表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
6/20

タイトル未定2026/08/17 04:45

 診療所は午前の診療時間が終わり、待合室は静まり返り閑散としていた。

 視察室に入った看護師の園田亜美そのだあみは、回転椅子に座ってパソコンと向き合っているマスターに声をかけた。

「先生、午前の診察終了です」

「お疲れ様」

 亜美は窓際に行き、使用した器具の消毒を始めた。

 消毒をしながら、亜美はちらちらマスターを盗み見していた。

 マスターは パソコンのモニターを見ながらキーを打っていた。

「お疲れ様ぁ」

 院長の診察室で仕事をする、看護師の久保由美くぼゆみが亜美の隣に来た。

 亜美の隣に立つと、由美も使用した器具の消毒を始めた。

 消毒をしている音と、キーを打つ音だけが診察室の中に聞こえる。

 ふと、携帯のラインの着信音が鳴り、マスターのキーを打つ音が止んだ。

 亜美は、そっと振り返った。

 それまでパソコンのキーを打っていたマスターは、携帯のラインの文字を読んでいた。

 その表情は、いつもの穏やかな表情と違い険しかった。

 ラインを読み終えたマスターは文字を打ち始めたが何度も打ち直し、一向にラインを送る気配がなかった。

 ラインを送るのを諦めたのか、携帯を手にしたまま診察室を出て行った。

 器具の消毒をしていた亜美は、マスターが気になって仕方がない。

 ……先生が送るのをためらってしまうラインって、どんなラインだったの?今、先生は何をしているの?

 すぐにでもマスターを追って、マスターが何をしているのか見たい亜美だったが、さすがに自重をした。


 器具の消毒を終えた亜美と由美は、休憩室に行き昼休憩をとっていた。

 テーブルを挟んで向き合って、亜美と由美はお弁当を食べた。

 亜美が言おうとしたことを、由美が言い出した。

「亜美ちゃん、見た?」

「何を?」

「ラインをもらったのに、ラインを送れない先生を」

「うん。見ちゃった」

「ラインを送れなくて、先生診察室を出て行ったけど。あれ、電話をかけに行ったんだよ」

「そうなの?携帯を、ずっと見ていたのは知っているけど」

 器具の消毒をしながら、亜美は胸の中でつぶやいた。

 ……電話をかけに行ったの、知ってる……。

 マスターがラインを送れなくて、診察室を出て、電話をかけに行ったことを亜美は知っていたが、敢えて知らないふりをした。

 そんな亜美に気が付かず、由美は言った。

「ラインの相手、誰かなぁ?やっぱ、彼女の流花ちゃんかなぁ」

「そうだね」

「どんなラインをもらって、どんな電話をしたのかなぁ。気になるね」

「気になるよね」

 この言葉は、亜美の本心だった。

「先生を困らせるような彼女って、どんな彼女かなぁ」

 ……若くてモデル並みの容姿で、大人っぽいのにあどけない顔をした彼女だよ。私たちにとって、雲の上のような存在……。

 亜美のつぶやきに気が付かない由美は、想いのままに言った。

「気になるから、先生に近づいて探っちゃおうかな」

 由美の言葉に、亜美の中で下火になっていた嫉妬が少しずつ広がっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ