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第6章:永遠の夏からの声

#純愛小説 #切ない話 #長野県 #インドネシア #泣ける話 #なろう

重い足を引きずりながら、僕はアパートへ戻った。靴の中の雪は溶け、靴下を濡らして足の感覚を奪っていた。けれど、その冷たさも、胸にぽっかりと空いた虚無感に比べれば何でもなかった。狭い畳の部屋は、まるで棺桶のように感じられた。


ドアの前に、鮮やかな黄色の包装紙に包まれた小さな箱が置かれていた。あかりが一番好きだった色だ。看護師の佐藤さんからの短いメモが添えられていた。「あかりさんが昨日の朝、これを送ってほしいと私に託しました。あなたが一番孤独を感じた時に、と」


熱と傷でまだ震える手で、僕はその箱を開けた。中には古いデジタルボイスレコーダーと、マルタプラにいた頃の僕たちの写真が一枚入っていた。写真の中で、あかりは溶けかかったアイスクリームを手に大笑いしていて、僕は硬い表情ながらも愛おしそうに彼女を見つめていた。


僕は再生ボタンを押した。


わずかなノイズの後……重い呼吸音が聞こえ、続いて聞き覚えのある小さな笑い声が響いた。


「エドさん! こんばんは! えへへ、今、難しい顔してるでしょ? きっとあの冷たい部屋で、また考えすぎてるんだろうな。この、退屈なINTPさん!」


彼女の声はとても明るく聞こえたけれど、隠しきれない掠れがあった。心臓を力一杯握りつぶされたような気がした。


「エド……あのね、最近よくあなたの故郷の川の夢を見るの。また二人でクロトックに乗ってるんだけど、今度は私が運転してるんだよ! また水上市場を見たいな、あの辛いソト・バンジャールを食べて、肌を焼くような太陽を感じたい。ここは……ここは白すぎるよ、エド。時々、白が嫌いになっちゃう。病院を思い出させるから」


声が一度途切れた。録音の背景に、酸素吸入器の音が微かに混じっているのが分かった。


「エドさん……ありがとうね。私のために、遠いカリマンタンからわざわざ来てくれて。お父さんとお母さんは理解してくれないかもしれないけど、私には分かってるよ……あなたが収穫したリンゴのひとつひとつが、私に分けてくれたあなたの命だってこと。いつか私が先に逝くことになっても、自分を責めないで。あなたは重荷なんかじゃない、エド。あなたがいたから、私はこの運命を呪わずにいられたんだよ」


あかりの声が震え始め、彼女は泣きながらも、必死で笑おうとしていた。


「約束だよ、エドさん。笑うのをやめないで。悲しくなったら、私の声を思い出して。私はいつもマルタプラ川を吹き抜ける風の中にいるし、長野に降る雪のひとひらひとひらの中にだっているから。愛してるよ……本当に、愛してる。ありがとう、エド……さようなら」


カチッ。


録音は止まった。その後に続いた静寂は、外の吹雪よりも激しく僕の耳を突き刺した。


僕はボイスレコーダーを胸に強く抱きしめ、冷たい畳の上に突っ伏した。僕は咆哮した。二度も自分の世界を失った孤児の、心の底から溢れ出た壊れた叫びだった。


「あかり……あかりーーー!!」


外では、雪が静かに降り続いていた。その狭い部屋の中で、南の国から来た一人の青年が、凍りついた愛と共に死んだことなど、まるで無関心であるかのように。

「最後までお読みいただきありがとうございます。次回の更新は明日、22:00を予定しております。また明日お会いしましょう!」

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