4 土地奪還作戦
ヒソヒソと聞こえてくる噂話は、以前と違い暗いモノで……その場の雰囲気もかなり重だるいというか、なんとも居心地の悪い感じになっていた。
俺も勿論暗い気持ちになっていたので、いつも通り部品達を磨きながら、ハァ……と大きなため息をつく。
期待の機動巨神が完成してすぐ、大掛かりなパイロットの選出テストが始まった。
そこには【ブラック】ランクの人達は勿論、【プラチナ】や【ゴールド】ランクの人達も、その全員がそのテストに挑んだらしい。
しかし─────……。
「全員が同調率ゼロ。そんなことはあり得ないよな……。」
「でも実際に起きたんだから、あり得ることってことだろう。
でもよ、あの<冬夜>大将と<楓>大将もゼロなんだから、正直原因が考えられない。」
今の日本支部の前線の巨大柱とも言われている機動巨神【鴉】は<冬夜>大将の、そして【桜】は<楓>大佐のバディだった。
2人は今までの歴史を見てもトップに君臨する同調値を持っていて、だからこそこの2人のどちらかだろうと断言されていた程であったが……なんと結果は、そのどちらもが同調率ゼロ!
これには上層部も驚いたのか、未だに会議会議と繰り返し討論しているという。
もしかして、同調値に影響されない……?
一瞬そんな考えが浮かんだが、それはそもそもの巨神自体の性質を全て否定することだと思い直して、首を横に振った。
たまたま調子が悪かったとか?
それとも、日が悪かったとか、機体部分に何か深刻なエラーがあったとか……。
考えられる可能性を頭に浮かべていったが、どれもしっくりこず……。
まっ、結局俺如き下等兵が考えた所で、何も分からないか!
原因究明は諦めたが、とにかく悲しいとは思った。
新たなその機動巨神は、ドラゴンという空想上の神獣をイメージして作られた白銀の機体であるらしく、それのお披露目を楽しみにしていたからだ。
「凍結か……。パイロットが決まるまでは格納庫に御蔵入りなんて……悲しいっ!悲しすぎるぞぉぉぉ!」
ついつい、ワー!!と叫んでしまうと、周りからは冷ややかな目が。
そのため笑って誤魔化すと、直ぐに皆はまた噂話へと戻っていった。
「それより、近々新たな土地奪還場所に、大型戦闘を仕掛けるって聞いたんだが……。」
「あぁ、俺も聞いた。なんでもブラックやプラチナランク全員を総出で向かわせるって聞いたぜ。
その場所にいた一部のハイラビッシュ達の動きが、鈍っているからって。」
「これで土地奪還ができれば、人類の大きな進歩になる!どうかよろしくお願いします!我が支部最強のエース様達!」
神に祈る様に手を組んだ下等兵の仲間に、他の仲間達も便乗して祈っていた。
確かに神に祈りたくなる気持ちも分かるから、俺も密かに祈っておく。
現在人が奪還できた土地はほんの僅かで、この孤島より外にどんどん拠点を作っていかないと、まずまともに戦えない。
ハイラビッシュ達は、不眠不休で戦い続けることはできても、人間はそうはいかないからだ。
今回の土地奪還の作戦が成功すれば、きっとこれから積極的に戦いに挑めるだろう。
それは人類にとって大きな希望となる。
皆、それが分かっているのだ。
きっとこの時、俺も他の皆も希望に満ち溢れていて────未来が明るいことを疑ってはいなかった。
まさか、あんな悪夢が待っているとは思わずに……。
◇◇
【土地奪還作戦当日】
俺達は敬礼をしたまま、巨大空母にて出港した仲間たちを見送り、最後は大きな歓声と応援を叫び、それが見えなくなるまで続けた。
空母の上には真っ黒な機動巨神の【鴉】と、薄い白色ピンク色の【桜】の姿があり、テンションはその時点で最高マックスへ。
更に、それに搭乗する2人の姿まで見れたため、俺は最後列の端っこにて、嬉しくて男泣きしてしまった。
まだ二十にも届いていない、年若いパイロットである、冬夜大将と楓大将。
そんなまだ若き彼らは、俺達の前で非常に力強く「人類にとっての大きな一歩を勝ち取ってきます。」と言い残して行ってしまった。
「が、頑張れぇぇぇぇっ!!!皆、どうか生き残って帰ってきてくださぁぁぁい!!」
その日はそんな感じでびゃーびゃー泣いて泣いて……最後は、疲れて眠ってしまったのだが────…………。
────………ッン………。
…………トっ……ドッ……────ドンッ!!!
……………。
……………ドドドンッ!!!!!!ドンドンっ!!!!ドカ────ンッ!!!!
「────っ!??な、なんだっ!??」
突然の小さな揺れから一転!
突然明け方近くに大きな地鳴りの様な音が聞こえて、それからは断続的な爆発音が聞こえてきたため飛び起きた。
俺の下等兵専用の軍寮は、本部からは一番離れた場所に位置している。
そのため、何か起きたとしても情報はすぐには伝えられないが、とにかく何かが起きたことは分かったので、慌てて窓から外を見た。
すると────信じられない光景が目に飛び込んできて、俺は一瞬で血の気が引く。
「ほ、本部基地の方が……燃えてるっ!」
なんといつも働いている本部基地からいくつも火の手が上がっているのが見えて、思わずガタガタと震えてしまった。
大きな爆発音に、未だ続く新たな爆発に大量の火の手……これから直ぐに嫌な予感がして、慌てて机の引き出しから双眼鏡を取り出す。
「────っ!巨神が出撃している!何かと戦っているんだ!」
本部の空には沢山の巨神が飛んでいて、手に持っている電子ビーム銃で、なにかに攻撃している姿があった。
これは間違いない。
本部に敵が……ハイラビッシュが現れたんだ!
「なんで今なんだよっ!こんなエリート新型人類がいない時に……っ!」
俺はそのまま双眼鏡で、攻撃している巨神達の動きを追っていたが、その直後、『……ピッ……。』とまさに金色の糸程度の光の筋が空に昇ったかと思えば……。
────ドカッ────ン!!!
なんとそれにより、約数十機体の巨神達が一瞬で爆発してしまったのだ。
「う……嘘だろう……?」
本当に一瞬の出来事で、あまりに現実味がなく双眼鏡を落としてしまった。
────カラン……カラン……。
バウンドして飛んでいった双眼鏡を気にかける余裕すらなく、あまりにも刹那で散った仲間たちの死に悲しみと怒りが湧く。
「────ックソっ!!!」
俺は直ぐに上着を羽織り部屋から飛び出し、建物の外に出た。
すると、既に何十人もの仲間達が外に出ていて、燃え盛る本部の方向を見て、愕然としている様であった。
「な……んなんだよ……これ。」
「なんで……っ。なんで……本部が……なんで……?」
そのまま膝をついたり尻もちをついたりしているまだ若い下等兵達。
全員がどうしたらいいか分からないのだ。
だって、安全であると思われていた本部が突然襲撃されたのだから!
「多分ハイラビッシュが襲撃してきたんだ。主要に戦うメンバー達は、今現在はこの場にいない。このままじゃ、全員…………。」
俺が頭を抱えてそう言うと、泣き叫ぶ者達もいれば、居住区にいる家族達が殺されるであろう未来に嘆く者達もいて……それに対して気の利いた言葉なんて言えなかった。
何故なら本部が完全に沈黙したら、日本支部エリアは全滅だからだ。
他国エリアの応援も、きっと本部があんな状態では……間に合わない!




