タイトル未定2026/08/17 04:26
放課後、フードコートのテーブル席に座った大門と游太とりさとまひろ。
大門と游太は、ハンバーガー。
りさとまひろは、アイスクリームをそれぞれ食べた。
食べ終えると、早速グループラインを作った。
いろんな意見を出し合った結果、グループ名は「四銃士」に決まった。
「カラオケ、いつ行く?」
りさの問いに、土曜日に行くことになった。
グループラインが繋がり、カラオケが行く日程も決まった。
大門がマンションに着いたのは、夜の八時を回っていた。
マンションに着くと、診療所帰りのマスターと鉢合わせをした。
「お帰りなさい」
大門の声に、少し驚いたようにマスターは言った。
「ただいま。大門、今日は遅いですね」
「学校帰り游太君たちと、ずっと話し込んでた」
学校帰りに友人達と遊び、遅い帰りの大門をマスターは叱ることなく、大門と一緒に部屋に向かって歩いた。
「游太君たち?」
「游太君とりさっちと、まひろちゃん」
「小学生の時、一緒に修学旅行に行ったメンバーですね」
「うん。今でも、付き合いが続いているよ」
マスターは、部屋の鍵を開けた。
部屋に入ると、大門が聞いてきた。
「今夜も、ジョギング?」
「はい。大門は、どうしますか?」
「ご飯作って、待っているよ」
「ありがとう」
中学生になった大門は、週末しか走っていない。
マスターがジョギングに行く服装になり外に出ると、大門は米を研いで炊飯器のスイッチを押した。
夕飯を作りながら、大門は游太にラインを送った。
『帰り遅くなったけど、叱られなかった?』
ショッピングモールでりさとまひろと別れた後、すぐ帰ればこんなに遅い時間になることはなかった。
大門はずっと游太と話をしていたので、マンションに着いたのが遅い時間になったのだった。
味噌汁を作っていると、游太からラインが入った。
『遅くなるなら連絡しろって、めっちゃ怒られた!』
……そっか、怒られちゃったんだ。
游太のラインは、続きがあった。
『大門君は、怒られなかった?』
大門は、文章を入力して送った。
『怒られなかったよ』
『良いなぁ』
大門は、携帯を台所に置いた。
……七海は、何も言わなかった……。
遅い時間に帰宅しても、叱らなかった。
いつものように大門と会話をして、食事を作る大門に『ありがとう』と言った。
大門は今までを、振り返った。
……僕は七海に、一度だって叱られたことがない。
……七海の店で仕事をしているたきさんに紹介された後、僕は初めて七海に反抗した。
その時だって、七海は叱らず黙って僕を見ていただけだった……。
「ただいま」
マスターの声で、大門の思考が閉ざされた。
リビングに、マスターが入ってきた。
「お帰りなさい。少し早いね」
「大門が作ったご飯が待っていると思ったら、早く帰ってきました」
「ホントに?単に、疲れたんじゃないの?」
マスターは笑いながら、浴室に向かった。
シャワーで汗を流したマスターは、グレーのスウェットに着替えてリビングに入って来た。
大門は、お茶碗にご飯をよそっていた。
マスターは、冷蔵庫からミネラルウォーターを出してコップに注ぐと、食卓のテーブル席に座りミネラルウォーターを飲んだ。
大門は、ご飯と味噌汁と焼き魚とサラダを、テーブルの上に並べた。
大門はテーブルを挟んだマスターの向かいに座った。
マスターは「いただきます」と言って、ご飯を食べ始めた。
目の前で黙々と食事をするマスターに、大門は不安気に聞いた。
「もっとボリュームのある、料理のほうが良かった?」
「そんなことないですよ。美味しいです」
マスターの言葉に、大門はホッとした。
「さっき、游太君からラインが来たんだ。帰りが遅かったから、親に怒られたんだって」
「そうなんですか」
マスターは、少し驚いて言った。
「連絡もしなく、遅く帰った僕に七海は怒ったりしないよね」
「怒ったほうが、良かったですか?」
マスターの言葉に大門はキョトンとして、その後声を上げて笑った。
「怒られて、喜ぶ人なんていないよ!」
マスターは『あぁ……そうか』と言うように、納得をした顔になった。
「ボクは、叱ったり怒鳴ったりすることができません」
大門はマスターの言葉に、じっと耳を傾けていた。
「大門、ボクの父親を覚えていますか?」
大門がまだ幼い頃、マスターの見合いの席で一度だけ、マスターの父親に会ったことがある。
「あまり覚えていないけど、怖い人って言うのだけ覚えている」
「ボクも、そうでした。だから、怒ったりすることができないんです。大門が遅く帰ったことよりも、ちゃんと帰ってきたことに安心するんです」
マスターの言葉が、大門には嬉しかった。
「土曜日、游太君たちとカラオケに行ってくるよ。それから、来週から部活の仮入部が始まるから、帰りが遅くなるよ」
「何部に、入るんですか?」
「陸上部」
「どんなに遅くなっても、大門が無事に帰ってくれれば、ボクは何も言いません」
マスターに大事にされていることを身に染みた大門は、幸せな気分になった。




