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元落ちこぼれのおっさん下等兵、改め────  作者: バナナ男さん


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3/8

3 期待の新型巨神

◇◇

「は〜!ギリギリセーフだった!」


仕事の後は、直ぐに全身に水を浴びて匂いを消し、食堂へと向かう。

もう閉店時間間際。

本日もギリギリで駆け込み、安い!美味い!が売りの定食丼を注文すると、もうすっかり顔なじみになっていた料理長が厨房から顔を出して呆れ顔を見せた。


「アンタはいつも閉店間際に来やがって……全く。」


「サニーさん、いつもすみません……。」


料理長の<サニー>さんは、俺より一回りくらい年上の女性で、ソバージュの短い髪に歳を感じぬ若々しくセクシーな外見、そして立派なオッパイ────に目が行くとぶん殴られるのは分かっていたので、慌ててそこから目を逸らして、軽く頭を下げる。


「でも、巨神の一部になる部品に手は抜けませんから。つい遅くなってしまって……。

図々しいお願いですが、どうかご飯を……万年下等兵の俺に美味しいご飯を頂けないでしょうか〜。」


プライドもへったくれもない情けない顔で頼み込むと、サニー料理長は、見ちゃいられない!と言わんばかりに、顔を手で覆った。


「どうせ他のヤツの分まで仕事してきたんだろ?ホントに馬鹿なヤツだね。

でも、まぁ……職人仕事をしてる身としては、そのこだわりはよ〜く分かるからねぇ。仕方ないか。

ほら、賄い料理を特別にタダで食わしてやるからさっさと食いな!万年安月給の坊やにタダで恵んでやるよ。ありがたく思いなね。」


「あ、ありがとうございます〜!」


サニーさんは本当に女神の様な人だ。

こうして度々まかない料理を出してくれて、そのお陰で飢えないですんでいる。


本日の定食のおかずなどが山盛り乗っている丼を、泣きながら食べていると、食堂で働いている、まだ若い十代半ばくらいの可愛らしいおさげの女の子、<かおり>ちゃんがお茶を出してくれた。


「二コさん、あまり急ぐと喉に詰まっちゃいますよ。」


「ありがとう!」


暖かいお茶を淹れてくれた香ちゃんにお礼を告げると、直ぐに顔を真っ赤にして、離れていってしまう。

香ちゃんは、凄く人見知りかつ恥ずかしがり屋であるため、いつもこんな感じ。

だから気にせず、カウンターの柱に逃げ込み、こちらをジッ〜と見ている香ちゃんの姿をニコニコと見守った。


香ちゃんとの出会いは、今から約一年くらい前。

その時は道に迷ってしまったらしく、上等兵の輩に絡まれていたのを見掛けたのが最初の出会いであった。 


その時は、強引な誘いに香ちゃんが嫌がっていたのが遠目からも分かったので、俺は直ぐに駆け寄りカッコよく助け────ることはできないので、俺の最終兵器とも言える服に染み込んだ臭気を、深呼吸するフリをしてその場にばらまいた。


『────っ!く、くっせぇぇぇ!!』


『て、てめぇ!その匂いは……っ!』


鼻を摘んで涙目になっている上等兵の奴らに向かい、俺はヘラヘラと笑いながら謝る。


『あ、すみませぇ〜ん!今、部品磨きの帰りでしてぇ!仕事中は嗅覚が死んでいるので気が付かないのですが、俺、臭いですか?いや〜申し訳ない!』


更に上等兵に近づいて勢いよく頭を下げると、風に乗ってもわわ〜ん!と香る臭気に耐えられなくなったのか、そいつらは鼻を摘んで慌てて逃げていってしまった。


よっしゃ!と拳を握った後後ろを振り返れば、なんと香ちゃんは気絶していたため、慌てて医務室へ。

そこで食堂でこれから働くお嬢さんであると判明し、サニーさんが迎えに来てくれたというわけだ。


初めて職場に来て、あれじゃあ、嫌になっただろうに……。


そんな心配は無用とばかりに、香ちゃんは一年経った今でも、元気よく働いてくれている。

そしてサニーさんが目を光らせてくれているお陰で、上等兵などに絡まれることなく安心して生活している様だ。

良かった良かったと、今更ながらに喜びながら食事を終えた後は、頭を深々と下げて食堂を後にした。


◇◇

【一ヶ月後】


「おい、聞いたか?」


「あぁ、新しい機体の話だろ?なんか今までにない反応を示しているって。」


部品磨きの間にヒソヒソと騒がしいことはいつものこと。

だが、今回はその話題になっている話が、今までにないモノで……思わず俺の耳もピクピクと動いてしまう。


今回新しく出来上がる機体は、いまだかつて無い高い反応を示してる様で、既に組み立て初期の段階で、物凄い出力結果を叩き出したのだとか。


「一体どうなっているんだろうな……。でも上層部は今回の機体にかなり期待しているらしくて、毎日の様に整備室へ通っているそうだぞ。」


「今まで最強だっていわれていた【鴉】機体と【桜】機体を上回るって。

だったら、パイロットの方もかなりのレベルを求められるんじゃないか?」


「そりゃ〜そうだろうな。だったら、今いる新型人類パイロットから選出されるだろう。」


あーだこーだと噂されている話を聞きながら、思わず胸が高まる。


今回製作中の新たな今までで一番最高傑作と呼ばれていた機動巨神は、【鴉】と【桜】という機動機体で、そのパイロットである新型人類も、最高ランク【ブラック】の人類ランクを持っている人達だ。


新型人類は、同調値によってランク分けされていて、上から順に【プラチナ】【ゴールド】【シルバー】【ブロンズ】【レギュラー】に設定されている。

そしてその中でも化け物級の同調値を持っている者達が一握りいて、その者達は【プラチナ】の更に上、【ブラック】ランクに認定されるのだ。


【鴉】と【桜】のパイロットのランクは【ブラック】。

もしかして、そんな凄い新型人類の人を直にお目にかかれるかも!


それを考えると、どうにもワクワクしてしまい、待ちきれずに震えてしまった。


最高の巨神……そして最高の新型人類!

どうか、人類に希望の道を作って下さい!救世主様!


完全にミーハーになりながら、新たな機動巨神が完成するのを待つ。

そして、新たなパイロットに選出される者の名前を聞くのを楽しみにしながら待っていたのだが────そんな日は待てども待てども来なかった。


「まさか適合者がゼロだとはな……。上位層の同調値が高い新型人類パイロットは、全員が駄目だったんだと。」


「まじかよ。だったらもう操縦できるヤツなんて少なくとも今はいないだろうな。」


「あぁ、だから上層部は<凍結>して機を見ることにしたらしいぜ。

また新たに同調値が高い者が現れるまでは完全凍結だとよ。」


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