(六)落ちる雷
◆ 落ちる雷
空が光った。
雲はない。
それでも、巨大な雷が古代兵器へ落ちた。
紫白色の光が、外殻全体を走る。
シアへ向けられていた砲撃が途切れた。
古代兵器の身体が大きく揺れる。
シアは後ろへ跳んだ。
「雷の精霊王?」
違う。
兵器の上に、一人の人間が立っていた。
長身の青年。
灰色がかった茶髪。
濃い青のサーコートと軽装の鎧。
手には、紫白色の放電をまとった長剣がある。
青年が剣を外殻へ突き立てる。
雷が兵器の表面を駆け抜けた。
砲口。
脚。
再生しかけている亀裂。
外殻の接合部。
雷は、一か所ではなく兵器全体へ広がっていく。
いたるところで金属が弾けた。
古代兵器が再生を始める。
同時に、外殻を走る原光が大きく弱まった。
「誰だ」
シアが尋ねる。
青年は兵器から飛び降りた。
着地する直前、身体の周囲へ細い放電が走る。
「事情はあとで」
青年は剣を構えた。
「今は、あれをこの場所から出さなければいいんですよね」
「ああ」
「では、手伝います」
◆ 広がる雷
古代兵器が青年へ砲口を向けた。
青年は地面を蹴る。
一瞬、姿が消えた。
次の瞬間には兵器の側面へいる。
砲撃が、誰もいない地面を貫いた。
「速い」
シアが言う。
青年の剣から声がした。
『ハルヴェン。広く削れ』
「分かっています」
青年――ハルヴェンは剣を地面へ突き立てた。
「万雷!」
紫白色の雷が、地面から古代兵器へ跳ね上がる。
一本ではない。
無数の雷が外殻へ広がった。
装甲の隙間へ入り込む。
砲口を焼く。
脚の接続部を破壊する。
内部の管へ伝わり、複数の場所を同時に壊していく。
どの一撃も、極炎ほど深くはない。
中枢へ届くような攻撃ではない。
だが、破壊された場所が多すぎる。
古代兵器は、そのすべてを再生しようとした。
外殻の白い光が一斉に動く。
「それだ」
シアが笑う。
「もっと直させろ!」
「目的は理解しました」
ハルヴェンは剣を引き抜く。
「壊すより、直させる方が効くわけですね」
『随分と変わった倒し方だな』
剣の声が言う。
「倒せれば何でもいい」
シアが答えた。
◆ 火と雷
シアが正面から飛び込む。
兵器の砲口を殴り、上へ向ける。
発射された光が空へ消えた。
ハルヴェンが側面を駆ける。
剣を振るうたび、雷が外殻を伝う。
シアの炎は、一か所を大きく壊す。
ハルヴェンの雷は、広い範囲へ小さな破壊を重ねる。
国軍の大砲が、二人の作った亀裂へ砲弾を撃ち込む。
術士たちが内部へ火と風を流す。
古代兵器が再生する。
原光が減る。
兵器が攻撃する。
さらに減る。
「右へ動くぞ!」
シアが叫ぶ。
「止めます!」
ハルヴェンが雷をまとい、右脚へ突進した。
剣が外殻を切り裂く。
脚が折れ、古代兵器が傾いた。
再生が始まる。
だが、遅い。
黒い金属が途中まで伸び、止まる。
「減っている!」
ネアが叫んだ。
「内部を流れる原光が、明らかに弱くなっています!」
「あと少しだ!」
シアは兵器の上へ跳んだ。
炎を両足へ集め、再生しかけた外殻を踏み砕く。
ハルヴェンの雷が、その亀裂へ入り込む。
内部で爆発が起きた。
古代兵器の動きがさらに遅くなる。
※第19話「雷の精霊剣」は全七回です。
続きます。
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