(三)極炎でも届かない
◆ 極大技
破壊した入口が閉じ始めた。
外殻だけではない。
切断した内部の管も、周囲の金属を取り込みながらつながり直している。
このままでは、押し戻される。
「シア」
『分かっている』
「一瞬だけ合わせる」
『ああ』
セトは極炎を両手で構えた。
剣となったシアの力と、自分の動きを重ねる。
すべてを力へ変えればよいわけではない。
セトが剣を振るう。
シアが、その一瞬へ最大の炎を重ねる。
二人のタイミングが完全に合った時だけ、極炎は最大の力を出す。
「極炎!」
赤白い炎が、内部を埋め尽くした。
剣が黒い壁へ触れる。
触れた場所から、金属が消し飛んだ。
厚い壁に一本の穴が開く。
奥へ向かって、炎の道が伸びた。
さらに壁。
極炎はそれも貫く。
その先に、白く輝く巨大な構造物が見えた。
中枢。
だが、遠い。
炎の勢いが弱まる。
開いた道の先で、中枢を守る最後の壁が残っていた。
「届かない……」
極炎の刀身から炎が消える。
セトの身体から力が抜けた。
片膝をつく。
『セト』
「もう一度だ」
『無理だ』
「あと一枚――」
『無理だ!』
極炎が赤い光へ変わった。
シアが人の姿へ戻る。
セトは支えを失い、その場へ倒れた。
◆ 引きずり出す
破壊した通路が閉じ始める。
外殻の亀裂から、黒い金属が伸びてくる。
シアは倒れたセトの脇へ両腕を入れた。
「立て」
「少し待て」
「待ったら埋まる」
シアはセトを引きずった。
セトの靴が、黒い金属の上を擦る。
セトの手は動いている。
意識もある。
だが、立ち上がるだけの力が残っていない。
「自分で歩く」
「歩けていない」
「少し休めば」
「それは外に出てからだ」
後ろで金属が閉じる音がする。
シアは炎を足元で爆発させた。
セトを引きずったまま、一気に通路を進む。
閉じかけた外殻の隙間へ飛び込んだ。
背後で黒い金属がぶつかり合う。
ほんの少し遅ければ、二人とも内部へ閉じ込められていた。
「救護班、こっちだ!」
隊長が叫ぶ。
シアは答えず、セトを引きずり続ける。
古代兵器から離れ、砲撃の届かない岩陰まで運んだ。
そこでようやく手を離す。
「ここなら死なない」
「まだ戦える」
「剣を握れないだろ」
セトは手を上げようとした。
指がわずかに動くだけだった。
「少し休めば戻る」
「今は休め」
「シア」
「わたしが行く」
「一人では無理だ」
「倒すとは言っていない」
シアは兵器へ振り返った。
◆ 止まらない再生
最大出力の極炎で開けた穴が、閉じていた。
一度は内部まで貫いた。
中枢の手前まで届いた。
それだけの破壊が、すでに元へ戻ろうとしている。
原光の流れは止まったままだ。
ネアも制御を続けている。
それでも兵器は再生していた。
「ネア!」
シアが叫ぶ。
「本当に入っていないのか!」
「入れていません!」
ネアの声にも余裕がない。
「この地域へ入ろうとする流れは、すべて外へ逃がしています!」
「なら、中にある」
「そのようです!」
シアは古代兵器を見上げた。
外から原光を得られなくても、再生できる。
兵器の内部に、原光が蓄えられていた。
これまで倒した兵器にも、ある程度は蓄えがあった。
だが、この大型兵器が持つ量は異常だった。
極大技を受け、中枢の手前まで破壊されても、なお再生を続けている。
「だから止まらなかったのか」
前日の推測が、ようやくつながった。
過去の月の精霊王も、原光の流れを止めた。
火と雷の精霊王が攻撃した。
それでも兵器は動き続けた。
外から入る原光を止めるだけでは足りない。
内部へ蓄えた分まで、なくさなければならない。
※第19話「雷の精霊剣」は全七回です。
続きます。
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