第12話 綺麗な瞳
「……」
二人の間に沈黙が流れる。
気まずい、かなり気まずい。
少年にどんな言葉をかければ良いか分からず、私の視線は宙にさまよう。
「何で昨日急に逃げ出したの?」「心配したんだよ!」って、本当は今にでもそう少年に言いたい。
でも、少年にとって私は赤の他人だし……それに、私がそこまで少年を心配する必要はない。
ただ……少年がまた危ない目に遭うのが、私は嫌なだけなのだ。
あーあ、こんな時お巡りさんが居れば良いのに。
私は胸の中に溜まったモヤモヤを、「はぁ」と息をついて吐き出した。
「あの……」
静寂の空気を断ち切るかの様に、突然、少年は私の袖を優しく掴み小さく口を開けた。
「えっ」
少年の行動に驚いてしまい、私は目を丸くする。少年はどこかもじもじしながら、何か言おうとしている様子だった。
「どうしたの?」
私がそう聞けば、少年は呟く様に声を出す。
「昨日は……申し訳ありませんでした。せっかく食事を振る舞って頂いたのに……」
「え?……あぁ、平気だよ。気にしないで」
私は少年に優しくそう言いながら笑みを返した。
……まぁ、確かに急に逃げ出したのは驚いたけど。
私はそんな事は気にしてないと少年に微笑んだ。
すると少年は俯いていた顔を上げ、少年の表情は少し明るくなる。
その様子を見て、私の胸は少しだけ軽くなった気がした。
「じゃあ、私は行くね」
いつまでもここに居るわけにはいかないので、私は少年にそう言いこの場を去る事にした。
少年もきっと、私が居るのは嫌だろうし。
それに、もうすぐ馬車が出る時間になる。
乗り遅れると次に乗れるのは夕方になってしまう。
ここの馬車は数が少ないから馬車に乗れるのは貴重な事なのだ。
「えっと……」
私は袖を掴んでいる少年の手を外そうとする。
しかし、少年は一向に袖を掴んだままで手を外す様子がない。
それどころか、袖を掴む力が大きくなり、無理矢理外してしまったら破れてしまいそうだ。
私はどうして良いか分からず、困り果ててしまった。
「あのー手を外してもらっても?」
私がそう言うも、少年は何も言わずにムスッと頬を膨らませ頑固として手を動かさなかった。
「そろそろいい加減に——」
「あのっ!!」
少年は突然大きな声を発した。
私はビクッと肩が跳ね上がる。
「……ど、どうしたの?」
私がそう聞くと少年は黙り込むも、暫くして口を開いた。
「ぼ、僕を……一緒に、連れて行ってもらえませんか」
しどろもどろながらも、意を決した様に少年はそう言った。
私は少年の言葉に驚いてしまい、フリーズしてしまう。
「え……えぇと……」
私が答えられず言葉に詰まっていると、少年は私の顔をサッと覗き込んだ。
——エメラルドの宝石が私を見つめる。
フードから薄っすらと見える少年の瞳は、まるで私の言葉を待っているかの様に見えた。
その綺麗な瞳に、私は見惚れてしまった。
……もう、しょうがないな。
私は小さく息を吐いて、少年の瞳を見つめ返した。
「うん、良いよ。一緒に行こう」
私がそう言うと少年はパァァと明るくなり、口元が笑っていた。
「ありがとうございますっ!!」
少年はそう言い頭を深く下げた。
「いいって……そういえば……君、名前は?」
私がそう聞けば少年は少し黙り込んだあと、口を開けた。
「……ルークです」
少年はそう名乗ると、「貴方は?」と私に聞いてきた。
「私はユナ、旅をしているの」
そう言うと少年は「ユナさんですね、よろしくお願いします」と再び頭を下げた。
こうして、私は少年——ルークと二人で旅をする事になった。




