タイトル未定2026/08/17 07:55
忙しかった午前の診療時間が終わり、亜美と同じ看護師の久保由美は、亜美と休憩室でテーブルを挟んで向き合ってお弁当を食べていた。
「亜美ちゃんって、意外と大胆だね」
由美の言葉に、亜美は顔を上げた。
由美は、朝の勤務時間前のことを言い出した。
「亜美ちゃん、先生に顔を近づけて、先生の彼女のことを言うんだもん」
「……見てたの?」
「うん。見ちゃった。もう驚いて、こっちが恥ずかしくなったよ。ねぇ、あの後どうなったの?」
「どうなったって。先生何も言わないし。何もないよ。それより……」
「なに、なに?」
由美は興味津々に、乗り出した。
「間近で見た先生の顔、超〜かわいかったぁ!」
「あぁ〜ずる〜い!私も先生の顔、間近で見たぁい!」
休憩室は、女子トークで盛り上がっていた。
その頃マスターは、看護師長の紫野緑と二人の行きつけの店、和食の「和み」でテーブル席で向き合って、昼ご飯を食べていた。
ここでも同じく、朝の勤務時間前の話題を、マスターは緑に話していた……と言うより、緑に愚痴っていた。
「園田さんが、急に顔を近付けたと思ったら、『休みの日に、彼女と熱ぅ〜い夜を過ごしたんじゃないんですか?』って言ってきたんですよ」
「園田さんが?」
言いながら緑は、豪快に笑った。
マスターは、笑っている緑に言った。
「顔を近づけて、何を言うかと思ったら。驚いて、何も言えませんでした」
「園田さんは、先生に惚れているからね」
「えっ、そうなんですか?」
亜美が自分に惚れていることを初めてマスターは知り、驚きを隠せなかった。
「無理ないか。先生は、流花ちゃんしか見ていないもんね」
照れ隠しをするように、マスターは丼を抱えて食べだした。
「ねぇ、園田さんが言った通り、流花ちゃんと夜を過ごしたの?」
緑の言葉にマスターは、むせ返りそうになり、慌ててお茶を飲んだ。
湯飲みをテーブルに置いたマスターは、土曜日の夜流花が泊まりに来たことを緑に話した。
「流花が泊まりに来て、夜中じゅう流花と大門の三人でテレビゲームをややっていました」
「ゲーム?」
「カートのゲームです。大門がうまいのは当たり前ですが、流花は飲み込みが早くて、常に上位のランクにいました」
「先生は?」
「常に、ビリ争いをしていました」
緑はまた、爆笑をした。
「それで、どうなったの?」
「悔しいから、カードゲームとボードゲームをやりました」
「カードゲームとボードゲームは、どうだったの?」
「まぁ、勝ったり負けたりって、感じで。『もう一度、カートゲームをやろう』って声をかけたんだけど、流花と大門は寝ていました」
「寝ちゃったんだ。先生は、どうしたの?」
「練習のつもりで、一人でカートゲームをやりました」
「一人で?淋しいね。練習の成果は出た?」
マスターは何も言わず、ご飯を食べだした。
「練習の成果……出なかったんだ」
緑も、ご飯を食べだした。




