55:休日の市場にてー5
今回いつもより短いので、2話続けて投稿します。
よろしければ次のお話もご覧下さい。
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市場で騒ぎを起こした二人に、デーリッヒは帰り道、特に説教をすることはなかった。ぶらぶらとゆっくり歩きながら、「良いもんは買えたのか?」などとのんびり聞いてくる。デーリッヒが強面だが優しい事を知っているヒューイはニコニコと返事をしているが、セオは緊張で手に汗をかいていた。それはそうだろう。なにしろデーリッヒはこう見えて副艦長なのだから。
その様子に気がついているのだろう、宿舎に戻ってくると、デーリッヒはセオの頭をもう一度ポンポンと優しくなでた。
「今日は部屋に戻ってゆっくり休めよ」
「は、はい! 今日はすいませんでした!」
「ん? 何を謝るんだ? お前はヒューイのために衛兵を探して呼んできたんだろう? 海賊に襲われたのはお前らのせいじゃないし、休みの日に町に行くのも規則違反じゃない。何も謝ることはないさ」
デーリッヒの言葉に、セオはびっくりして目を見開いた。どんな理由でも一般人の多くいる市場で騒ぎを起こしたのだ。そんな自分達に、まさか副艦長がこんな優しいことを言ってくれるとは思ってもいなかった。
「じゃあな、セオ。別に今日のことは寮監に言う必要もないからな」
「え? でも、良いんですか?」
新兵の宿舎の寮監は生活態度が多少乱れていてもうるさく口出ししては来ないが、トラブルにはうるさい男だ。帰りも遅くなったし、町でトラブルなどと言えば、絶対にやかましいことを言ってくるだろうと覚悟していたのに。
「だってお前、寮でトラブル起こしたわけでもないしな。帰りが遅くなったことは俺からもう伝えてあるから安心しろ」
「は、はい! ありがとうございます!」
セオはぱあっと顔を明るくしてぺこりと頭を下げた。それから一瞬ヒューイを見たが、ヒューイがそのままデーリッヒと一緒に幹部宿舎に向かう様子なのを見て、もう一度デーリッヒに礼を言ってから自分の部屋に早足で戻った。
先日の航海を終え、ヒューイの部屋は正式に幹部宿舎へ移動となった。彼がもう水兵でないことは、この待遇の違いで明らかだが、まだそれを認めようとしない者もいる。
もう一緒の部屋では無いのだ。もう道は分かたれたのだと思うと寂しいが、セオはそれを振り切るように、自分の部屋のドアを開いた。
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