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元落ちこぼれのおっさん下等兵、改め────  作者: バナナ男さん


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5 戦おう

「……戦おう。少しでも時間を稼げば、どうにかなるかもしれないからな。」


絶望に飲まれながらもそう提案したのだが────それに賛同してくれる者達はいなかった。


「馬鹿じゃないのか……?俺達は全員巨神に乗れないゴミクズだぞ?

どうやってあんな化物相手に戦えるっていうんだ!」


「もうだめだ……全員死ぬ……死ぬんだよ……。」


そのまま泣き出してしまった下等兵の仲間たちを見て、自分の気持ちも大きく沈んでいく。


その通りだ。

俺達は巨神に乗ることすらできない役立たず……それがどんなに頑張った所で、一瞬で殺されて終わりじゃないか。

頑張ったって……もう……。


下を向き、目を閉じたその時────瞼の裏に映ったのは、幼い頃に見た父の姿だった。



『いいか?何事も一生懸命!全力前進!これは幸せな人生にするためには一番大事なことなんだぜ〜!』


父は何度やっても早く走ることができなくて挫折した俺に、ある日そう言った。

でも俺は悲しくて悔しくて、そんな父の言葉を否定する。


『できないものはできないよ。それなら、そんな嫌な想いをさせてくるモノはポイッと捨てて、楽しいことだけをすればいいんだ!もうヤダ!』


頑なに否定する俺を見て、父は困った様に笑いながら俺の頭を撫でた。


『まぁ、確かに結果が変わらないなら、さっさとソレを捨てて別のことに興味を移しても良いかもな。それも1つの生き方だから。』


『そうだよ!だから俺はもう諦める!』


そう断言すると、父は『いいんじゃないのか。』とアッサリ肯定してくれたが……父はしゃがみ込んで、俺と目線を合わせてきた。


『でもな、本来物事を諦める時は、死ぬほど努力して努力して……もうできない!ってくらいに頑張らないと駄目なんだよ。心が納得してくれない。』


『??心が?別に俺が良いって言っているんだから納得しているじゃん!』


分けの分からない言い分に反論すると、父は静かに首を振る。


『もう無理だってくらい努力しないと、心は自分を嫌なことから逃げ出した臆病者だと認識しちゃうんだ。

だから、諦めるのは仕方ないことだったって胸を張って言えるくらいには頑張っとけ。

そうしないと、勝手に心は愛想を尽かして、どんどん自分を嫌いになっていくぞ。

できなくても頑張る!それが自分を好きになれるコツってやつだ。

自分を嫌いなヤツの人生は幸せじゃない。

誰かを愛する気持ちも助けたいと願う気持ちも、まずは自分を好きにならねぇと、誰も愛せないし助けられない。

つまり幸せな人生じゃなくなるってことだ!』


父は最後は茶化す様に鼻にデコピンをしてきたため、なんとなく有耶無耶になってしまったが、それが大人になるにつれて分かってきた。


自分に言い訳して逃げて……そんなことをする度に自分が嫌いになっていく。

そうしていつか、取り返しがつかなくなってしまうのだ。

最後は自分で自分を殺したくなるくらい嫌いになってしまう日々が来る。

そう思ったからこそ、俺は─────……。


「やれることは────きっとある!俺はこんな所で死んでたまるもんか!

足掻いて足掻いて……足掻きまくってやる────っ!!!」


大声でそう叫ぶと、ポカンとしている仲間たちを置いて、俺はそのまま本部の方へと全力ダッシュ!

向かうのは対人用の武器倉庫!

そこには、巨神に搭乗せずに人が直接戦うための武器や、危険物と判断されたモノが置いてある。


まぁ、ハイラビッシュには通用しないだろうが、多少の気を逸らすくらいはできるはず……!


雀の涙程の希望を胸に、俺はそのまま近くに止めてあった移動用の軍用車に乗り込み、大きく迂回してそこを目指す。

激しく攻撃されている場所から少し離れた場所にある対人用の武器倉庫は、まだ無事な様でホッとしたと同時に……攻撃場所の偏りが気になった。


攻撃を受けているのは、巨神に関する施設だけ……?

ハイラビッシュに知性はないはずだから、たまたまだと思うが……。


少々の違和感を感じたが、今はそれどころではない。

無事に武器倉庫へと到着すると、俺は軍用車でそのまま突っ込んだ。


─────ドカンッ!!!


かなり派手な音を立ててシャッターが壊れたが、本部の方はもっと爆発しているので、問題ない!


「あぁ〜……これ、生きていたら始末書書かされるのかな。

まぁ、緊急事態ってことで!」


シャッターを壊した後は、直ぐに止まって外に出ると、銃などの武器や弾薬……更には目眩ましの閃光弾なども沢山置いてあるのを無事に見つけた。


「とりあえず銃と……ナイフとかも持っていくか。それに閃光弾に音響爆弾、催涙スプレー……。」


とにかくありったけ装備したが、そもそもハイラビッシュに閃光弾とか音響爆弾とか効くのか?と疑問を持つ。


ハイラビッシュは、どんなゴミを取り込んだかによってそれぞれ特性が違い、そのため弱点も様々なのだ。

だから、これが効くかは賭けだが……とにかくどれか引っ掛かったらラッキーな気持ちで行こう!と気合を入れた。


「ゴミの化物なんかに負けるか────っ!!すんごいの撃ち込んでやるからな!!

待ってろよ!父の敵め!」


やる気満々、意気揚々と外に出た俺。

だが、そんな気持ちが続いたのは────実際の目でハイラビッシュの姿を見るまでであった。


突然空に飛び上がったハイラビッシュ。

そのせいで、恐ろしい外見がさっきよりもよく見え、本能的な恐怖に体は震えたまま動けなくなってしまった。


まるで大きな家くらいの大きさの……酷く歪な女の巨顔。

顔中に人間の目玉がついていて、それがギョロギョロと常に周囲を見回していた。

更に────……。


《あ”あ”あ”あ”あ”あ”〜……あ、あ、あ、あ”ぁぁ〜……っ。》


耳元まで大きく裂けた口を大きく開けると、そのポッカリ開いた真っ黒い穴の奥から、沢山の人の手の様なモノが飛び出しては、何かを掴もうとする動きをしている。

そして、まばらに生えている長い黒髪は、不気味に風に靡き……頭には壊れたブラウン管のテレビ?やら、扇風機やらと、ゴミがめり込み、赤い肉が剥き出しになっている部分もあった。


「……う……ぅぇ……っ。」


その恐ろしくおぞましい姿に情けなくも、恐怖で金縛りの様に体は固まってしまう。


こんな化物と……俺達人類は戦っているのか!


絶望に次ぐ絶望。

だが……こんな化物相手に、俺より若い奴らは戦ってくれているのだ。

だから、役立たずのオッサンが、ビビってなんていられない!


俺はガクガク震えている拳で自分の頬を思い切り殴ると、直ぐに戦況を確認する。


現在空を旋回して、ハイラビッシュと戦っている巨神は、全部で数十体。

本部に残っているのは、一番上の階級がブロンズ……勝てるかどうかは、ハイラビッシュのランクにもよると思われる。


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