世紀の恋 ①
城主は信繁にフレイヤとの面談の様子を伝える。
「あの御方の『お相手』、夫君になられる方
えぇ本来ならば、何の障害も無く幸せな夫になっていた筈の、トール側王家の若君ね。
フレイヤ姫とこんな悲劇的関係になってしまった今でも、姫に対する気持ちは真剣で本気なのよ。
ーーーあのブロンドでエメラルド色の瞳を持つお綺麗な方は」
「渾名は確か、『トールの大天使』、銀河最強の軍事惑星、トール王家・末の王子、美貌のラファエル殿下でしたね?」
「そう。
美しいエメラルド色の瞳の色から、ラファエルって名付けられたそうよ。
名前通り〜癒やしの、優しい情熱家。
国民にも、”麗しのエメラルドの大天使様”って大人気で。
”彼女は私の命、フレイヤ王女とは絶対に別れられない” と仰っているわ?」
「そうですか 随分な入れ込みぶりですね」
「だって、なにせ銀河を揺るがした『世紀の恋』ですものねぇ。
トールの末の王子様、情熱的でピュアなのね」
「お互いに戦場では恋人同士、相まみえなかったんですか?
お姫様は資料によれば、宇宙軍士官学校を最優秀な成績でご卒業後、フレイ王家の紋章をつけた小型新造戦艦で、新任の艦長として出陣されていたとありますが?」
「まず質問の一つ目。
ラファエル王子様は宇宙空母、自らの父親をトップとする旗艦船に乗船。
全指揮を執る宇宙艦隊総司令スレイプニル閣下が指揮をとる艦に大王リーズ陛下とご一緒よ?
ラファエル殿下は総司令の副官だからね、直で首都攻略戦の最前線には出ない。
御父上の乗る最も重要な旗艦に、御父上大王リーズ陛下とご一緒、戦局全てが見晴らせる、成層圏近くの宇宙空間で待機されてたのよ。
だからおぞましい血みどろな現場には行っていないし、『恋人の家族仲間殺し』ーーー虐殺には参加してない」
「そうでしたか……」
随分いやな言い方で言うもんだなと信繁は思ったが、事実は事実、戦いの現実は残酷だ。
「ラファエル殿下も、軍の決定で仕方が無かったとは言え酷い立場ね。
全てが終わった後、憔悴し嘆き悲しむ王子様に見かねた上官の〜、ぁあ名付け親でもあるスレイプニル総司令が恩赦をーーーと。
〜このお方様は息子も同然〜と味方されて。
で、大王陛下も。
あの作戦を全て取り仕切ったというロームルス閣下も、
〜公式に姫君の公開処刑は撤廃、国外追放に折れたって言う話よ?
陛下も閣下も総司令も、関係者皆知り合い、士官学校時代からの竹馬の友って言うの?
うんと幼い頃からのご友人だとか。
総司令、直接の部下の恋の哀しみを、ほっとけなかったんでしょうね。
彼自身とんでもなく若い頃から、朝、昼、晩、眠る深夜〜と、まぁ全員お相手が違うレディ、それ程女性にもてたそうだから、こういう失恋、感情に身に覚えがありすぎて」
「〜〜〜〜何だかうちの子龍みたいですね!」
信繁が声をプルプルワナワナさせて返すと、城主は急にフフフッと曰くありげに含み笑いをした。
「??」
『何だ?……』ーーーー奇妙な感じがした。
当初、亡国の姫君、第5王女フレイヤ姫は、重度の宇宙酔い状態だった。
誇り高く、王家の姫君として気丈に気高く、何とか周囲にふるまおうとしているのが傍目にもわかったが、それすら越えた異常な肉体的不調であった。
「どうもこれはおかしいぞ?」
「何もないならばそれでも良いだろうし、悪戯に不安がるよりもずっといいだろう」
王女の酷い不調に「玉体にはもしや新しい生命が宿っているのでは?」
医療陣には一抹の疑惑がよぎった
もしやとーーー城を支える優秀な医療陣には閃く物があり、城到着直ぐ真っ先に妊娠の有無を調べる丁重な精密検査を受けたのである。
万全な安全策を取り、隈無く放射線等の害が及ばない方式でメディカル検査を実施。
でーーーー不安的中、疑惑は正解へと変化した。
DNA検査を含めた細心の検査の結果、トール王家のラファエル王子を父親とする御子をその身に宿していると、当施設にて初めて確認されたのだ。
場は騒然、関係者達は大恐慌、大騒ぎになった。
滅亡したフレイ王家最後の1人、第5王女フレイヤ姫、本人ですら自らの懐妊の事実に全く気がついていなかった。
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元々、トールの王子様にとって、絶大な権力を持つ父と争っても守りたい最愛の女性である。
かの御国は実は軍事大国というおそろしい側面とは全く真逆の、恋や愛に実に寛容な国家という内情でも知られていた。
ーーーーというか軍事強国としての、いつ死ぬのかわからないという刹那的な生き様が、この世に生存する活力を駆り立てるのか?
銀河に轟く「超恋愛大国」でもある。
法律的にも ”一夫多妻制” 採択の珍しい国家。
けれどこれには重い責任もついて回り、毎日様々なバージョンでパートナーに愛を囁かないと、普通にあっさり「この人はダメね」離婚を求められる国。
別に浮気をせずともーーーー
「愛が足らない」
「孤独に寂しがらせた」
何というけしからん扱いを!!と、堂々立派な離婚理由になり得る、訴訟裁判沙汰「可」、それが常識である国。
「まぁーーートールはちょっと変わった国家だものねぇ」
「隙あらばで、恋に落ちて婚前交渉で手を出さないはず無いよなぁ」
「王女様は文化都市惑星で名高い高貴な星、惑星フレイ出身。
コッチはコッチで ”一夫一婦制”
厳格に処女性を最も重んじる国ーーー
例えば側妃、愛妾を決める場合も議会の承認が要る、超お堅い国だろ?
そんな国の姫が結婚前、果たして清いお体をホントに許すかなぁ」
「そりゃだから男の方が夢中、押して押して押して〜〜押しまくったんだろ?
恋のテクニック、女性の落とし方はゴフッ、色々あるだろうし?」
「うわぁぁぁああああ最低ーーーーっっ!!」
城職員の意見は喧々囂々、総論で割れた。
姫はご懐妊が決定した事で、確実に何らかの事情とタイミングで、既に寝所内にて肉体的愛の行為を1度は交わされている。
しかしあの異常な恋愛大国国家の王子で、年中アモーレが噂される国の殿方ならば何ら不思議では無いという事に、無理矢理に現在は落ちついた。
国が滅びた超大国の姫君の懐妊ーーーーそれも敵国同士の御子。
幾ら特殊収監施設・城といえども、そんな事は前例がない。
前代未聞、ここでは1度も起きた事がない出来事だった。
という事でーーーー
規約で、収監者の如何なる微細な変化も、収監・依頼者側に知らせざるを得ない。
施設が建造、出来た当初から細かく定められた内部規範であり莫大な契約料が絡む重大な決まり事、どんな少時でも隠蔽は出来ない。
ーーーーールールは絶対。




