第13話 馬車に乗って
「わぁ、綺麗な場所ですね」
私がそう言うと、馬車を引いているおじさんが「そうだろう、そうだろう」と嬉しそうに頷いた。
私達はあの後無事馬車に乗る事ができ、今はアルナ王国の近くにある町を目指して向かっている。
「ねぇ、ルーク。あれって羊じゃないっ?」
私が指をさしながらそう言うと、ルークはなぜか苦笑いを浮かべる。
「……ユナさん、あれは羊じゃなくてモフラと呼ばれる生き物ですよ」
「モフラ?」
聞いた事のない言葉に私は首を傾げる。
「モフラは羊に良く似ている生き物で、夜になると毛が光るんです」
「え、毛が光るの?」
「はい。モフラの毛には魔力が蓄えられていて、夜の外敵を威嚇したり敵から身を守る為に光を放っているんです」
「そうなんだ……」
ルークの説明を聞いて「へぇ」と感心する。
そんな生き物が居た事を初めて知った。
私が居た村には羊や馬がたくさん居たから、魔物とは違う、魔力を持った生き物が居る事なんて今まで知らなかった。
「お嬢さん、モフラを見るのは初めてかい?」
おじさんが私にそう聞いてくる。
「はい、初めて見ました。あんなに可愛い生き物が居たんですね」
私が楽しそうに答えると、おじさんもどこか笑いながら答えてくれる。
「この辺りはな、たくさんの動物や魔力を持った生き物が居るんだよ」
おじさんはそう言いながらどこか楽しげに言葉を返した。
私はリュックから本を取り出し、すぐさま記し始める。
「何を描いているんですか?」
隣からルークがそう言いながら本を覗き込んでくる。
「これ?これは旅の中で出会った事や、忘れたくない事を本に描き留めてるの」
私がそう言うとルークは少し驚いた様な表情を見せる。
「……ちゃんと、残しているんですね」
ルークはそう言い、小さく呟いた。
気のせいか……少しだけルーク視線が落ちている気がした。
私はペンを持ちながら、視界いっぱいに広がる美しい平地を見つめ、その様子を描き始める。
絵を描くのは得意ではないが、大事な旅の記録として丁寧に描いていく。
いつかこのノートを見返した時に、この旅を思い出せる様に。
しばらくのどかな風景に触れながら描き続けていると、突然描いた場所が滲んでいるのに気がついた。
「あれ?」
眉間に皺を寄せ、何度も本を見つめる。
——ポタッ
「えっ」
空を見上げると、いつの間にか晴天だった青空が濁った暗い色へ変わっていた。
「雨……ですね」
ルークがそう呟くと、数滴だった雨粒が徐々に数を増し、いつの間にか辺り一面に大粒の雨が降り注いだ。




