第15話 少年の正体
「じゃあな、お嬢さん」
「ありがとうございました」
私達は馬車を降りておじさんにお礼をする。
おじいさんは「じゃあ」と手を振り遠くへ去って行った。
「はは……かなりハードな長旅だったね」
「そうですね……」
大雨に襲われたけど、何とか目的の町に着く事ができた。私は「はぁ」と軽い息を吐く。
ルークもどこか疲れている風に見え、私達は今夜泊まる宿を探す事にした。
「え、一部屋?」
「そうなの、今空いてる部屋がそこしかなくてね」
宿を探しに行ったもののどうやら今日はお客さんが多いらしく、中々部屋が見つからない。
何軒も歩いてやっと見つけた宿は一部屋しか空いておらず、私達は今完全にピンチに追い込まれている。
——正直もう疲れてるし、これ以上歩けない。
私は今、目を瞑れば今にでも寝てしまいそうなくらい消失状態だ。
私はチラッと横目でルークを見る。
ルークが良いって言ってくれるならもうこの宿で良いかな。
うん、そうしよう。
「ねぇ、ルーク」
私は眠気を抑えながら彼に声をかける。ルークはハッとし私の顔を見つめる。
「もしルークが気にならないなら……今日はこの宿でも良いかな?」
「はい、僕は気にしませんので」
ルークは小さく笑みを浮かべてそう答えた。
「ベット……最高……」
私は部屋につくなりすぐ様ベットにダイブした。やばい、超気持ちいい……。
「あの……ユナさん」
——ハッ
やばいやばい、ルークも居るんだった。
完全に自分の世界に入っていたのを忘れていた。
私は両手で頬を軽く叩き、閉じそうな目をこじ開ける。
「おいで、ルーク」
私はそう言いルークの方へ両手を広げた。
ルークも疲れてるだろうし、早くベットへ来たいはずだ。
「えぇ……?!あ、あのっ、ユナさん……?」
ルークは顔を真っ赤にして目をグルグルと回転させる。
……あぁ、そうか。
ルークは男の子だったよね。
眠すぎてつい弟にいつもやってた事を彼にしそうになってしまった。
「ごめんごめん、今のは冗談だよ」
軽く笑って誤魔化すと、「もぉ……やめて下さいね」と怒られてしまった。
「ルークも来なよ、隣」
私はポンポンと、空いてる隣のスペースを軽く叩いた。
ルークは少し顔を赤ながらも、サッと私の隣へ来てくれた。
「あの……ユナさん、僕ユナさんに話さないといけない事があって」
「え、話さないといけない事?」
突然ルークが真剣な表情で私を見つめる。よほど重要な話なのだろうか……。
「なに?話してみて」
私がそう言うと、彼は軽く息を吸い呼吸を整えた後、私の目を見て話し始める。
「……実は僕、王子なんです」
一瞬思考が停止する。
今彼は自分の事を「王子」って言った?
……いやいや、聞き間違いだろう。
「……今なんて?」
「実は僕はアルカディア王国から逃げて来た王子なんです」
「……………………え」
待て待て待て待て、この子本気で言ってるのか……?
嘘じゃないの?本当の話なの?
私は暫く頭の中が混乱状態になる。
彼の表情を見るからに嘘をついている様には見えない。
私はスッと息を吸い自分を落ち着かせる。
「分かった。よし、うん。じゃあ一から説明してもらえるかな?」
私がそう聞くと彼は「はい」と答え、深く被っていたフードを頭から外した。
昼間見た美しい金髪髪がサッと靡き、緑色の瞳が私を見つめる。
「僕の本当の名前は、ルクトリア・アレクシス・アルカディアと言います。現国王であるスピラ陛下の長男であり、アルカディア王国の次期国王とされている者です」
——本当だった、嘘じゃなかった。正真正銘の王子様だった。
「えーと……王子様は何でお城から逃げ出したんですか?」
私がそう聞くと、ルークは少しだけ視線を落とした。
「……実は今、城の中は酷い状態で……王位を巡って争いが起きているのです」
ルークはぎゅっと手を握りしめる。
「僕が国王になる事を良く思わない方々が……僕の命を狙って……毒を……盛ったり」
「毒っ?!」
私は彼の言葉に衝撃を受ける。ルークの目に涙が浮かんでいるのが分かった。
「……怖かったんです」
ぽつりと落ちたその言葉は、悲しさで溢れていた。
きっとこの子は今までたくさんの嫌な事をされてきたのだろう。
王城の中で、この子の居場所はあったのだろうか。
「だから僕は……逃げました。あの場所に居たら自分じゃなくなる気がしたから」
ルークはふっと俯いていた瞳を前にあげた。
「巻き込んでしまい申し訳ありません。迷惑だと思っても構いません……ですが僕は——」
「僕は貴方と一緒に……居たいです」
ルークは真っ直ぐな視線を私に向け、そう言った。




