↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Eクラスの最強魔法師  作者: 紙切虫
陽見池グラトニー
21/39

第二十話《陽見池グラトニーⅦ》


「……あぁ、出ちゃった……」


咲希は遥か上空から、サタンへと変貌した九々津の姿を見ていた。ああなればもう止まらない。少なくとも、タイムリミットがくるまでは。

すでにノエルの仲間と思われる男を瞬殺している。

実力はあるのだろう。だが、いかんせん相手が悪過ぎる。悪魔の王にタイマンなど、はれる相手を未だ咲希は知らない。


ーーそう、知らなかった。


「……んん、やっぱり強いですね」


「まぁ、サタン出てるしね。ちょっとやそっとじゃ負けなーー」


そこまで言ってから、咲希は気がついた。

私は、一体誰と喋っている?

慌てて横を見ると、白髪のオールバックに青服に十字の入った神父服の男だった。

この男、まさか【十字軍(クルセイダーズ)】の幹部クラス!?

いや、そんなことは今は関係は無い。それよりーー。


……いつから、そこにいた?


気配を全く感じなかった。完全に消されて、隣に立たれても。


「……あなた、いつからーーっ!?」


瞬間、咲希の前進に凄まじい痺れが走った。それが魔法の落雷だという事を確認する暇もなく崩れ落ちる。


ーーーーー


「てめぇシュドナイ……! なんのつもりだ……!」


「……なんのつもり、とは?」


「てめぇ惚けてんじゃねぇぞ! ゼウス教の教祖が、なんで悪魔使いと結託してんだ!」


ーーゼウス教。


古来より、悪魔使いを強く拒絶してきた宗教。

最高神 【ゼウス】を崇め、世界でも一、二を争う信者の多さでも有名な宗教である。

三万年を軽く超える歴史を持ち、その中で一度として悪魔と交わることはなかった。

それが今ーー。


「……あの女と、男を明らかに助けたろ! しかも、てめぇ、主人のダチを攫ってくれてんだゴラァ!」


「粗暴な喋り方。変わりませんね。それに……そんな事、あなたが一番分かっているのでは?」


ビクリ。

一瞬、サタンの顔が強張った。その隙をシュドナイは見逃さず、落雷を落とす。

サタンはそれに気づき、寸前で弾き飛ばす。が、既にシュドナイは走り出している。空中を、だが。


「てめっ……待ちやがれ!」


ダンッ! と空を蹴る。瞬間、空間が砕け、サタンが空を走り出す。

まるで空間を地面のように踏みつけて走っているのだ。ベルフェゴールのように、重力操作などという生易しいものではない。

ノエルとゼアルは、その様子を唖然として見ていた。


次元が、違いすぎる……。


ーーーーー


「待てゴラァァァァァァァ!」


バキバキと空間を踏みつけ、叫びながら都内を走り回るサタン。かたや、足に風を纏って軽やかに無言で走るシュドナイ。

もはやどちらが誘拐しているのかわからない状況だが、速度は全くと言っていい程同じ。……いや、咲希を抱えている分、少しシュドナイが遅い程度か。

このままでは、一般区域の外にまで出て、大陸を乗り越えて行きそうな勢いだ。

しかし、サタンの懸念はそこではなかった。


ーー咲希は、どれくらいの間喰べていない?


戦闘開始からおよそ一時間。咲希はその間、何も喰べていなかった。

さらに、今の鬼ごっこは三十分ほど続いている。

およそ九十分ほどの間、なにも喰べていないのだ。


まずい。


「シュドナイ! そいつ降ろせ! もうすぐタイムリミットだ!」


「タイムリミット? なんの?」


「その女のだ! 早くしねぇと…………死ぬぞ!」


しかし、警告を飛ばしてもシュドナイは、ハッタリを、と走り続ける。まずい。あと五分が限界だ。

早くしなければ、取り返しのつかない事態になる。

サタンは魔力によるブーストで、さらに速度を速める。


「【竜巻】!」


「【ライトニング】!」


が、シュドナイも雷を足に纏い、石火の如く速度で走る。

さらに、攻撃までも仕掛けてきた。


「【アテナの聖槍】!」


瞬間、先ほどとは比較にならぬ程の威力の落雷ーーいや、雷そのものがサタン目掛けて一直線に、天より降りてきた。それは、全てを穿つアテナの槍が、投擲されたかのようだった。

サタンは突如とした上空からの攻撃を避けられず、直撃する。


「かっ……!」


が、耐え切る。

サタンの懸念は、咲希のタイムリミットだけではない。

九々津のタイムリミットーーすなわち、サタンが外へ出ていられる時間だ。

おそらくはあと三分。

咲希はあと一分かそこらが限界か。

まさかゼウス教の教祖自身が出てくるとは思っていなかった。

教会はなんらかの形で関わっているとは思っていた。しかし、シュドナイ自身が関わっているとは思いもよらなかったのだ。

だが、泣き言を言っている暇などない。

サタンは魔法の直撃により、態勢を崩したが、それで終わる悪魔の王ではない。


「【カオスブレス】!」


三度目のブレス攻撃。これ以上は九々津の身体が持たないだろう。正真正銘、これがサタンの最後の攻撃となる。

サタンの口から放たれた、禍々しい赤黒い光線は凄まじい速度でシュドナイ目掛けて飛んでゆく。

シュドナイが振り返った時には、既にかわせない距離まできていた。


そう。かわせない、距離までは。


「ーー【ネプチューンの神壁】!」


シュドナイは避けられないとすぐに悟った。ならば、弾き飛ばすまで。

シュドナイが召喚した、中心に槍に貫かれたユニコーンの描かれた巨大な盾が、サタンのブレスを上空へと逸らした。


「相変わらず恐ろしい威力ですね……。普通は盾に当たったら受けるを通り越して跳ね返すのに……。逸らすのが限界ですね」


が、終わり。


魔力は、もう使えない。サタンの魔法は凄まじい威力と引き換えに、膨大な魔力を消費するのだ。もう、打てない。

グラリとサタンの身体ーーいや、九々津の身体が傾く。

落ちる寸前、ポツリと何かを呟いた。


「……後はあんたの番だ」


そして、その刹那。


カッ、と九々津の目が開かれる。


「【グラビティ……プレェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェスッッッ】!」


サタンの攻撃は、終わった。


次は。


「俺の! 番だァァァァァァ!」


周囲に凄まじい広さの魔法陣が展開される。その大きさたるや、街一つを飲み込むレベルだ。

九々津は体内に残った魔力を一滴残らず開放し、これを開いた。もはや飛ぶ魔力すら残っていない。

さすがのシュドナイも、ガクリと速度を落とし、膝をつきかける。

「くっ……し、しかし……完全に動けないわけ、では……っ!」


「だろうな。悔しいが、これが俺の全力だ」


フッ、と九々津の姿がシュドナイの視界から消失する。しかし、それは消えたわけではなく、落下したのだ。

もはや指一つ動かない。打つ手などない。


「……けどよ、忘れ物は返すぜ……っ!」


落下していくさなか、なんとか人差し指一本分を動かし、シュドナイへ向ける。


忘れ物ーーとは?


シュドナイがそれを理解するよりも早く、それは落ちてきた。


「ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!?」


赤黒い閃光が、九々津の魔法陣ごとシュドナイを飲み込む。

シュドナイは無防備な背中に直撃をくらい、絶叫する。


なんだ!? なにが起きた!?


シュドナイは、【カオスブレス】を受けた瞬間に全てを理解した。


「……さっ、さっきのブレスを落としたのか……!?」


九々津にも、出来るかどうかわからなかった。それに、操作性もない。当たったのは、半分運と言える。しかし、悪魔の王の魔法を落としたのだ。それは、並大抵で出来る事ではない。

シュドナイは落下していく九々津の顔を見下ろす。

その顔は、してやったり、という笑みだった。


ーーーーー


「……あー」


上空一点5キロから落ちている。普通に考えて死ぬ。というか、死ななきゃ化け物だ。

ましてや、九々津は全く動けないのだ。落下速度に身を任せ、落ちていくだけ。

目を閉じ、諦めた瞬間に、落下が止まった。

なんだろう、と思って目を開けると視界に入ってきたのは、黒髪のポニーテールと涙を流した顔だった。


「ーー先輩! 大丈夫ですか、先輩!」


それは、鷲の翼を生やした、後輩の綺麗な顔だった。

九々津は、喋ろうとしたが上手く舌が回らない。


「……せ……な……みさ…….?」


「はい、そうです! 刹那岬です! 喋れないんですか!?」


「ちょっ……む、かな……」


「先輩の馬鹿! 馬鹿馬鹿ド馬鹿!なんでこんな無茶してるんですかぁ!」


罵倒された。

必死で戦った報酬が、後輩からの罵倒。悪いが、自分にそんな趣味はない。

が、刹那岬は心配してくれているのは分かった。思わず、何故だか笑いそうになってしまった。

笑い声すら、まともに出せないが、今はそれでいい。

笑ったらまた罵倒されてしまうだろうから。


「先輩、それであの人たちは?」


「……あ、れだ……」


震える手で上空を指差し、刹那岬に示す。

そこで、九々津はハッとなった。


ーータイムリミット、は?


「刹那みさ、逃げ……!」


警告を飛ばすよりも早くに、タイムリミットは訪れた。

黒い閃光が閃き、辺りを照らす。


「きゃあっ!?」


刹那岬が、吹き荒れる風ーーいや、魔力に流されかける。


「おい、六夜!」


天狗の声。見ると、空を駆けてくる友人の姿が有った。

天狗は刹那岬から九々津を受け取り、風に命じて浮かせてくれた。立ち上がれるほどには回復したが、しばらく筋肉痛だろう。


「……せ、先輩……」


「六夜……ありゃ、なんだ……?」


空には、全てを飲み込む勢いで空間を喰らう、青髪の少女の姿。その目はサファイアのように美しいが、なにも映し出していない。

ただ一言。少女は呟いた。
































「……陽見池だ。あいつは」




ーーオナカ、スイタヨ。

どうも、月影です。

今、ちょっと別の小説の究極改稿をしているんですけど…。

その……ね?

また別のを書きたくなりまして←

それで、ちょっと皆さんにお願いが。

異世界系統なんですが、そのキャラの名前を考えて欲しいんです。全然なので…。

主人公は、他の生き物の力を使う人間。

ヒロインは、主人公の作った唯一の人型ホムンクルス。

よければメッセでお願いします…いや、本当に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。