第19話 祭り
夜のなると静かだった村が一気に明るさを増した。
村の広場にはたくさんの人が集まり美味しい料理などが振る舞れていた。
「ルーク、離れちゃ駄目だからね」
小さな村だが万が一の事もあり、私は恥ずかしがっている彼の手を無理矢理繋いだ。
「なっ……!! ぼ、僕だって男の子なんですよっ、ちゃんと分かってます?!」
ルークは顔を真っ赤にしながら私に力強く訴える。
……いや、分かってるけど怪我でもされたら私の首が飛ぶので。
ごちゃごちゃ言っているルークを無視していると、セレーネさんが遠くから料理を持って来てくれた。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
彼女から受け取った器にはたくさんの果物が入っており、それと一緒にミルクも備えられていた。
「美味しそう……」
私がそう呟くと「ふふっ」と彼女は微笑んだ。
チラッとルークを見れば、彼は案の定両頬を膨らませながら美味しそうに頬張っている。
「この祭りはね、豊作物の豊穣を神様に願う祭りなの」
セレーネさんはそう言い、広場に集まっている村人を見ながら優しく微笑んだ。
「大昔——この世界は魔王に支配されていた。
でも、一人の勇者様が現れて世界に平和をもたらしてくれたの。そして勇者様は、神にこう願ったわ。
「すべての王国が、緑豊かで穏やかな時代を過ごせますように」と。
それ以来、この世界では自然の恵みを司る神——ヴェルナ様が信仰されているの。
野菜や果物、あらゆる作物を育ててくれる、大切な神様としてね」
……この祭りは、そんなヴェルナ様を祝う祭りでもあるの。「いつもありがとうぎざいます」って」
彼女はそう言うと、私に優しく笑みを浮かべた。
「だから貴方も、ほらっ」
「ん゛っ……!!」
突然、セレーネさんは私の口へ果物を入れた。
「私が育てたフルーツなのっ!!美味しいでしょ?」
「……おいひいです」
私がそう言うと、彼女はニヤッと自慢げに笑った。
夕飯はセレーネさんがご馳走を振舞ってくれた。「その子、良く食べるから」ってセレーネさんはこれでもかというほどルークに料理を作ってくれた。
……本当に良く食べるよな、ルーク。
「じゃあ、お休みなさい」
私はセレーネさんとセレーネさんのお母さんにそう挨拶し、二階の屋根裏へ足を運んだ。
藁でできた布団が床に広がっており、私は勢い良く飛びついた。
「藁布団……久しぶりだぁ」
不意に懐かしい気持ちになってしまう。
村に居た時はこの布団で過ごしてたから、この感触がとても懐かしい。
「ルークも早く来なよ〜」
何故か躊躇っている彼に私が両手を広げて待っていると、ルークは少し恥ずかしそうに私の隣へやって来た。
「あの……僕、男の子なんですけど」
顔を真っ赤にしながら眉間にシワを寄せてそう言うルークに、私は思いっきり抱きついた。
「うわっ?!……ユ、ユナさん……!!」
「ほらほら、くっ付いた方が暖かいよ〜」
私がそう言うと、私の胸の中で身動きの取れないルークは顔を赤面しながら黙り込んでしまった。
「……あれ、ルーク?」
私が彼の名前を呼んでも返事はなく顔を確認すると、目をぐるぐる回しながら「あ……え、えっと……僕」と、とろけた表情をしながら小さく呟いていた。
「ル、ルーク?大丈——」
「も、もうっ!!ユナさんの馬鹿ぁ……」
私が心配して彼に声をかけたが、ルークは何故か目に涙を浮かべて私の腕の中から離れてしまった。
「えぇ……」
ルークは私から離れた場所へ横になり、その後は口を聞いてくれなかった。
……私何かしちゃったかなぁ。




