6 まさか……
ハイラビッシュには個体差があり、それにより強さもまちまち。
一番下のランクなら、一番下っ端のレギュラーでも数十人くらいで連携が取れれば、勝てる可能性はあるレベルのはずだ。
だが、恐らくアレは一番下のランクじゃない。
歪とはいえ、人に近い顔をしているなんて……多分、ハイクラスだ!
「人間の姿形に近いヤツほど強いって聞いたことがある。
俺が以前に一度、遠目から見たことあるヤツは、もっと小さくて本当にただのゴミの塊みたいな形だった……。アイツとは全然違う。
今頃は、前線へ向かった上官へ連絡は行っているはずだから……アレ相手に、なんとかして時間を稼がないと駄目なのか。」
空を飛び回っている巨神達は、煙幕の様なモノを撒き散らし、視界をジャックしようとし始めた。
これなら多少は狙いが逸れてくれるはず────っ!
しめた!と拳を握ったのもつかの間、ハイラビッシュは大きく頬を膨らませて…………。
────ブゥゥゥゥ〜ッ!!!
なんと息を吹き出して煙幕を吹き飛ばしたではないか!
《う、うわぁぁぁぁぁ!!》
《────くっ!!緊急離脱!!体勢を立て直すぞ!!》
ハイラビッシュのなんてことなく吹き出した風は、まるで竜巻の様に空に向かって吹き荒れ、離脱しようとしている巨神達を襲う。
それでもなんとか体勢を立て直そうとしたらしいが────……。
《%())’$##O0$””!!!!》
ハイラビッシュが突然物、目にも止まらぬスピードで、体勢が崩れた巨神達へ向かって突っ込んでいった。
そして────……。
────ぱくんっ!!
逃げ遅れた一体の巨神の腕を、一口で食いちぎったのだ。
《ぎっ……っ!ぎゃぁぁぁぁ!!!》
千切れた巨神の腕からは、人間の血液と同じ様な赤い液体が勢いよく噴き出した。
この赤い液体こそ、巨神を動かすための動力であり、まさに人間でいう血液である。
だから、それが一定以上流れてしまえば、活動は停止し死を待つだけとなってしまうのだ。
《────くっ、くそぉぉぉぉ!!!離れろぉぉぉ!!!》
そのまま更に体全部を飲み込もうと口を開けたハイラビッシュに向かい、銃を持った別の巨神がドンドンッ!!と連射攻撃を叩き込んだ。
すると、全弾奴の顔全体にクリーンヒット!
ダメージが────っ!と期待したのだが、まるで『何かしたのか?』と言わんばかりに、銃を撃った巨神を見上げただけ。
まるで効いていない様に見えた。
だが、その間に手を食いちぎられた仲間は回収され、直ぐに戦線離脱をさせることができたため、ホッと胸を撫で下ろす。
同調するということは、自分が全くダメージを受けなくとも、巨神が受ければ同じ痛みを味わってしまうこと。
今、パイロットは自分の腕が食いちぎられた痛みに耐えていると思われるので、一旦同調を切ってから、もう一度出撃になるだろう。
自分の腕まで痛くなってきた気がして腕をさすったが、ここで1つ違和感を感じた。
腕を食いちぎるのは、ハイラビッシュ特有の『人を食う』という原始的な行動から。
だが、さっきの状態なら、それこそ一口で捕食できたのでは?と思うが……何故かそれをせずに一部だけ食った。
何故そんな無駄な動きを……?
冷静にそれを考えながら、もう一度ハイラビッシュをよくよく観察すると────なんとその口元が大きく上に上がりニィィィ〜……と歪んでいったのを見て背筋が凍りつく。
遊んでいるんだ……。
自分より弱いヤツらを弄ぶように……!
そこに知性を感じ、さっきとはまた別の恐怖を感じた。
ハイラビッシュに知性はないはず。
ただ人や生き物の姿を見れば襲いかかるだけだと、そう教わっていた。
だが、目の前のコイツはどうだ?
明らかに知性ありきの行動をしている。
「そんな馬鹿なっ……。でも、今のタイミングで襲ってきたのも……まさか……。」
それから直ぐに思い浮かんだのは、なぜエリート新型人類達が揃っていない今、襲撃があったのかという疑問だ。
もしかして、あえてそのタイミングを狙ってやってきた?
だとしたら、本部の巨神に関する施設だけ攻撃しているのも、まさか……分かってやっているのか……?
あまりのことに恐怖していると、ある一体の巨神から《うわぁぁぁぁ!!!》という悲鳴が聞こえ、そのまま戦線離脱しようとハイラビッシュがいる方向とは逆の方向へと飛び去ろうとした。
《ヒィィィィ〜……っ!い、いやだぁぁぁぁ〜!!
俺は……俺は……ただの下っ端兵なのにぃぃぃぃ!!死にたくない死にたくない死にたくない!!!》
「か、上村曹長……?」
なんと泣き叫びながら飛んでいく巨神から聞こえてきたのは、あのいつも偉そうに命令してくる上村曹長の声であった。
どうやら出陣していたらしいが、なんともヨタヨタと操縦しきれていない?と思われる動きをしている。
そのせいで大丈夫だろうか?と心配したが、嫌な予想は大当たりで……ハイラビッシュは、上村曹長の方を見て、歯をガチガチと噛みしめ笑った(?)。
「────駄目だっ!このままじゃやられる!」
そのままグググッ……と顎を引くような仕草をしたかと思えば、そのまま上村曹長の乗っている巨神へまたハイスピード体アタックを仕掛けようとする。
そのため、俺は直ぐに持ってきた閃光弾を上村曹長がいる場所へ向かって撃った。
────パッ!パッ!パッ!パッ!!!
すると、打ち上げた閃光弾は、真っ暗な空を垂らす様に、光の線源となって散っていく。
《〜〜っ??!……%$##(’%#??》
どうやら光に弱いタイプのハイラビッシュだったのか、顔中にくっついている目玉達は、一斉に目を瞑り、動きを止めてくれた。
そのお陰で上村曹長は難を逃れたが、閃光弾にそうとうビックリしたのか、《あぁぁぁぁ〜!!!!ママァァァァ!!!》と叫んで、そのまま落下してしまう。
それからはとにかく痛いだの骨が折れた〜だのと元気よく叫んでいたので、とりあえず死んでいない様で安心はしたが、そのせいでハイラビッシュは俺の存在に気づいた様だ。
《あ”……あ”……グ……%”O)00$#あぁぁ〜!!!》
お楽しみを邪魔するな!と言わんばかりにコチラを睨んできたので、慌てて軍用車を乗り捨て、近くの建物の影へと飛び込む。
その瞬間、また細い糸の様なモノが乗っていた車に向かってピッ!と走ったと思えば、そのまま────……。
────ドカァァァァンッ!!!
車は大破、更にその糸をなぞる様に、まるで炎の道の様なモノが一瞬で出現し辺りを火の海へと変える。
「う……うわぁぁぁっ!!!」
そのまま大きくふっとばされてしまったが、そのお陰で火の海からは脱出できた。
だが────ハイラビッシュの視線からは、逃げられない!
ドッ!!ドッ!!ドッ!!!
それからは、まるで火の玉の様なモノが頭上から降り注いできたので、必死に走り逃げ惑う。
「──っ……ハッ!……ハァッ!……っ〜……ハァッ……ハァッ!アイツ……やっぱり遊んでいやがる!」
ニヤニヤしながら、俺が避けれるギリギリの所で火の玉を撃っている様だ。
アイツにとって、これは遊びだ。
俺は命を賭けた戦いだっつーのに!




