(六)過去と同じ場所
◆ 原光を止める者
作戦会議が終わったあと、セトはネアを呼び止めた。
「流れを止めている間、ネアは大丈夫なのか」
「問題ありません」
「兵器が原光を引けば、その力とぶつかるんだろ」
「そうなりますね」
「どれくらい持つ」
「実際にやってみなければ分かりません」
「本当に問題ないのか」
「長時間になれば、負担は増えます」
「なら、ほかの術士と交代できないか」
「原光の中心を精密に止めるなら、わたしが適任です」
「ほかの術士では」
「流れを弱めることはできます。しかし、兵器が強く吸えば崩される可能性があります」
シアも近づいてくる。
「倒すまで持たせろ」
「簡単に言いますね」
「わたしも倒すまで壊し続ける」
「セトが先に動けなくならないようにしてください」
「今回は一本だけだ」
「一本でも、極炎を使い続ければ負担はあります」
「分かっている」
シアはセトを見る。
「無理なら言え」
「シアもな」
「わたしは言う」
「言わないだろ」
「セトよりは言う」
ネアが小さく息を吐いた。
「二人とも、限界になる前に言ってください」
◆ 戻された丘
翌朝までに、原光の流れを狭める作業が終わった。
かつて丘があった場所に、土と岩が積まれている。
昔と同じ形ではない。
人が作った、長く低い壁だった。
原光を通しにくい岩を外側へ置き、内側へ土を詰めている。
術士たちは壁の形を保つために精霊術を使った。
兵器が起動した後も、可能な限り形を維持する予定だった。
ネアが壁の前へ立つ。
目を閉じ、原光の流れを確かめる。
東と西から来ていた大きな流れが、壁に沿って集まっていく。
狭い一点を通り、窪地へ向かう。
「一本になっています」
ネアが言った。
「止められるか」
セトが尋ねる。
「ええ」
ネアは指先を流れへ触れさせた。
ほんの一瞬だけ、原光の向きを横へ変える。
窪地へ向かっていた淡い光が途切れた。
地面の下から響いていた振動が、わずかに弱くなる。
すぐにネアは手を離した。
原光が元の流れへ戻る。
振動も戻った。
「止まったな」
シアが言う。
「一瞬だけです」
「本番では止め続ける」
「ええ」
「なら、あとは壊すだけだ」
ネアは窪地の方角を見た。
「それで終わるかどうかは、まだ分かりません」
「終わらせる」
シアは迷わず答えた。
◆ 過去と同じ場所
兵士たちが誘導路の両側へ配置につく。
大砲は、原光を止める岩場を囲むように並べられた。
過去の精霊王たちも、この場所で戦ったのかもしれない。
月の精霊王が原光の流れを変える。
火の精霊王が、強い炎で外殻を壊す。
雷の精霊王が、一点を突破する。
そこまでは想像できる。
だが、なぜ中枢を破壊できなかったのか。
なぜ最後には兵器を地中へ残したのか。
その答えは、まだ地面の下にあった。
「今度は中枢まで届かせる」
シアが言った。
「ああ」
セトは頷く。
「過去の精霊王たちが何をしたのか、全部は分からない」
「なら、戦いながら確かめる」
ネアは、原光の流れが一本になる場所へ立った。
「できれば、確かめずに終わってほしいところですが」
「終わればそれでいい」
「それには同意します」
その直後、窪地の方角から大きな音が響いた。
土と岩が崩れる音。
地面の奥で、巨大なものが身じろぎする音。
見張りの兵士が、高台から叫ぶ。
「亀裂が広がっています!」
隊長が腕を上げた。
「全員、配置につけ!」
兵士たちが大砲へ走る。
術士たちが、誘導路の左右へ散った。
「予定どおり、原光の止まる場所へ誘導する!」
ネアは一本へ集められた原光の前へ立つ。
セトはシアの隣へ並んだ。
過去の月の精霊王が、原光の流れを変えた場所。
火と雷の精霊王が、巨大兵器を攻撃したかもしれない場所。
そこで今度は、セトたちが最後の古代兵器を迎え撃つ。
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