Method17:時の迷宮4
タイトルバックイラスト:西山りょう
その昔、かにがRPGツクール2000で制作したゲームの小説化!
ゲーム版のメッセージや内容を抽出したものを再構成し、西山さんが小説化を担当しました。
エンドレス・ロード関連作品。
https://ncode.syosetu.com/n7077gj/
部屋で残された少女と2人になると、会話もないまま1日が過ぎていった。
その日、渚は帰らなかった。
2日、3日、4日、5日……1週間が経っても渚は帰ってこなかった。
なんだか『不吉な予感』がした由香は、仮病を訴えて部屋から出ることができた。
普段から真面目なことが幸いして、すぐに信じてもらえたのだ。
由香は隙を見てなんとか監視の目をくぐり抜け、普段は絶対に行くことができない施設の奥へこっそり入り込んだ。
そこは地下になっていて、夜のように真っ暗だった。
少し先へ進むとわずかに明かりが漏れる部屋があり、そこから男女の話し声が聞こえてきた。
息を殺して由香は聞き耳を立てる。
「珍しいこともありますね。奴隷斡旋以外の用途でお客が来るなんて」
男性の声に女性が答える。
「なんでも人体実験に使うそうです。非合法のマッドサイエンティストの集団だそうですよ」
「高い値段がつきましたねぇ。そちら方面で売り出すのも考えないと……」
「よくよく対応を考えないとです、そういった集団や組織は。こちらに被害が出ても困りますし……」
「ははは、そうですね」
男性の笑いが響く。
「ああ、ところで進藤渚の買い手が見つかったそうですが?」
「ええ、別口でですが。脳波? だか素粒子の観測? とかおっしゃってましたが」
「ふむ、また研究者ですか。高額買い取りになるといいですねぇ」
くっくっく、と男女の忍び笑いが聞こえた。
「それと、同じ部屋のユカにも買い手がいるそうですよ?」
「ほうほう。でもあの子はまだ幼い。ちょっと早いんじゃないですかねぇ」
「ええ、ええ。でも聞いたお話ですとあの子は”特別”らしいですよ。えっと、”特別になる素養”を持っているとかで」
「なるほど、なるほど。これは高値がつきそうですなぁ……」
由香は気配を消して後退り、そこから無我夢中で駆け出した。
空っぽの頭がズキズキと痛む。
元の部屋に戻ると、由香は残っていた女の子の手を取って施設を出ようとした。
なんとか外までは出ることができたが、施設の職員に見つかって女の子とは離れ離れになった。
高い塀が四方を取り囲み越えることはできなかったが、幸いにして小柄だった由香は崩れた塀の隙間から抜け出ることができた。
しかし、はぐれてしまった女の子の方はどうなったかはわからない。




