第二話 最短の破滅ルート
エトワールは入学式から、破滅への最短ルートを淡々と歩み始めた。
講堂で集まるクラスメイトたち。彼女は三人の王子から、計算通りに好感度を下げていく。
第一王子アルフレッド・レノス
純粋で完全なる善の塊。そんな彼には純粋な悪意をぶつける。
「ごきげんよう、アルフレッド様。私、エトワール・ラスティーニャと申します」
「初めまして、エトワール様。どうかしましたか?」
「貴方、正直王には向いていないと思いますの。貴方の善性は素晴らしいですが、間違えればただの独裁となります。大人しく身を引いて、お二人の王子に任せるのが得策なのでは?」
アルフレッドの顔が強張った。
「貴様……何を言っている……!」
「短気な人は嫌われますわよ? では、ごきげんよう」
エトワールは微笑みを残して背を向けた。好感度が確実に下がったことを、ただデータとして確認しただけ。単純な人だと、少しにやけてしまった。
第二王子レオン・ユーラス
知略家。彼には不信感を植え付ける。
「ここだけの話なのですが、あのお二人の王子が貴方を殺すように策略しているという噂がありますわ」
レオンは警戒の色を浮かべた。彼女は淡々と追い打ちをかける。
「疑うことはいくらでもあったのでは? 私はただ、貴方の身を案じて……」
これでレオンは周囲との距離を置き始めた。そこに、彼女が仕掛けた罠の王子達に濡れ衣を着せることで、完全に距離を取り始めた。
第三王子カイル・ガナーザ
人前に出ない彼は、週に一度の裏の大木の下に現れる。そこで接触を試みた。何度も会話を重ね、誰も見ていない場所だけで会うように誘導し、戦闘能力の高い彼を自分に依存させ、歪んだ忠誠を植え付けた。
舞台は整った。
学園祭の舞踏会当日。
三人の王子に不信感を与え、お互いの警備を強くさせ、その他の警備を緩くさせた。その舞踏会の警備達は、王子たちに任せっきりだったため、簡単にエトワールは短剣を隠すことができた。会場へ向かう準備が整った。
――ああ……やっと、悲願を達成できる。
背中にゾクゾクとした感覚が走る。
夢にまで見た光景を、特等席で体験できる。
しかし、足を進めるとコツコツと足音が聞こえた。
「どなた……?」
「こんにちは、私、セレナ・ティモーラ・ラインと申します。もし良ければ、少しお話を……」
セレナとの会話は短かった。簡単に言うと、ダンスが踊れるか不安、だそうだ。
彼女は淡々と応じ、「嫌なら逃げ出せばよいのでは?」と告げた。
セレナは困惑しながらも「なんだか安心しました」言った。すると、彼女はどこか遠くを見ていた。
「…どういたしました?」
「!いえ…なんでもありません。ただ、視線を感じただけで…もう行きますね。色々ありがとうございます」
彼女はそれを気にも止めず、月を見上げ、小さく呟いた。
「【破滅】が……体験できる」
紅い瞳が静かに輝いていた。




