第67話 溝口の本音
バーベキューも終わり、俺は庭でコンロをタワシでゴシゴシ掃除をしている。女子達は中で他の片付けをしている様だ。
「峻」
「お、溝口」
溝口は二つ飲み物の缶を持って俺に「どっち飲む?」と尋ねてきた。俺は炭酸の方を指差すとベランダのテーブルに載せた。
「何か手伝う事ある?」
「いや、もう終わる。後は干しておけば良いだろ。そっちは?」
「私達も終わってお風呂が沸いたら入っちゃう。大浴場だったからみんなで入るから覗くんじゃないよ」
「覗く訳無いだろ。てか大浴場なんだ……」
正直、美少女たちの入浴シーンに興味がないと言ったら嘘になるが覗きなんてするか。
「ふ〜ん、私の裸に興味無いの?」
「なっ、無いわ!!」
一瞬、ためらってしまった。ていうかコイツ何いってんの?
「ぷっ、顔赤いよ。照れて可愛いね」
「う、うっさいわ!!」
溝口に揶揄われて悔しすぎる。何か反撃出来るような事を言えたら……。そうだ。
「そ、そこまで言うなら一緒に寝るか?」
俺は恥ずかしさでプルプル震えながら反撃する。俺がそう言うと溝口は呆気にとられたのかきょとんとしている。
「ふっ、分かったらあんまりからかうようなことを……」
「峻は、わ、私と一緒に寝たいの?」
溝口は顔を下げて俺に尋ねてきている。表情が見えないがどんな顔をしているのだろうか。
「え、い、いや、冗談……」
「じゃあ、寝たくないの?」
溝口は急に俺の眼の前に立つ。溝口の顔は俺の顔の直ぐ側まで来ていてもうすぐキスしてしまうんじゃないかという距離だ。
「み、溝口……」
「私だってもっとゆっくり攻めようかと思ったよ……、でもさ桑原さんまで峻の事好きになったら私勝ち目ないもん」
よく見ると溝口はぷるぷる震えている。勇気を出して言ったのだろう。カッコいい男ならこういう時、抱きしめてあげたりするのだろうか。俺は体が動かない。
「桑原さんは俺の事なんて……」
「そんなの分かんないじゃん。そもそも、竹之内さんにだって勝てる所なんて」
どうしたんだろう。溝口がこんなに弱気になっているなんて何かあったんだろうか。いや、不安にさせているのは俺のせいなのか。だけど俺が溝口に俺の事なんて忘れて他の人を好きになれだなどと言えない。
「溝口、俺は……」
溝口は泣いている。俺と桑原さんが仲良くなっている様子で焦ってしまったのだろう。俺は溝口をベランダにある椅子に座らせて溝口の手を握る。俺は溝口の目線にあわせるように屈んだ。
「峻……」
「俺はお前の事好きだよ」
溝口は涙目になって俺の目を見つめてくる。俺の言う好きが自分の好きとは違う事を分かっているのだろう。溝口は笑わない。
「でもお前や竹之内さんの気持ちには答えられない。前にも言ったけど恋人としての好きがわからないからだ」
溝口の気持ちを思って俺が告白を受けることは出来る。だけどそれはきっと彼女達が求めているものではないのだろう。
「だけどお前が苦しむ所も見たくないんだ。俺はどうすれば良い?」
俺が尋ねると溝口は涙を拭って俺に笑いかける。
「峻の、そういう正直な所が好きなんだ。自分に嘘をついて私達と付き合ってはいけないって分かってる所も」
「……」
「偶に考えちゃうんだ……、私じゃなく竹之内さんと一緒に歩いている峻の姿を」
溝口は苦笑いをしてそう呟く。溝口が葛藤しているのだろうという事は分かるが、彼女の気持ちは分からない。いや、分かると思ってはいけないというべきか。
「溝口、辛いなら……」
俺は先程言ってはいけないと思っていた言葉が喉まででかかる。
「やめて」
「……」
「例え、峻が私じゃない誰かと付き合ってさ。私が振られちゃったとしてもその言葉だけは聞きたくない」
「ごめん……」
俺は後悔する。彼女になんて残酷なことをしようとしたのだろうか。寄り添うふりをして俺の心は醜い。俺は下を向く。彼女の顔を見られなくなったからだ。
「そんなの許さない」
溝口は俺の顔を両手で掴んで、溝口の正面に向けさせられる。
「峻が誰と付き合ったとしても自由だよ。でも私の心は否定させない。絶対」
「……」
「ごめんね、そんなに重く考えないでよ。私は今みたいに皆で楽しむ時間も大好きなんだ」
「ああ、俺もだ」
俺は溝口や竹之内さん、太田さん、それに桑原さんまで加わっている今の時間が楽しい。そして溝口は俺の顔を掴むのを止めて立ち上がる。
「それじゃ、お風呂入ってこようかな」
「ああ、いってらっしゃい」
溝口は室内に戻ろうとする。そして俺の方に一瞬振り返る。
「……覗いてもいいよ」
「良い訳あるか」
最後は冗談を言い合った。
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