↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第19話 雷の精霊剣

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
108/251

(七)迅雷

◆ 最後の離脱


 古代兵器が残った力を脚へ集めた。

 外殻の光が消える。

 砲口も動かなくなる。

 再生も止まる。

 すべての原光が、前進するためだけに使われている。


「逃げることだけに絞った」


 シアが言う。


「攻撃しなくなった分、動けるようになっています」


 ハルヴェンが答える。

 古代兵器が一歩進む。

 原光の止まった地域の境界まで、もう遠くない。


「脚を壊す!」


 シアが飛び込む。

 炎を叩き込む。

 外殻が割れる。

 だが、兵器は再生しない。

 壊れた脚を引きずりながら、別の脚で進む。


「直さなくなった」

「残りを全部、移動へ回しています!」


 ネアが叫ぶ。


「もう内部の原光はほとんどありません!」

「なら、止まるまで壊す!」


 国軍の大砲が撃つ。

 砲弾が脚を破壊する。

 術士たちの攻撃が接続部を焼く。

 古代兵器は、それでも前へ進んだ。

 最後の一歩を踏み出そうとする。

 その先には原光がある。

 境界を越えれば、再び吸収を始める。


「行かせるか!」


 シアは兵器の正面へ飛び込んだ。

 両手で脚を押す。

 炎を噴き出す。

 巨体は止まらない。

 シアの足が地面へ沈む。

 ハルヴェンが隣へ並んだ。


「少しだけ止めてください」

「何をする」

「中枢まで行きます」

「場所は分かるのか」

「あなたたちが開けた跡が残っています」


 極炎が貫いた道。

 再生しきらなかった亀裂。

 その延長上に中枢がある。


「一度で抜けるのか」

「抜きます」


 ハルヴェンが剣を後ろへ引いた。


『ハルヴェン』

「はい」

『まっすぐだ』

「いつもどおりですね」


◆ 迅雷


 シアは残った力をすべて炎へ変えた。

 古代兵器の正面から、巨体を押し返す。

 兵器の動きが一瞬だけ止まった。


「今だ!」


 ハルヴェンの身体を雷が包む。

 髪の先と瞳が白く光る。

 地面を蹴った。


「迅雷!」


 紫白色の一本の線が、古代兵器へ突き刺さった。

 最初の外殻を抜く。

 内部の管を切断する。

 極炎が開けた道を通り、その奥へ進む。

 再生しかけた壁を貫く。

 最後の防壁へ衝突する。

 雷が一点へ集まった。

 黒い壁が割れる。

 ハルヴェンの姿が、その向こうへ消えた。

 一瞬の静寂。

 古代兵器の内部から、雷があふれ出した。

 外殻の隙間すべてが紫白色に光る。

 中枢が砕ける音が、地面を通して響いた。

 古代兵器の脚から力が抜ける。

 巨体が前へ傾いた。


「離れろ!」


 シアが叫ぶ。

 兵士たちが退避する。

 巨大な兵器が地面へ倒れた。

 山が崩れたような音が、岩場全体へ広がる。

 土煙が舞い上がった。


◆ 雷の剣を持つ青年


 誰も動かなかった。

 古代兵器の外殻に、白い光は戻らない。

 砲口も動かない。

 壊れた脚も再生しない。


「ネア」


 シアが尋ねる。


「原光は」

「兵器の内部には、ほとんど残っていません」

「中枢は?」

「流れが消えました」


 終わった。

 ネアは、ようやく両腕を下ろした。

 偏向されていた原光が、少しずつ元の流れへ戻っていく。

 それでも古代兵器は動かなかった。

 中枢は完全に破壊されている。

 倒れた兵器の側面で、内側から金属が押し開かれた。

 ハルヴェンが外へ出てくる。

 濃い青の服と鎧は黒く焦げていた。

 灰色がかった茶髪も乱れている。

 それでも、手にした長剣には紫白色の雷が残っていた。


「無事か」


 シアが尋ねる。


「無事です」


 ハルヴェンは兵器から飛び降りた。

 着地した瞬間、膝が少し揺れる。


「少し疲れましたが」

「さっきのは何だ」

「説明は、そちらの人が動けるようになってからでいいですか」


 ハルヴェンは、岩陰で横になっているセトを見た。


「精霊剣の使い手なら、あの状態で話を続けるのはつらいでしょうから」


 シアもセトを見る。

 セトは片腕を上げた。


「聞こえている」

「なら、簡単に」


 ハルヴェンは剣を立てた。


「西のヴァレスト王国で騎士をしている、ハルヴェンです」


 紫白色の雷をまとった剣が、わずかに震える。

 剣の内側から、男の声がした。


『細かい話はあとでいい。まずは休ませろ』


 シアは剣を見る。

 人間の青年が持つ、意思のある雷の剣。

 火の精霊剣、極炎。

 月の精霊剣、絶光。

 そして、三本目。

 最後の古代兵器を貫いたものは、雷の精霊剣だった。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。