Method10:原の屋敷3
タイトルバックイラスト:西山りょう
その昔、かにがRPGツクール2000で制作したゲームの小説化!
ゲーム版のメッセージや内容を抽出したものを再構成し、西山さんが小説化を担当しました。
エンドレス・ロード関連作品。
https://ncode.syosetu.com/n7077gj/
大広間には立食式のテーブルが所狭しと並べてあった。
招待客であろう5、60人が出入り口から離れた部屋の隅に固まって身を寄せている。
中を見渡した円は、群衆の一番手前にいる長く白い口顎髭をたくわえた一癖もふた癖もありそうな顔の老人に目を向けた。
老人は頭髪がなく着物姿で、『いかにも当主』という雰囲気を漂わせている。
「お前が原元重郎か」
「ふん、小娘が調子にのりおって! こんなことをしてタダで済むと思って……」
プフュッ。
「うおぉぉぉっ!」
「きゃあぁぁっ」
原は円に太腿を撃たれて、思わず叫び声を上げた。
原の後ろで驚いた女性の声があがる。
「こっちはお前のように遊びで生きてるんじゃないんだ。次は急所に当てるぞ」
「ぐっ、ぐおっ……、は、はやく要件を言え!」
招待客は原から更に遠のくように隅に縮こまり、視線を切らさず状況を見守っている。
「お前のアクセスキーを寄こせ。お前のキーならユニオンの本部の地下12層まで潜れるはずだ。それで教会の件は無しにしておいてやる」
「と、取引のつもりか……! そ、そんなものどうする気じゃあ!」
「原、お前は欲深い男だ。現ユニオンの代表であるクリスを失脚させることが出来れば、貴様にもユニオンの全権を握るチャンスが巡ってくるかも知れんぞ」
「な、なにをっ……? 貴様はどこまで知っておる!」
円はゆっくりと原の頭部に銃口を向けた。
「さあな。だが、これ以上私達のテリトリーに関わるな。お前の手駒なんざ私から見れば、最初から切り身になっている魚のようなものだ。深淵育ちを甘く見るなよ」
プシュッ。
再び円が発砲した弾丸は原の頬をかすめて大広間の壁へとめり込んだ。
「きゃあぁぁっ」
「ぐっ、ぐぬうっ!」
頬から血を滴らせながら、原は着物の懐から黒い巾着袋を取り出し、その中からアクリル製のカード型キーを出して円の方へ投げて寄こす。
床に落ちたキーを拾った円は、興味を無くしたように原に背を向け神崎と共に大広間を出ていった。
「……くそっ、深淵のスラム育ちの小娘め、何を企んでおるのじゃ!」
着物の袖を引きちぎり、招待客の手を借りて太腿の傷の手当をしながら原が唸る。
しばらくして、目覚めた警備の男達が大広間へ飛び込んできた。
「げ、元重郎様、大丈夫ですか!」
「まだ遠くに行っていないはずです。追いますか?」
血の気の引いた顔で原はしばし思案した。
「追わんでもよい」
「で、ですが……」
「真意が分かるまで、奴らはしばらく泳がせておけい……」




