Method40:アポカリプス1
タイトルバックイラスト:西山りょう
その昔、かにがRPGツクール2000で制作したゲームの小説化!
ゲーム版のメッセージや内容を抽出したものを再構成し、西山さんが小説化を担当しました。
エンドレス・ロード関連作品。
https://ncode.syosetu.com/n7077gj/
「神崎、まだか?」
換気用ダクトの中を歩く円が振り返る。
「もうすでにここは最下層だ。このまま進めば実験棟の中へ出られるはずだ」
「そうか、先を急ぐぞ」
円が神崎から渡された小型蛍光灯をかざして進む。
しばらく歩くとほのかな明かりが見え、ダクトの金網が現れた。
「みんな、さがっていろ」
ハンドガンを構えた円が金網の四隅のネジを撃つ。
パン、パン、パン、パンッ。
「行くぞっ」
叫ぶやいなや、円がダクトの金網を蹴破って巨大なフロアへと転がり出た。
神崎と一緒にフロアに出た由香は思わず息を飲む。
「ここが……ラグナロクのあるユニオンの最深部……エンドオブドグマ……!」
エンドオブドグマ。
広い空間の床に巨大な水盤がある。
その中央に大型コンピュータと幾つものケーブルに繋がれたカプセルが1つ。
「あれだ! ラグナロクの制御装置だ!」
そう叫んで駆け出そうとした神崎を円が止める。
「待てっ。何かおかしい!」
3人の視線の先で『プシューッ』とカプセルの蓋が開いた。
中から膝丈の黒いドレスを着た少女がゆっくりと立ち上がる。
いつもは冷静な円の目が見開かれた。
「あ、あれは……! まさか……沙良!?」
紗良はコンピュータの上に置かれていたカッターナイフを手に取った。
その目に生気はなく虚ろである。
「あ、危ない! 離れてッ!」
沙良は前触れもなく、いきなり円達を襲った。
手にしたカッターナイフで由香と同様の真空の刃を出現させたのだ。
由香が神崎を突き飛ばし、円は寸でのところで沙良の真空波をかわす。
「くっ……!」
かまいたちの威力に円の頬が切れて血が滲む。
「沙良! 私だ……円だ! わからないのか!」
円の声が聞こえないのか、沙良は何もない空間に目をやる。。
「ふーーん、そう。どうやらクリスが死んだみたいね。残念。用が済んだら私が殺そうと思っていたのに……。誰がやったのかしら? RESも全てを教えてくれないから不便ね」
「なにっ……どういうことだ、紗良……!」
「RESはユニオンが開発した未来予測コンピュータだ。ラグナロクの実験結果の演算に使用していたのか……!」
由香は神崎の言葉に首を振る。
「ち、違うの神崎くん! RESっていうのは、予測コンピュータじゃなくて、本当は私達のいる現実から少し未来の時間を先行するβ世界の観測機なんだよ!」
「なに!?」
由香はジョーカーからもたらされた情報を手短に話した。
紗良がカプセルから右足を踏み出した。
ザブン。
膝まである水が音を立てて揺れる。
「そう……私がユニオンに連れ去られ、クリスに生体コントロールユニットとしてラグナロクの一部に組み込まれてから、数え切れないほどの破壊実験をした。私はもう、壊した世界の数を覚えてはいない」
「それは錯覚だよ! この世界が壊れたことは一度もないよ!」
必死で言い募る由香に沙良はかすかに顔を向けた。
「同じことだ。私はクリスの力なんかなくても、いつも思うがままこの装置を使って世界を破壊してきた。観測結果は成功していて、そのフィードバックも私の記憶に直接刻まれている。なのに、現実だけが何も起きていない……! なぜだ!」
円は頬から滴る血を手の甲で拭った。
「つまり、本来起こるはずの出来事がβ(ベータ)世界の段階でキャンセルされている……? 事象の可逆?」
「事象は不可逆が原則のはず。通常はありえないはずだが……」
神崎の言葉に由香はもどかしそうに会話に割って入った。
「そうなんけど、そうじゃない時もあるんだ! それが、その世界にとって『適切でないと判断された』場合、起こるはずのことが起こらないんだよ!」




