(五)埋めるしかなかった理由
◆ 境界へ向かう
古代兵器が止まった。
すべての脚を地面へ下ろし、動かなくなる。
「止まったか?」
隊長が大砲の横から顔を出す。
「まだです!」
ネアが叫んだ。
「内部に原光が残っています!」
古代兵器の外殻を走る光が、前方へ集まる。
攻撃ではない。
脚と身体の接続部へ流れている。
「動くぞ!」
古代兵器が方向を変えた。
これまで進んでいた誘導路ではない。
原光を止めている岩場の外へ向かっている。
「どこへ行く」
シアは兵器の進路を見る。
ネアが原光を偏向している地域には、明確な境界がある。
その外には、通常どおり原光が流れている。
「分かっているのか」
古代兵器に意思があるのかは分からない。
だが、原光が入らない場所から出ようとしている。
外へ出れば、再び周囲から原光を吸収できる。
再生速度も戻る。
ここまで使わせた内部の原光も、補充される。
「右側を撃て!」
隊長が命令する。
「進路を戻せ!」
砲弾が古代兵器の右脚へ集中する。
外殻が砕ける。
兵器は止まらない。
一歩。
地面が揺れる。
二歩。
原光が止まっている地域の端へ近づいていく。
「行かせるな!」
シアは走った。
◆ 埋めるしかなかった理由
シアは古代兵器の前へ回り込んだ。
両手へ炎を集める。
正面の脚へ、炎を叩き込んだ。
爆発。
外殻が砕ける。
兵器の動きが一瞬止まる。
だが、壊れた脚が再生を始めた。
別の脚を前へ出す。
止まらない。
「過去の精霊王たちが、埋めるしかなかったのは、これのせいか」
月の精霊王が原光を止めた。
火と雷の精霊王が攻撃した。
兵器の内部に蓄えられた原光を減らした。
だが、空になる前に兵器が動き出した。
原光の止まっている場所から逃げようとした。
「外へ出さないために」
シアは兵器の下を見る。
「土の精霊王が、この場所ごと埋めた」
完全に破壊することはできなかった。
ならば、せめて原光の流れへ戻さない。
巨大な土と岩で押さえ込み、動けないまま地中へ封じる。
それが、過去の精霊王たちに残された最後の手段だったのかもしれない。
「でも、今は土の精霊王がいない」
シアは拳を握る。
「だから、ここで止める」
◆ 離脱を止める
シアは古代兵器の脚を殴り続けた。
一つ壊す。
再生が始まる前に、隣を壊す。
兵器の巨体が傾く。
国軍の砲撃が背後から続く。
術士たちの攻撃が脚の接続部へ集中する。
それでも古代兵器は前へ進む。
一歩ごとに、原光の止まった地域の外へ近づく。
「左の脚を撃て!」
「砲身が持ちません!」
「持たせろ! ここを出られたら全部やり直しだ!」
砲身が赤く焼けている。
兵士たちは水をかけ、再び砲弾を詰めた。
シアは兵器の正面へ立った。
外殻の奥で原光が動く。
砲口が開いた。
シアは横へ跳ぶ。
光が地面を削る。
攻撃を避けた分だけ、兵器は前へ進んだ。
「避けたら進む」
シアは足を止めた。
次の砲口が光る。
今度は避けない。
両腕を交差させ、炎を前へ広げた。
兵器の光と、シアの炎がぶつかる。
押される。
靴が地面を削る。
炎が薄くなる。
「シア、離れてください!」
ネアが叫ぶ。
「離れたら逃げる!」
「あなたが消えます!」
「消えない!」
シアはさらに炎を出した。
兵器の光がわずかに押し返される。
だが、長くは持たない。
腕の感覚がなくなる。
視界が白く染まる。
その時だった。
※第19話「雷の精霊剣」は全七回です。
続きます。
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