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第3章:ガラスの壁と凍てつく心

#純愛小説 #切ない話 #長野県 #インドネシア #泣ける話 #なろう

その夜の雪は、長野の街を静寂の中に埋め尽くそうとするかのように、激しく降り続いていた。僕はリンゴ園の泥がついたブーツを履いて、病院のロビーの前に立っていた。安物のジャケットには、汗の臭いと腐りかけたリンゴの皮の苦い香りが染み付いている。こんな立派な建物に、僕のような人間がふさわしくないことは分かっていた。けれど、募る想いは指先の凍傷よりも深く僕を苦しめていた。


今日収穫した中で一番美しい赤いリンゴを、あかりに届けてもらおうとしたその時、自動ドアが開いた。そして、あの男が現れた。


あかりの父親。琴葉氏だ。


彼は、僕の一年分の給料に匹敵するようなウールのスーツをまとい、真っ直ぐに立っていた。その鋭い眼光は、僕を頭の先から足の先までなめるように見つめた。まるで、消毒された清潔な部屋に迷い込んだ害虫を見るかのような目で。


「またお前か」

低く、しかし長野の寒風よりも深く突き刺さる声だった。


「こんばんは、閣下……。これを、あかりさんに届けていただきたくて」僕は震える手でリンゴを差し出し、たどたどしい日本語で答えた。


彼はリンゴを受け取ろうとはしなかった。それどころか一歩前に踏み出し、僕を冷たいドアの方へと押しやった。


「いいか、異邦人の若者よ。日本には『分をわきまえる』という言葉がある。私の頭の中の地図にさえ載っていないような場所からやってきて、ただの日雇い労働者として働きながら、私の娘の隣に立つ夢を見ているのか?」


「僕は彼女を愛しています。彼女を支えたいんです……」


「支えるだと?」

彼は鼻で笑った。そこには微塵の温かさもなかった。「何でだ? そのリンゴの余り物でか? あかりには最高の医療、最新の技術、そして安定した未来が必要なんだ。貧しさと、海を越えて持ってきた空っぽの約束以外に、お前に何が与えられる?」


彼は僕に歩み寄り、僕の世界を崩壊させる言葉を耳元で囁いた。


「お前がここにいることは、彼女にとって恥でしかない。窓からお前の姿を見るたび、彼女は自分の過去の選択がいかに愚かだったかを思い知らされるのだ。もし本当に彼女を愛しているのなら、消えてくれ。泥にまみれた自分の川へ帰り、彼女を『琴葉あかり』としての尊厳を持って死なせてやってくれ。出稼ぎ労働者の恋人としてではなくな」


彼が僕の手を払いのけた。真っ赤なリンゴは地面に落ち、光り輝く大理石の上を転がって、ゴミ箱のそばで止まった。


「二度と来るな。お前の農園の臭いが……ここの空気を汚している」


彼は一度も振り返ることなく去っていった。僕は外で荒れ狂い始めた吹雪の中、立ち尽くしていた。病院のガラスの壁に映る自分を見つめる――泥の臭いが染み付いた、ひび割れた手を持つバンジャルマシンの孤児。自分を拒絶するこの国で、必死に運命に抗おうとしている無力な姿を。


その夜、薄暗い街灯の下で、僕は声を上げて泣いた。侮辱されたからではない。彼が言ったことが「真実」なのではないかと、怖くなったからだ。僕の愛が、あかりにとってただの重荷でしかないのではないかと。


僕は落ちたリンゴを拾い上げ、ジャケットの袖で汚れを拭い、むせび泣きながらそれを口にした。ひどく苦い味がした。長野では、涙さえも地面に落ちる前に凍りついてしまうという残酷な現実と同じくらい、苦かった。

「最後までお読みいただきありがとうございます。次回の更新は明日、22:00を予定しております。また明日お会いしましょう!」

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