8 真実
気のせいじゃない!!
非科学的な存在を思い浮かべ、真っ青になっていると、その声の主(?)は、カラカラと笑った。
《う〜ん……思念体っていう意味では同じ分類かもね。でも、絶対に貴方には危害は加えないから安心してよ。》
「し、思念体って……。────って、なんで俺の考えていたことが分かった!?」
やっぱりお化け!と肝を冷やしたが、やはり返ってくるのは楽しそうに笑うまだ幼い声。
多分まだ成人になっていないくらいの子供の声で、それに気づくと恐怖心は少し和らいだ。
「もしかして……この巨神の声……なのか?神経系を繋いでいるから、俺の考えていることが分かったってこと?」
《うん、半分正解かな。確かに神経系は全て繋いだから、話せるし隠し事もできなくなったね。でも、僕は別に巨神とかいうこの星のテクノロジーで生み出された存在じゃないよ。》
根本から否定され、また質問しようとしたが、真っ暗だったコックピット内が突然明るくなり、まるでガラス越しの様に外の世界が見えると……一面火の海になった外に怒り狂ったハイラビッシュの姿が見えた。
それにヒヤッ!と背筋を凍らせ、やっと戦闘中であったことを思い出す。
「ゆ、ゆっくり話している場合じゃない!このままじゃ殺される!!」
《殺される?アレに?》
声の主は、まるで心底馬鹿にする様にそう言うと、《アハハハハハ〜!!》と突然狂った様に笑った。
《あんなゴミみたいなヤツに殺されるわけないじゃないか!www大丈夫大丈夫。
あんな程度の異才じゃあ、僕に触れることすらできないから。》
「ご、ゴミ……?い、いや……だって……。」
どうみてもハイクラスレベルのハイラビッシュを前に、ゲラゲラと笑う声の主に呆然としてしまう。
だが、確かに巨神を中心とした光の壁は、ハイラビッシュの攻撃を全て無効化している。
「一体君は……何者なんだ?子供の声の様に聞こえるけど……。」
《存在としては、君たち人間とほぼ同じ進化を遂げた生物だったかな。名前は生まれてからずっとない。
身体を捨ててからは……何千億……何兆……もう遥か昔過ぎて忘れちゃったけど、とにかく沢山の時を経て、僕達はこの星に着陸したみたいだね。》
「は……??人間と同じ……?何兆って……。それに『僕達』って誰?」
ハテナしか浮かばない話に、混乱しながらも理解しようと考え込む。
それを分かっているのか、声の主はペラペラと説明してくれた。
《君たちの側からみたら宇宙人ってモノだよ。この星の霊長類と呼ばれる猿とよく似た種から進化した『人』種。
そこで文明を築き、普通に暮らしていたんだけど……ある日、星の寿命のカウントダウンが始まったんだ。
僕らが住んでいた星の膨張が少しづつ始まって、最後は周りの星々全てを巻き込むビックバンを起こして、全生命体を道連れに消える……はずだった。》
「???」
全く言っている意味が分からず、相変わらず首を傾げていると、声の主は一旦沈黙した後、また喋りだした。
《宇宙に飛び出した所で、生命活動できる星が見つかるには、きっと気が遠くなる程の時間がかかる。そんな中、人が考えた生存するための方法は、生命活動を必要とする身体を捨てることだった。
人は身体を捨て、こちらの世界で言えばデーターベース化することで、新たな『生き方』を手にいれたんだ。》
「な、なるほど……。なんだか壮絶というか……現実味がない話だが、不可能じゃないか。」
科学を駆使すれば、人間の意識をデーター化はできそうな気はする。
ただ、それが本当にその本人かと言われれば微妙だろうが……。
この声の主は、恐らくこの星よりもっと科学が発展した星から来たってこと?
俺の考えたことが分かったのか、声の主は《違うよ。》と否定した。
《科学力なら、こちらの星の方が遥かに進んでいるよ。僕達は『思念』という力を生まれながらに使える人種だったから。
それを【異才】と呼んでいた。
こちらの星の言葉に例えるなら……サイコキネシスとか超能力ってやつを思い浮かべると分かりやすいかも。
火や風なんかの自然事象を操ったり、人の心を読んだり、結界を張ったり……そんな多種多様な『異才』を持って生まれてきて、それを利用して豊かに暮らしていた。
だから、わざわざ『科学』という力が進化することもなかったんだ。》
「はぁぁ〜?!なんじゃ、そりゃ!」
まるで現実味のない話へと戻ってしまいビックリしてしまったが、とりあえずは遠い遠い星に実在したらしいファンタジーな世界の話として脳が処理した。
この声の主の正体はなんとなく理解した。
でも、そんな宇宙人がこの星に来たっていう話が、今の状況となんの関係が……。
「────っま、まさか……。」
脳裏に浮かんだのは、ゴミの孤島に墜落したという隕石の話。
それがゴミの孤島に大きなクレーターを作り、湖になった。
その湖がある場所へ行くことができるのは、決まった階級より上の者達だけ。
だから、実際に見たことはないが……。
《僕達の星の住人が全て1つに溶け込んだ生命の源海、それが落ちたのはこの星のゴミが世界中から集められた場所だった。
そこからは早かったよ。長過ぎる時間によって完全に自我を失い、狂ってしまった『人だったモノ達』は、その自我を失ったままの状態で、また『人』に戻ることを望んだ。
だから、本能的にゴミに残るこの星の人達の思念を取り込もうと、次々とゴミを取り込んではくっつき……実体を手に入れていった。あんな風にね。》
《%*?``0%$#&っ!!あ”あ”あ”あ”あ”っ!!!!!》
炎の攻撃が全く効かないことに、怒り狂ったハイラビッシュは、そのまま俺が乗っている巨神に向かって突っ込んできたが、光の壁にぶつかり、悲鳴を上げて痛がる。
更にはそのせいで皮膚が裂け、飛び出した血が光の壁にビチャリと掛かって、見える視界は真っ赤に染まった。
「────ヒッ!!」
《ハハッ!知性の欠片もないや!気が遠くなるくらいの長い刻の中、僕以外の誰も自我を保てたモノはいなかったよ。
汚いゴミを必死にかき集めては、もう遠い記憶にある自分の姿を取り戻そうとしている。
……可哀想。
この星に住んでいる人達も可哀想にね。だって、自分たちがいらないって捨てたゴミに食われて同化しちゃったんだから。》
恐怖で引きつる俺とは逆に、声の主はおかしくてくおかしてく堪らない!と言わんばかりに笑う。
な、なんでコイツ、こんなに他人事なんだろう??
純粋にその声の主について疑問を持った瞬間、突然頭の中に見知らぬ映像が流れ込んできた。
見えているのは、真っ暗な部屋の中の映像で、壁一面には御札?のような紙が大量に張られている。
窓らしきものは、だいぶ高い位置に小さなモノが1つだけ。
それも柵が嵌っていて、僅かな光が中に差し込むだけだった。




