第4章:枕の下の隠し手紙
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あの対立からの数日間は、まるで割れたガラスの上を歩いているようだった。リンゴ園での僕の体は機械的に動いていたけれど、頭の中では琴葉氏の言葉が何度も何度も繰り返されていた。けれど、僕の苦しみはまだ終わっていなかった。
その日の夕方、僕は少しでも遠くからあかりの影が見えないかと、病院の庭の近くへ歩み寄った。しかし、そこでちょうど病院の薬局から出てきたあかりの母親と鉢合わせしてしまった。激昂する夫とは対照的に、琴葉夫人は冷徹な気品をもって僕を侮辱した。
「エドさん」彼女はシルクのスカーフを整えながら言った。僕の目を見ようともしなかった。「主人から聞きましたわ、まだこの辺りをうろついているんですってね。恥というものを知らないのですか? バンジャルマシンでは、他人のプライバシーを尊重することを教わらないのかしら?」
僕はうなだれ、破れかけたジャケットの裾を握りしめた。「僕はただ、あかりさんの様子が知りたくて……」
「あなたがいない方が、あの子の容体はよっぽど良くなりますわ。あなたは白い雪の上に落ちた煤のようなものよ、エドさん。あなたの存在はただ景色を汚すだけ」彼女は一万円札を取り出し、僕の前の地面に落とした。「これでインドネシアへ帰る運賃の足しになさい。あの子をあなたの安っぽい愛で煩わせるのはもうやめて。あかりに必要なのは静寂であって、あなたと知り合ったという過去の過ちを思い出させることではないの」
その紙幣は汚れた雪の上に横たわっていた。僕は拾わなかった。僕の心はもう形を失い、粉々に砕け散っていた。
その夜、冷え切った畳の部屋で薄暗い電球の光に包まれて一人座っていると、誰かがドアを叩いた。それは、病院の松の木の下に立つ僕の姿をよく見かけていた若い看護師の佐藤さんだった。
「エドさん? これを届けに来たんです……」彼女は制服のポケットに隠していた小さな封筒を差し出した。「あかりさんがこれをあなたにって。お母様にバレないように、枕の下に隠していたんです」
震える手で、僕はその手紙を開いた。彼女がいつもつけていたリリーの香水の香りが、微かに漂った。
『私の大切なエドへ
お父さんとお母さんのことを許してね。二人があなたにとても酷いことをしたのを知っています。エド、二人の言うことを聞かないで。私の足はもう動かないかもしれないけれど、私の心は毎日あなたに向かって走っているよ。
リンゴをありがとう。佐藤看護師さんから、ロビーで落としちゃったって聞いたけど、こっそり私のために拾ってきてくれたの。マルタプラでのあの約束みたいに、とっても甘い味がしたよ。
エド、お願いだから私を諦めないで。この冷たい世界で、あなたの笑顔の記憶だけが、私が明日もまた目覚めたいと思う唯一の理由なの。会いたい。本当に会いたいよ。
―― ことは あかり』
僕はその小さな紙切れを胸に抱きしめた。静まり返った部屋の中で、僕は声を殺して泣き続けた。隣の部屋の人に聞こえないよう、必死で嗚咽を抑えた。
INTPとしての僕の論理は、この関係が「不可能」だと言っていた。両親には憎まれ、金はなく、あかりは死に直面している。統計的に見れば、僕は諦めてバンジャルマシンへ帰るべきだった。
けれど、「あなたの笑顔の記憶だけが、私が明日もまた目覚めたいと思う唯一の理由なの」という一文を読んだ瞬間、僕の論理は死んだ。後に残ったのは、失うものはもう何もない一人の青年の決意だけだった。
僕は長野に残る。たとえ塵になろうとも、僕は彼女を見守る塵になる。
「最後までお読みいただきありがとうございます。次回の更新は明日、22:00を予定しております。また明日お会いしましょう!」




