50:ヒューイの帰還
2026.04.26:タイトル一部削除しました
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ヒューイが戻ってくると、セオはとても喜んでくれた。
海に出て、ヒューイの部屋が艦長のそばに置かれて以来、港に戻ってきてもセオの部屋は幹部達の部屋のある棟に移動になっていた。今ではセオ達の相部屋ではなくなったが、それでもヒューイはイグニス達に挨拶を済ませ、夕食後の自由時間になるとすぐにセオの元に走った。
「ただいま、セオ!」
「お帰り! どこまで行ってたんだ?」
「ちょっと山のほう」
ふんわりと笑うヒューイに、セオも嬉しそうに笑う。その様子を見て、ダリルはつまらなそうに顔を歪めた。
「なんだ、帰ってきたのかよ」
「え? 何で? もちろん帰ってくるよ? あ、部屋はやっぱりあっちのままなんだけど」
ダリルの台詞を別の意味に取ったらしいヒューイが少しだけ見当違いなことを言うと、ダリルはなおさらむかつくような顔をした。
ダリルがセオを「魔獣だ」と言ったことは、あの時軍港にいた人間達は皆知っていた。だが、それを信じる者などいるはずがない。ヒューイが強いのはヒューイの努力の結果であって、決して彼が魔獣の仲間だからだ、等という、荒唐無稽な理由ではない。どれだけ彼が訓練をしているか、みんな知っているのだ。
もちろん、ダリルと一緒になって彼を自分の便利に使ってやろうという者は多くて、そういう奴らはダリルに同調してヒューイを小馬鹿にしたり仕事を押しつけたりしていたが……今や艦長の従卒として働いているヒューイを自分の手下のように使うことができるわけないと、そろそろ気づき始めた頃だ。
あんまりヒューイが当たり前のようにダリルの言うことを聞き、今までと同じ顔で接してくるからついつい調子に乗ってしまっていたが、彼がオーリュメール号の幹部候補として育てられているのだと、やっとみんなが気づき始めた。ただの従卒なら、艦長に言われるままの下働きだけで終わるだろう。だが、戦闘幹部達がそれぞれの専門分野をヒューイに叩き込んでいるのだ。それがただの下働きの者の扱いでないと、水兵達は徐々に気づき始めていた。
ただ、ダリルはそれを見ようとしない。いつまでもヒューイを自分の子分だと言ってまわり、何かあれば俺がヒューイにやらせておくだの、俺の言うことならヒューイは何でも聞くだの、艦長に話を通しておいてやるだの、いくらなんでもダリルの言うことには無理があるだろう。
そんなダリルがヒューイを魔獣が人間に化けているなどと言ったのだ。そりゃ、自分の思い通りにならなくなったヒューイを貶めるたいだけだろうと誰でも思ったし、ヒューイの足をそこまで引っ張り落とそうとしなくても良いだろうと、誰もがダリルを哀れな者でも見るような目で見つめた。
皆の空気が変わったことを、もちろんダリルも気づいていた。それが余計にダリルの心をひねくれさせるのだ。
「あのまま、あいつらと一緒に行けば良かったのによ。魔獣のねぐらの方が性に合うんだろ?」
「え? 魔獣のねぐらなんて恐ろしい場所、近寄るわけないじゃん。ダリルも間違ってもそんな所に行かない方が良いよ?」
ヒューイは少しだけ恐ろしそうな顔をした。ダリルの言葉を真っ正面から受け止めているようでいて、彼の悪意を風に流している。いつもそうだ。ヒューイはダリルに何を言われても、全く気にしていないのだ。ダリルは、それが気にくわなかった。
「おい、お前、いつも夜に抜け出してどこに行ってるんだよ!」
どうやら自分に分が悪いと思ったダリルは、別の角度からヒューイを攻撃することにしたようだ。
だが。
「セオと自主練だよ。ダリルも一緒にする?」
ほら、またダリルの悪意は受け流される。
いつも。
いつもいつもいつも。
いつだって、ダリルだけが独り相撲を取らされる。
それが、ダリルを不快にさせるのに。
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