた」


 シアが言う。


「最後は、皆さんが作った道へ迅雷を通しました」

「ズドンだ」

「シア」


 リグが低い声で呼ぶ。


「名前は覚えた。万雷と迅雷」

「なら、その名前で呼べ」

「バリバリとズドンの方が分かりやすい」

「俺には分かりにくい」


 ハルヴェンは少し笑いながら続ける。


「迅雷だけでは、中枢まで届かなかったと思います」

「極炎でも届かなかった」


 シアが言った。


「極炎の跡があったからです。外殻と内部の壁が一度破壊され、再生も完全ではなかった。そこへ迅雷を通せました」

「跡がなくても届いたか?」

「難しかったでしょうね」

「なら、二人で届いた」

「そういうことです」


 シアは満足そうに頷いた。

 リグは岩陰のセトを見る。


「もっとも、二つの極大技より、俺にはお前の方が理解できない」

「俺が?」

「火と月。二人の精霊王がお前へ身を預けている」


 ハルヴェンも頷いた。


「二つの技を使うより、二人と精霊剣としてつながる方が、どう考えてもすごいですけど」

「人間としての限界はあると、安心したんじゃなかったのか」

「限界があることには安心しました」


 ハルヴェンはセトと、その近くにいるシアとネアを見る。


「ですが、二人の精霊王から選ばれ、二本の精霊剣を使えること自体は、やはり普通ではありません」

「同時に使える時間は短い」

「使える時点で言っています」

「今も一度使い切っただけで、この状態だ」

「限界まで使えば動けなくなる。それは人間として普通です」


 ハルヴェンは一度言葉を切る。


「二人と精霊剣としてつながっていることは、普通ではありません」

「俺が二人を剣にしているわけではない」


 セトが言った。


「二人が決めた」

「そこも含めて言っています」

「何がだ」

「二人から選ばれているところです」


 セトはシアとネアを見る。

 シアは当然のように頷いた。

 ネアは何も言わなかったが、否定もしなかった。


◆ 戦いのあと


 古代兵器の周囲では、国軍が損害の確認を始めていた。

 破壊された大砲。砲撃でえぐられた地面。崩れた岩壁。倒れた兵士。

 兵器を破壊できたからといって、戦場から被害が消えるわけではない。

 救護班が負傷者を担架へ載せ、後方へ運んでいく。

 動ける兵士は、古代兵器の周囲へ縄を張っていた。

 中枢を破壊したとはいえ、安全が完全に確認されたわけではない。

 隊長がセトたちのもとへ来た。


「兵器が再び動く可能性はあるか」

「中枢の原光は消えました」


 ネアが答える。


「外から流れ込む原光も、兵器の内部には入っていません。すぐに再起動する可能性は低いでしょう」

「低い、か」

「絶対にないとは言えません」

「分かった。監視は残す」


 隊長は倒れた兵器を見る。


「解体も待たせる。内部へ入るのは、安全を確認してからだ」

「その方がよいでしょう」

「それから、お前たちも救護所へ行け」


 隊長はセトだけでなく、シア、ネア、ハルヴェンにも目を向けた。


「全員、ひどい状態だ」

「わたしは動ける」


 シアが答える。


「動けることと、無事であることは違う」


 隊長はそれだけ言い、兵士たちの方へ戻った。

 シアがセトを見下ろす。


「歩けるか」

「さっきよりは」

「では立て」

「待ってください」


 ネアが止めた。


「さっきより動けることと、歩けることは同じではありません」

「試さなければ分からない」

「立たせて倒れたら、傷が増えます」

「わたしが支える」

「あなたも消耗しています」


 シアはハルヴェンを見る。


「ハルヴェンに運ばせるか」

「俺ですか?」

「一番元気そうだ」

「俺も迅雷を使った直後ですよ」

「歩けている」

「基準が低すぎます」


◆ 救護所


 結局、セトは二人の兵士が運ぶ担架へ載せられた。

 本人は歩けると言い張ったが、身体を起こしたところで腕の力が抜けた。

 シアは何も言わず、担架の横を歩く。

 ネアは少し離れ、周囲の原光を確認しながらついてきた。

 流れは少しずつ元へ戻っている。

 古代兵器が吸い上げた分が、すぐにすべて戻るわけではない。

 それでも、岩場を通る原光は明らかに増えていた。

 救護所は、戦場から離れた野営地に作られていた。

 大きな天幕の下に寝台が並び、負傷者の治療が続いている。

 セトは空いていた寝台へ下ろされた。

 術士が胸と腕へ手を当て、精霊力の流れを確認する。


「大きな傷はありません」

「なら戦える」

「戦えません」


 術士は即答した。


「精霊力の流れが弱りきっています。少なくとも今日は休んでください」

「今日は、か」

「明日も戦わないでください」

「何日だ」

「回復を見て決めます」

「曖昧だな」

「無理をした人ほど、回復する日数は曖昧になります」


 術士はシアとネアを見る。


「お二人もです」

「わたしは動ける」


 シアが答える。


「動けることと、休まなくてよいことは違います」


 先ほどネアが言ったものと似た言葉だった。

 シアはネアを見る。


「同じことを言った」

「正しいからでしょう」

「今日は、わたしの味方がいない」

「最初から休むという選択をすれば、敵も生まれません」


 ハルヴェンも別の術士から腕と脚を調べられていた。


「こちらは軽い消耗ですね」

「軽いですか」

「そちらの寝台にいる人と比べれば」


 術士がセトを見る。

 ハルヴェンは少し安心したように頷いた。


「やはり、俺より無茶をしていたんですね」

「比べるな」


 セトが言った。



※第20話「来なかった精霊王たち」は全六回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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