第17話 逃げましょう
翌日、私たちは宿を出てアルナ王国を目指す事にした。
「もう、置いてっちゃうからね」
「あっ……!!ちょっと待って下さいっ」
町の市場で売られている食べ物に目をルークは目を輝かせ、その場から離れようとしない。
物珍しいのか、目を輝かせて見つめている。
私は「はぁ」と小さく息を吐き、ルークの元へ向かった。
「それ、ひとつください」
「ユナさん……!!」
仕方なく、ルークの欲しがっていた食べ物を買った。
家でも作れるような料理だけど、王子様にとったら新鮮なのだろうか。
「美味しい?」
「おいひいですっ!!」
もぐもぐと両頬を膨らませながら、彼は美味しそうに頬張る。
その様子を見て、私は無意識に笑みが溢れた。
——昨日、宿で私たちはある決まり事を定めた。それは、絶対に二人一緒に行動すること、だ。
これはルーク一人で行動すると危険だからというのもあるが、どんな事も一人より二人の方が何倍も安心できるからだ。
私は心に決めたのだ……彼を絶対に一人にしないと。
「ルーク、気を付けて」
私は彼の腕を引く。
人の数が多く、小柄なルークは人混みに埋まってしまいそうだからだ。
——ドンッ
「あ」
そう思った矢先——ルークは男性とぶつかってしまった。
「ごっ、ごめんなさ——」
ルークはすぐさま男性に謝るも、言葉が途中で途切れてしまった。
私は不思議に思いぶつかった男性の方を見つめると、男性は白いマントを付けた兵士の様な格好をしていた。
「——まさか」
私は一瞬で背筋が凍りついた。
それは一番私たちが遭遇したくない出来事だったからだ。
「ユナさんっ!!」
「わっ」
ルークが私の手を引いて走り出す。
「ちょっとっ!!」
ルークは気にしない顔で人混みの中を全速力で駆け巡る。
もしかしてあの男性はアルカディア王国の——
「ユナさん、こっちですっ!!」
そう言いルークは人気のない路地裏へと足を運んだ。
「はぁ……はぁ」
心臓の音がドクン、ドクンと良く聞こえてくる。走ったからか、私たちの息は乱れていた。
「ねぇ……あれって」
私がそう聞けば、ルークは呼吸を整えながら答える。
「あれは……アルカディア王国の兵士です……きっと……僕を探しに来たのでしょう」
ルークは眉間にシワをよせそう話す。
やっぱり、あれは追っ手だったのか。
だとしたらこの町に居るのは危険だ。
一刻も早くここから去らないと。
「走っている時に何人かの兵士を見ました……多分もう、この辺りは囲まれています」
「そんな……」
私たちは今、かなり危険な状態に追い込まれてしまった。
囲まれているとしたら……表へ出るのは難しいだろう。
声でもかけられたら終わりだ……。
「このまま走って逃げるとか、見つからないように隠れながら進むとか」
「いや……それも難しいでしょう。たとえ走って逃げても……見つからない様に進んでも……王国へ入る際に止められてしまいます」
「じゃあ、どうすれば……」
私たちは追い詰められ、言葉を失ってしまった。
このままだとルークは捕まってしまう。
なんとかして策を考えなければ。
「……転移魔法」
突然ルークが言葉を呟いた。
「移転……魔法?」
私がそう聞くと、彼は冷静に話し始める。
「前に少しだけ使った事があるんです。その時は成功したので今回も大丈夫だと思います」
彼はそう言った後、険しい表情をした。
「……ただ、ひとつだけ難点がありまして」
「難点?」
「……どこに飛ばされるのか分からないんです」
ルークはそう言うと、苦い顔して私を見つめた。
……どこに飛ばされるのか分からないって事は……ここから遠い場所に飛ばされる可能性があるという事だろうか。
「で、でも……詠唱した場所から1㎞以内のどこかに飛ばされるので、多分変な所に行く可能性は低いと思います」
「あ、そうなんだ……」
私は少し安心し目を見開いた。
1㎞以内ならきっと大丈夫だろう。
「じゃあルーク、お願いします」
私は軽く彼にお辞儀をしてお願いする。
するとルークは真剣な表情で「分かりました」と了承した。
「では……行きますよ」
ルークはすぐさま魔法を唱え始める。
すると、地面に魔法陣が映り黄色い光が辺りを包み込んだ。
「……凄い」
そう呟いた直後体は光に包まれ、ふらっと宙に浮いた。
——宙に浮いた?
魔法陣に体を吸い込まれた状態で、私は穴に落ちた様に落下した。




