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第14話 雨水とエメラルド

「これはまずいな……」



おじさんはそう言うと馬の動きを速め、かなりのスピードで突っ切っていく。



 この辺りに建物はなく、どこかで雨宿りするという事ができない。



雨は激しさを増し、身体中が雨水でビチョビチョになる。



「大丈夫かっ!!」



おじさんが心配する様に大きな声で私たちに声をかける。



「だっ、大丈夫ですっ!!」



雨の音でかき消されないように、私もできるだけ大きな声で返事をした。



「ルークっ、大丈夫?!」



隣で(うずくま)っているルークに声をかける。



「はいっ……なんとかっ」



フードを深く被り、雨音に負けない様にルークは必死に答える。



——おじさんの言う通り、これはかなりまずいかもしれない。



雨音は徐々に大きくなり、途切れる事なく降り続けている。



町に着くまではまだまだ距離があり、この雨の中で走り続けてもただ危険なだけだ。

 


「……っ?!ユナさんっ!!」



私は馬車から立ち上がり、右手を空に向けて差し出した。そして息を吸い、目を強く瞑りながら唱える。






「降りし雨よ、退け。雲を払い、光を呼べ——破雲晴空クラウドディスパージ!!」






唱えた瞬間、雨水が静かに宙に舞う。



まるで時が止まったかの様に、ゆっくりと地面へ落ちていく。



——ゴオォォォ!!!!




天を裂くような音が聞こえ、猛風が同時に辺りを襲う。



「……っ」



私は息を呑んだ。



空を見上げると曇り空が徐々に消えていき、いつの間にか明るい光が辺りを包み込んでいた。



激しかった雨は消え、風は穏やかに流れ続けている。



「……凄い」



ルークの言葉が耳に入り、私は彼の顔を見つめる。




すると、暴風のせいかルークの顔を覆っていたフードは彼の頭から外れ、私の瞳に映っている彼は——()()()()()()()()()()()()()()()()()だった。



「……ルーク?」



初めて彼の顔をはっきり見た。



彼が先程まで隣に居た少年だったとは信じられなかった。



私は彼の容姿に見惚れてしまい、言葉が詰まる。



嵐が去った後の平地は驚くほど静かで、ルークと見つめ合う時間が流れる。





美しいエメラルドの宝石が私を見つめている。





胸の鼓動がはっきり聞こえ、自分が恥ずかしくなるのが分かった。



「ユナさん……今の魔法」



ルークが口を開く。



彼の声にハッとし、私は我に帰った。



「今のは、えっと……私の大切な人から教えてもらった魔法で……」



私がしどろもどろにそう答えると、彼はジッと私を見つめ、視線を離さなかった。



「……もう、何——」



「おいっ!!今の魔法はお嬢さんのかっ!!」



「えっ」



私の言葉に被せる様に、おじさんが勢い良く話しかけてくる。



おじさんは興奮気味で目を開き、驚いた表情を見せる。



「あんな魔法初めて見たよっ、あんた一体何者だっ?」



「いや……私もさっき初めて使ったばかりで、私も良く分からないんですよね」



「わはは」と私が苦笑いを浮かべると、おじさんは目を丸くする。



「さぁ、雨も止みましたし早く行きましょうっ!」



私がそう言うとおじさんはまだ何か言いたげな顔をしていたが、やがてため息をひとつ吐き、再び馬車を動かした。




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