7 やっと会えたね
「……っクソッタレ!!」
合間合間に銃を撃つも、全くのノーダメージの様だ。
やはり対人用の武器じゃ刃が立たない。
そのまま上空にいる巨神達も俺の存在に気づいた様で加勢してくれたが、それでもビクともしない。
ここまでか……っ!
非常に近くに落とされた火の玉が爆発し、そのまままた大きくふっとばされると、半壊している建物の中へと入ってしまった。
「────っがっ……っ!!!」
体はバウンドし、そのまま何かにぶつかって止まると、肋が何本か折れたのか、あまりの痛みに意識を失いそうになる。
「……ハッ……ハッ……ハッ……俺の……人生……ここまで……か……。」
まるでどこぞやの小説の主人公達が、敵に追い詰められた時のセリフを吐き出し、思わず笑ってしまった。
俺は主人公なんて輝かしい存在にはなれない。
だけど、ただひたすら前へ前へ……最後まで努力をし続けたいのだ。
足掻いて足掻いて……最後は幸せだった。楽しかったで人生を終えたいから。
「────くっ……そおぉぉぉぉぉ!!!」
肋の痛みをめちゃくちゃ我慢して立ち上がると、ふらつく身体を支えるために、ぶつかった物体に手を伸ばす。
すると…………それがあのドラゴンを想像して作られた新型、白銀の機動巨神であることに気づき目を見開いた。
「巨神!────そうか、ここは……格納庫!」
キョロキョロと周囲を見渡せば、既に攻撃を受けたここは半壊しており、そこら中に巨神の一部とみられる装甲が散らばっていた。
赤い液体も大量にぶちまけられているため、まるで大量虐殺でもあった現場の様で肝が冷える。
だが、ここで少々疑問を持った。
「なんでコイツだけ綺麗なままなんだ??他の巨神はバラバラなのに……?」
白銀の装甲には、見る限り傷1つついておらず、それがこの惨状とミスマッチ過ぎて不気味にさえ思えた。
「防御性能の差か……って!そんなことを悠長に考えている暇は────。」
『ない』と言おうとした瞬間、突然残っていた屋根が吹っ飛び、夜空が剥き出しになる。
だが、満天の星……は見えずに、空一杯に広がって見えるのは、不気味な女の生首の姿をしたハイラビッシュだ。
そいつは、かろうじて立っている俺を見下ろしニタァァァ〜と笑い、そして────巨大な口を大きく開いた。
とその奥に見えたのは沢山の腕と、喉の奥にフジツボの様にくっついている沢山の人間達の顔。
そいつらの顔は憎しみに満ち溢れていて、俺の方をジッと睨みつけている様に見えた。
《あ”……お”ぉ”ぉぉ……あががが……ぁぁぁぁ〜ッ!!》
何十にも重なって聞こえていた濁声は、コイツラらが発生源だったのだと、恐怖に固まりながらどこか冷静に理解する。
そして、そいつらが黒く焦げていくのと同時に、口の中一杯に炎が出現したのが目に入った瞬間、その火の塊はあっという間に俺の目の前へ。
────あ、これは駄目だ。
刹那の一瞬、自分の死を覚悟し、悔しいやら悲しいやらの気持ち、それから走馬灯の様に今までの人生が思い浮かんだ。
人生を全力で。
俺は俺の人生を、精一杯生きた。
だから後悔はない。
沢山の幸せを────……。
「ありが……とう。」
そう呟いた瞬間、迫りくる炎は俺に直撃した────はずだった。
「────?……あ、あれ……?」
痛みを予想し目を瞑ったのだが、待てども待てども痛みも炎の熱さも感じず、慌てて目を開けると…………なんと俺を中心に、蜂の巣の様な光の壁が囲っており、炎を防いでくれているではないか!
「な、なんだ……?これは…………。」
熱さすら感じない。
どうやらこれは、完全にそれはハイラビッシュの攻撃を無効化してくれている様だ。
《──%”!$&’$=*!!??》
ハイラビッシュは、思った通りの結果にならなかったことに驚いたのか、顔についている目玉を大きく見開いた。
しかし、驚いているのは俺も同じ。
足から力が抜けてその場にへたり込んでしまったのだが、ハイラビッシュは直ぐに次の攻撃を繰り出してきた。
《*+P&$%}&#ぁ”あ”ぁぁぁ”ッ!!!!!》
口からさっきの火の玉より巨大なモノを連続して吐き出し、今度こそ死んだ──!と思ったのだが……やはりさっきと同じ光の壁の様なモノが出現して、攻撃を完璧に無効化してしまった。
「一体何が……。────!ま、まさか……!」
1つの可能性を見出し、俺は背後にある巨神を振り返る。
すると……その巨神はまるで俺を見ている様に、顔の部分をコチラに向けていた。
「────っ!??!」
パイロットなしで巨神は動かないはず。
なのに、顔の向きがこちらを向いている。
それにドキッ!としたが、もしかして誰かが入っているのだろうか?
そう考えたが、突然ガコンッ!!とコックピットがある胸部辺りの装甲が開き────そこがもぬけの殻であることを知り血の気が引いた。
誰も乗っていない!
なのに動いている!
「……っひぇ!!」
慌ててそこから逃げ出そうとしたのだが、なんと巨神の手が動き、俺をアッサリと捕まえてしまった。
前方には怒り狂って攻撃を続けているハイラビッシュ。
そして後ろには俺を捕まえる無人の巨神。
恐怖で気を失いそうになりながら暴れていると、巨神は俺を胸部にあるコックピットに放り込んだかと思えば、そのまま装甲を閉じてしまったのだ。
「〜っ……!??と、閉じ込められた!?」
直ぐに入口の部分を叩いて開けようとしたが、勿論人間の力ではびくともしない。
そのため、力なくコックピット部分に座り込むと、突然周囲から糸の様に細いコードの様なモノが沢山伸びてきて、俺の体にくっついていく。
これは巨神と神経を繋ぐ肯定で、自分の神経と巨神の神経を繋げることで、初めて操縦が可能になる。
勿論同調値が一定以下の俺にとってこれは初めてのことで、恐怖を感じて逃げようとしたが、まるで『逃さない』と言わんばかりに体中にそれが巻き付き肌と同化していく。
それがなんとも言えない感覚で……でも悪い感覚ではなく、例えるなら誰かに抱きしめられている様な?そんな気分になった。
なんだか……小さい頃に戻ったかの様だ。
あの頃は不安も恐怖も何もなかったっけ。
父や母に守ってもらって、ただ与えられる愛情を享受していた頃。
それを思い出して、こんなわけのわからない状況だというのに、つい笑ってしまった。
なぜ勝手に巨神が動くのかは不明。
恐らく誤作動なんだろうと思うが、俺の同調値では操縦はできないから、ここが俺の棺桶になるってことだ。
「憧れの巨神と共に眠る……悪くない最後だった。」
《最後……?これが始まりだよ。》
突然第三者の声が聞こえ、ドキィィィンッ!!と死ぬほど驚いた。
キョロキョロと周囲を見渡すも、ただの薄暗いコックピット内が見えるだけで、勿論誰一人自分以外の人間はいない。
「き、気の所為……。」
《あぁ、やっと会えたね。ずっとずっと待っていたのに……どうして直ぐに僕の所に来てくれなかったの?》




