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37.決着


ルーファス率いる明けの明星がルートレイの残った住人を探していると、そう遠くないところでズーエルとの合流を果たした。


「元気そうだな、なんて言ってる暇もなさそうだな。何があった?」


ルーファスはズーエルに単刀直入に問う。


「何があったなんてもんじゃねえ。これは例年のパレードを隠れ蓑にした別物だよ」

「別物といっても、パレードはパレードじゃない?」


ケースは少し小馬鹿にしたように言うが、ズーエルはかぶりを振った。


「そうじゃねえ。お前さんらも気づいているんだろ。この不気味な存在感に」

「噂が肥大化しただけかと思っていたが、本当に出たのか?魔王軍の幹部級、迷企羅のアミュタユスが」


ありえないと考えていたことが事実であることは、ズーエルの反応からして明らかだった。

バンスとケースは瞠目する。


「だが、だとしたらよくまだ持ちこたえられてるな。パラセリが抑えてるのか?」

「いや、ラウザントとランギュムントが対応しているはずだ」

「方向はどっちだ?」

「ちょ、ルーファスさん!本気ですか!?」


迷いなく助太刀に行こうとするルーファスを止めるケースだが。


「無理強いはしない」

「腰抜け女はここで待ってろよ。誰も気にしねえからな」

「だっ、誰も行かないなんて言ってないでしょ!行くわよ!」


全体的にどうも明けの明星には緊張感というものがなかった。


それもそのはず、ルーファスは実力的にはS級に分類できるほどである。本人が冒険者ランクを上げる気が微塵もなく、むしろ上がることを敬遠している。


バンスとケースも公式の等級より少なくとも一段階は上だ。


明けの明星にとって、勝機が薄いといえるのは魔王軍の大幹部、六欲天くらいのもので、他は相手が一体であれば対処可能なほどである。


「とはいえ十二夜叉大将か。あいまみえたことはないが、並大抵ではないのだろうな」

「そうだ、ラインっつう最近ルートレイに流れ着いた生意気な野郎もそこに行っちまったんだ。そいつと、ラウザントとランギュムントを頼む……!」

「任せろ」


迷いなく突き進む明けの明星の背中を見送ったズーエルは、


「こんな状況だが、相変わらず眩しい背中だ」


彼らが全てを解決できるアテなどないが、戦場で安堵できるほどの信頼がそこにはあった。





ラウザントとランギュムントの肉体をバラバラにしてひとつに繋ぎ合わせたような異形と何合斬り合っただろうか。


この怪物はいくら斬ってもしばらくすると回復する。それはラウザントの魔刀の能力のためだ。

斬れば斬るほど所有を癒すという規格外の効果により、攻撃する力さえ残っていれば死すらも克服できる流転の武具。


そう、つまり僕も少なくない手傷を負っていた。とはいえ戦闘に支障が出るほどの被害はない。


だが、はじめは拮抗していたものの、徐々に押され始めていた。


「くぅっ」


大振りで放たれた歪な斬撃をかわしきれず、右肩が浅く裂かれた。


「〈勇者〉本体の戦闘能力は脆弱」

「音に聞く通り」


耳障りなアミュタユスの声が剣戟の合間に聞こえる。


ここで僕が敗れるわけにはいかない。アミュタユスの作り出した怪物は戦力だけを見た時に十二夜叉大将上位クラスにあたる。そんな化け物を押さえられる人がここにいるだろうか。さすがにいないだろう。


それに、ラウザントとランギュムントは今も苦しんでいる。早く解き放たなければ。彼らを無事に救い出すことは叶わなくても、その魂だけでも救出しなければ。


「はあァァァァァァァ!!」


何の変哲もない剣が白く光り輝く。


まだだ。まだ足りない。

力を込め続け、輝きはそれに比例して増していった。


「これで――!」



膨大な白光を保ったままの剣を振り抜く。

ラウザントとランギュムントの合成体の体は肩から腰にかけて切断され、上下に分かたれて落下した。


「……ごめん、僕の力が足らないばかりに」


「がが……あや、まル、ことは……ない」


歪んだラウザントの口から言葉が紡がれる。彼の意識は辛うじて残存していた。


「お、まえに、るーとレイを、まカス。持っていけ」


そう言って震える手で押し付けてきたのは魔刀コペルニクス。


「ラウザント、僕は――」

「おまえが、なにものかは、いいんだ。みなを、まもってくれる、なら、それで」

「こレは、わレ、ワレのチカラぶそク……。きにヤムこはナい」


ランギュムントの声も絞り出された。二人の声色から、もう命が尽きかけていることは明白だった。


「たの……ンだ」

「……任せてくれ」


ラウザントとランギュムントの手を握り、二人の鼓動は静止した。


「これは想定外」

「これは予想外」


二人の亡骸を背に、異質な浮遊体に向かって歩む。


「見誤ったか」

「甘い目算だったか」


僕はただ静かに、作業のように光剣を振るった。


無感動に振っていた。







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