Method41:アポカリプス2
タイトルバックイラスト:西山りょう
その昔、かにがRPGツクール2000で制作したゲームの小説化!
ゲーム版のメッセージや内容を抽出したものを再構成し、西山さんが小説化を担当しました。
エンドレス・ロード関連作品。
https://ncode.syosetu.com/n7077gj/
沙良の目がカッと見開く。
「くっ……そんな……そんなことが……! なら……神はいるのか! その判断を誰がする? 神か!」
由香はその問いに対する回答をジョーカーから教えてもらってはいなかった。
だが、由香が力を発動する時、自分ではない『なにかの意思』が介在することを体感していた。
「違うよ。この世界に存在するありとあらゆる意識、そうありたいと強く思う気持ちが、有形になって世界が出来たんだよ。何もなかったはずの無に生まれた揺らぎが、私達の始まりなの! 沙良ちゃん……きっと本当のあなたは優しいから、望んでないことなんて現実になるはずないよ……!」
「うるさいっ、うるさいっ……! オマエになにがわかる!」
獣のように吠えて、沙良は再びカッターナイフを薙ぎ払い、真空波を由香と円に放つ。
「きゃあああ!」
「くっ!」
「響! 円! 大丈夫か!」
「う、うん、私は平気。円さんは……?」
「……少し飛ばされて転んだだけだ。だが、沙良が響とまったく同じ力を……!」
沙良は左足を上げ、完全にカプセルから出た。
ザブン。
静かなフロアに水の音が木霊する。
由香と紗良が向き合った。
「私の力はオマエとは違う。これは最凶の力。起きうる可能性の中で、もっとも最悪なことを引き寄せることができる力だ」
「私の……正反対……?」
沙良は力を使ううちに、自分のPPが残り少なくなってきていることを感じていた。
なら、ラグナロクに組み込むのは似た力を持つ由香でもいい。
沙良は由香へと一歩一歩近づく。
ザブン、ザブン。
「こうなったら、オマエの力を取り込んでやる。そして……この世界を破壊し尽くした後に新世界を創造する。私の思い通りの新世界を……!」
「やめろ沙良! そんな世界は誰も望まないっ!」
円は由香を庇い(かばい)一歩前へ出た。
「あうっ……!」
いきなり電撃でも受けたかのようにうめくと、沙良は頭を抱えて怯んだ。
そのまま膝を折りうずくまる。
一瞬おとずれた静寂の中、コンピュータの作動音が響く。
「なんだ……?」
何か得体の知れないどす黒い気配を円は感じていた。
それはものすごく低く、遅い心臓の音のようにも聞こえた。
(鼓動が……、鼓動が聴こえる……?)
円は由香と神崎を振り返ったが、彼らには聞こえていないようだ。
(沙良の鼓動か……?)
(いや……違う! もっと、もっと大きな音……)
(なんだ?……この重くて黒い不快な感じは……!)
その音の正体は円には分らなかったが、それが沙良を苦しめてるものの正体だと直感で理解した。
「黙れ……っ!」
円は虚空に向かい、得体の知れない音に対して圧力をかけた。
僅かに音が小さくなり、沙良の体の力がすっと抜けて水盤の縁に倒れ込む。
円が沙良に駆け寄り、その細い肩を抱く。
「沙良……! 沙良……! 大丈夫か?」
耳元で聞こえる懐かしい声に、紗良は薄っすらと目を開けた。
その瞳に狂気はない。
「う……、お姉ちゃん……」
大型コンピュータを操作していた神崎は、表示されるデータを見てフロアにいる全員に鋭い声を発する。
「まずいぞ! ラグナロクのエネルギーが臨界に達したっ!」
神崎の言葉を待たずに、けたたましいサイレン音がフロアに鳴り響いた。
『警告!……全員シェルターへ退避! 警告!……全員シェルターへ退避!』
紗良を抱く円の腕に力が籠もる。
「世界は……終わるのか……」




