第二十九話《刹那岬メランコリックⅦ》
過去最高の急展開すみませぬm(_ _)m
「ポイントD、Aクラス一年生直ちに救援に向かって下さい!」
「ポイント2-G、二年生Cクラス、一般人の避難を急いで下さい!」
「ポイント7-A、交戦終了! 魔獣の索敵を怠らず、帰還して下さい!」
「ポイントM、右前方に……」
耳からはひっきりなしに情報部からの指令が流れてくる。いい加減、耳が痛くなってきた。
「クソが……【大花火】ッ!」
九々津は両掌に緋色の球体を生み出し、挟み撃ちにしてきた虎型魔獣ーーセガラ二体の目に向けて放つ。
凄まじい爆発とともにセガラが仰け反り、すかさずベルフェゴールの重力制御魔法で地面に叩きつける。地面がセガラの体重でミシリと凹むが、そんなことは気にしていられない。
「あぁもう、いつからだよ。こんな魔獣が召喚され続けてんのは……」
ーーーーー
時は遡ること三時間前。
エクレアだのシュークリームだのとくだらない争いをしていた際にことは起こっていた。
今まで不審に思われていた、街に度々出現するはぐれ魔獣が、明らかに召喚されたものだと分かった。
ーー竜種。
人里には降りてなどこない、非常に希少な竜種で危険度はトップクラス。
それが人里に降りてきたーー否、召喚されていたからこそ、問題になっていたのだ。
麒麟が見つけた時には、既に死体であったとはいえ、だ。
麒麟は思考を巡らせた。
誰がこの強力な魔獣を滅したのか。
九々津か? いや、彼の魔力の痕跡はない。
離理倉か? いや、彼女では力不足だろう。
刹那岬か? いや、彼女は第二次覚醒中とはいえ、魔法を封印した。
ノエルか? いや、面倒臭がりな彼女がわざわざ竜種を狩るはずもない。
ーーならば、一体誰が……?
運命は流転し、神々も悪魔も天使も竜すらも巻き込む。
そう、全てを巻き込む。
ーーーーー
そして、麒麟たち学園の生徒や教師が総出で一般都市に現れた魔獣を掃討しに出ていた。
それは天狗や咲希も例外ではない。
『おいっ、陽見池! 後ろから魔獣が二体!』
「了解っ! 《イートエリア》っ!」
チョコレート菓子を口に咥えたまま、周囲に捕食の魔法陣を展開。そして、無作為に飛び込んできた魔獣二体は、魔法陣に引き摺り込まれた。いや、喰われた、と言ったほうが正しいだろうか。
「おっけー! さぁ、どんどん食べちゃうよォォォォォォ!」
『……く、喰い過ぎも程ほどにな?』
ーーーーー
「……ふむぅ。これはマズいですねぇ……」
最も危険魔獣の多いポイントA。
そのど真ん中に、隠れもせずに、月読学園の校長ーー月読 麒麟は堂々と立っていた。
マズい、というのは、魔獣の多さ。《あの男》は好みそうにない、力押しの馬鹿げた戦法だが、魔王の力がかかっているとなれば話は別だろう。麒麟は空を仰ぎ、ため息混じりに呟いた。
「……変わりましたねぇ、貴方も」
「ギャアガァァァァァァァァァァァァ!」
凄まじい咆哮と共に、空からほうけた麒麟に向けて大口を開いた魔獣が襲いかかる。
が、麒麟はそれをロクに見もせずに、片手であしらう。
四神魔法ーー神器《白虎ノ斬爪》。
軽く振るわれたそれは、いとも容易く危険魔獣の群れをバラバラに斬り刻む。
四神魔法ーー神器《昇焔ノ朱翅》。
一度はばたかれたその焔の翼は、敵を灰すら残らず、存在ごと燃やし尽くす。
四神魔法ーー神器《青嵐ノ龍舞》。
空を舞う、美しい蒼き水の奔流は敵を飲み込み、全てを無に返す龍の演武。
四神魔法ーー神器《翡翠ノ甲玄》。
眼を見張るほどの神々しさを放つその翡翠の盾は、敵の全てを弾き返し、術者を護る。
麒麟が軽く魔法を振るえばーー危険魔獣の数百や数千は、一瞬にして全てが土に還る。
世界的な魔法師の、トップ5に入るほどの魔法師ーー月読 麒麟。
彼女もまた、九々津同様に人ならざる神の力を宿し者。
だが、それでもなお、彼女の本気には至らない。
もし、彼女が本気の神器を使っていたならばーーこの島ごと、跡形も無く消し飛んでいただろう。
だからこそ、彼女は抑えたのだ。
「……はーっ、お仕事完了。疲れましたねぇ……」
呑気に欠伸をし、紅い羽を広げて空を舞う麒麟。
この戦闘を確認出来たのは、風の索敵魔法を発動していた天狗だけだった。
「……おいおい、マジかよ」
天狗は、顔を引きつらせた。
そして。
「……秘密、ですからねぇ?」
頭に響いてきた、麒麟の言葉を聞いて卒倒しかけた。
そして同時に、友人のことを思い出す。
「……い、いや! あいつだって負けてねぇよ! ……そうだよなぁ、六夜よぉ!」
さぁ、戦争の幕が開く。
どうも、急展開すぎて書いてから「これはない」と躊躇った月影です。
テスト期間なので、更新遅れます。すみません。




