第8話 路地裏の少年
「おいっ!!」
歩いていると突然、裏道から低く唸る様な声が聞こえ、私は驚きのあまりビクッと震える。
気になって足を止めると、どうやら数人の男が一人の子供を囲んでいるのが見えた。
「お前…金くらい持ってんだろぉなぁ……?」
「な、何も持ってません……!!」
フードを被っているため顔はよく見えないが、脅されてるせいか、恐怖で震える少年の声が微かに聞こえた。
「なんだとぉ……?!」
男の一人が少年の腕を乱暴に掴む。
その瞬間、「ウ゛ッ」と、少年のうめき声が聞こえた。
その時、私は無意識に声を上げていた。
「ちょっとっ!!」
私の声に反応し、男達の視線が一気にこちらへ向く。
私は恐怖で足が震え、頬に汗が伝うのが分かった。
私はこの時、「あぁ、私って馬鹿だ……」と、自分自身に呆れてしまった。
こういうのには、絶対に関わらない方が良いって分かっているのに。
「……なんだお前ぇ」
「その子を……離してあげて」
私の言葉を聞くと、男達は少年の腕を掴んだままニヤリと不気味な笑みを浮かべ私を見つめた。
「じゃあ……お前がコイツの代わりになれ」
「……は?」
その瞬間、男の一人が私の腕を掴み壁に体を打ち付けた。
「っ!!……は、離してっ!!」
力が強く、中々身動きが出来ない。
男は私の顔を指でなぞり、男の表情がどこか興奮している様に見えた。
「コイツ、中々良い顔してますぜぇ」
「売れば高くなる」と、男達は怪しい笑みを浮かべ私を見つめる。
私は今にも吐きそうなほど気持ちが悪かった。
「抵抗するなよぉ……お嬢ちゃん」
男の一人が私の耳元でそう呟いた瞬間、遂に我慢は限界に達した。
——ドォン!!
「なっ……?!」
軽い攻撃魔法を使い、男達の近くで爆発を引き起こす。
本当はこんな事したくないけれど、今回はしょうがない。
「……っ!! 逃げるぞっ!!」
男達は爆発を見るや否や、慌てて逃げて行った。何とか助かった。
「ふぅ」と私はため息を吐くと、すぐさま地面に座り込んでいる少年に近づき声をかける。
「……大丈夫?」
私がそう尋ねると、少年はフードで顔を隠していたが、口をぽかんと開け呆然としているのが分かった。
そして突然少年の瞳からポロポロと涙が溢れ落ち、「うっ……」と小さな嗚咽が聞こえてきた。
「えぇ……驚かしちゃったかなぁ」
少年の顔色を伺いながら私が手を差し伸べると、彼は少し戸惑った様子を見せた後、私の手を取り立ち上が
った。
「助けていただき……ありがとうございました」
少年はそう言うと私に深くお辞儀をし頬から伝う涙を袖で拭き取った。
その直後、少年は途端に表情を変え、ニコッと私に小さな笑みを見せた。
「……無理してない?」
少年の変化に驚き私がそう聞けば、少年は私の言葉に反応する様に「大丈夫です」と答えた。
「大変ご迷惑をお掛けしました。この御恩は一生忘れません」
少年はそう言うも、私には彼がどこか無理をしている様に思えた。
「本当に、すみま——」
——グゥゥ〜
突然、辺り一面に誰かの腹の虫の音が響き渡った。
「……え?」
私は驚きのあまり、つい声が漏れてしまう。
音の鳴る方向を見つめると、彼は下を向きながら顔を真っ赤にして俯いていた。
「……もしかして」
私が恐る恐る少年の顔を覗き込むと、少年は恥ずかしそうにして小さく頷いた。




