第70話 桑原さんの質問
「うるさいなあ。細かい事言う男子は嫌われるよ」
お前、俺の顔がそこまで良くなかったとまで言っておいてその言い草はなんだ。まあ良いけどさ。そんな事を離していたら自販機の前まで来たので俺達は皆の分のジュースを買う。
「全部持つよ」
「良いよ。二人で来たんだから私も持つ」
俺が三つ、溝口に二つ持たせて別荘にまで戻る。リビングには三人がくつろいでいた。
「じゃあ、俺は風呂入ってくるから」
俺はテーブルにジュースを置いて、着替えを取りに自分の部屋に戻ろうとする。
「おっ、美少女の残り湯楽しむんやな」
「そんな事するか!!」
俺はその後、大浴場と書いてある扉を開けると脱衣所もかなり広い。旅館でもやるつもりなのか。
その後、一人で入るにはあまりにも広すぎる風呂に入って今日の事を考える。
「溝口があんなに悩ませているなんてな」
まさか俺の事をそんなに思ってくれているとは自分の想像力のなさに呆れる。俺は湯船に浸かりながら考えてしまう。
「戸松君、ちょっとええか?」
「桑原さん?大丈夫だよ」
脱衣所から桑原さんの声がする。俺は湯船に浸かりながら答える。わざわざこんな所まで来てどうしたんだろうか。
「ちょっと二人で話をしたくてな。のぼせんように短くすませるわ」
「あ、うん」
「今日は本当にありがとうな」
「ああ、それは良いよ。もう何回もお礼を言われてるし」
桑原さんの表情は扉で見えないが申し訳ないと思っているのだろうか。それは本当に桑原さんは悪くない。わざわざナンパしてキレてきた向こうが悪いのだ。
「……、で本題なんやけど竹之内さんと溝口さんの事本当に恋愛感情はないんか?」
どうやら、今日話したことをもう一度確認したいとのことだった。
「話した通りだよ。俺には恋愛感情っていうのが……」
「それって本当なん?」
「……」
桑原さんの真意が分からず俺は黙ってしまう。何と返せば良いのだろうか。
「戸松君が二人の事を特別な目で見ているっていうのは分かるで」
「それは……」
二人は元々俺の大切な友達だった。そしてあの告白である。恋愛感情で自分達を見てくれるように頑張ると言われたのだ。
「二人の気持ちには当然気付いてるんやろ?」
「まあ、告白されてるし……」
「え?告白されてるん?二人に?」
やべ、つい余計なことを話してしまった。ていうか二人から聞いてなかったのか。
「で返事は?」
「……断った」
「え、勿体な。二人と付き合うって言えば良かったやん」
良い訳あるか。それに俺も二人も絶対納得しないぞ。
「そんなんやと永遠に童貞やで」
「そんな呪いを吐くのは止めて欲しい」
そんな悲しい事を言わないでくれ。俺が生涯独り身だなんて悲しすぎるぞ。
「でも美少女二人から好かれるなんて、そんな機会なんて二度と無いかもしれんやん」
「それはそうだけど……」
確かに俺って滅茶苦茶勿体無い事をしているのか。でもそんな下心で二人の気持ちに向かい合いたくないんだよ。
「あんな……、世のカップルはな。ちょっと良いなと思ったとかで付き合うたりすんねんで」
「……」
言ってる事は分かる。最初は軽い気持ちでも付き合っている内にその想いが本物になることだってあるだろう。
「でも俺は二人に真剣に向か合うって決めたんだ。俺なんかのためでも泣いてくれるんだ。大事にしたい」
「……、そっか」
俺の答えに桑原さんは黙ってしまった。どうしたんだろうか。
「今更ウチが入る隙間は無いんかな……」
「今、何て言った?」
桑原さんの独り言が小さすぎて俺には聞こえなかった。俺に聞かせるつもりが無かったのだろうか。
「ううん、何でも無いんや。聞きたいことは聞けたし」
「そう?」
桑原さんは満足したのか脱衣所から出ていったみたいだ。さっきの問答で何が分かったのだろうか。
「俺も出るか……」
桑原さんが脱衣所にいないのを確認して風呂から出る。話に夢中になっていたがいい湯だった。それにしても桑原さんが確認したい事って何だったのだろうか。
もしかして俺が溝口と竹之内さんの二人に見合った男なのかを確かめたかったって事か!?俺は脱衣所でパジャマに着替えてリビングに行くと何やら盛り上がっている。
「どうしたんだ?」
「あっ、峻君!!今女子会?というものをやっていました」
「あ、じゃあ俺いないほうが良い感じか?」
女子会というものがイマイチ分かっていないが俺がいないほうが盛り上がるなら退散した方が良いだろう。
「まあこのメンバーに入ってるんだから峻も女子みたいなもんでしょ」
「いや、全く女子ではないんだが」
俺という異物を入れた女子会が始まろうとしていた。
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